厚生労働省は、令和2年3月20日に発表した「 イベントの開催に関する国民の皆様へのメッセージ」の中で、「換気が悪く、多くの人が密集し、近距離での会話や発声が同時に重なるような場を避けるような行動の要請」を行いました。
多くの企業は政府の要請を受け、春のイベントを秋以降に延期しています。
しかし多くのイベント担当者は現在、新型コロナウイルス感染症が終息していない状況で「今後、本当にイベントを開催していいものかどうか」悩んでいるのではないでしょうか。
そこで、「安心安全」をファーストプライオリティに置き、さらにイベント本来の目的を最大限に達成することができる「ニューノーマル(新常態)」時代のイベントの在り方について考察していきます。
ニューノーマル(新常態)時代のミーティング・イベントには何が求められているのか?
ニューノーマル(新常態)時代のミーティング・イベントには何が求められているのでしょうか?
まず直近の課題である、新型コロナウイルス感染のリスクを抑えること(ソーシャルディスタンス・衛生面の考慮)はもちろん必要です。
しかし、それだけではなく、時代の変化に伴う新たなニーズにも応える必要があります。
時代の変化に伴う新たな時代のニーズとは、具体的に以下の3つが挙げられます。
- もっと効率がよく、効果の高いイベントを開催する方法はないか?
- コストと労力を抑えつつ、複数都市の参加者にもアプローチする方法はないか?
- さまざまな事情でイベントに来られない方たちにも、情報と感動を届ける方法はないか?
ニューノーマル(新常態)時代には、感染リスクと経済活動の両面を考慮する、時代の変化に則したイベントの在り方がスタンダードになっていくでしょう。
ニューノーマル(新常態)時代の新しいミーティング・イベントの在り方「ハイブリッド型イベント」とは?
そもそも「ニューノーマル(新常態)の要請に応えるミーティング・イベント」とは、具体的にどのような企画なのでしょうか?
その答えは「ハイブリッド型イベント」であると考えられます。
ハイブリッド型イベントとは、リアルイベントとオンラインイベントを1つのイベント内で同時開催する形式です。参加者は直接会場に足を運ぶか、自宅や他の場所からのオンライン参加かのどちらかを選べます。
ハイブリッド型イベントを成功させるには、リアルイベントとオンラインイベントそれぞれの「強み」をよく知り、2つを効果的に組み合わせることが必要です。
ただしニューノーマルの時代に則したイベントにするには、新型コロナウイルスを考慮した「リスク・注意点」の事前検討・対応策も同時に求められます。
では、リアルイベントとオンラインイベントの強みやリスクとは具体的に何を指すのでしょうか。まずはリアルとオンライン、そしてハイブリッド型の強みから見ていきましょう。
01リアルイベントの強みとは?
リアルイベントの強みを示す指標として、「一般社団法人 コンサートプロモーターズ協会」の興味深いデータがあります。
このデータは、タブレット端末が今ほど普及していない2005年から2019年にかけて、「国内コンサート・ライブの公演数や入場数が2倍以上伸びている」ことを示すものです。
・公演数:228%上昇
・入場者数:246%上昇
好きな音楽をいつでも簡単にスマートフォンにダウンロードでき、無料で好きなアーティストの動画をいつでも観ることができる時代にもかかわらず、なぜ数値が飛躍的に伸びているのか。
それは「リアルでしか体験できないことがあるから」に他なりません。
まずリアルイベントでしか体験できないこととして、視覚と聴覚以外の「触覚・嗅覚・味覚」でも会場の空気を感じられる点が挙げられます。
そしてもう1つが「熱量を感じること(伝えること)」。
ラグビーワールドカップ2019で、仲間と一緒に日本代表を応援したときの熱い感動を記憶している人も多いのではないでしょうか。
あのような体験は、まさにリアルイベントでしか味わえない「熱」といえるでしょう。
02オンラインイベントの強みとは?
一方、新型コロナウイルス感染拡大により、各企業が一斉に導入を進めたのが「オンラインイベント」です。
オンラインイベントにもリアルと同じく、「オンラインイベントでなければ体験できないこと」があります。
たとえば、スポーツ観戦を例にとって考えてみます。2020年現在ではIT技術を活用することで、チケット購入、事前情報提供、イベント後のコンテンツ提供までがシームレスで進む「新しい観戦体験」を届けることが可能です。
また、VR(Virtual Reality 仮想現実)、AR(Argument Reality 拡張現実)の技術を使って、個別にカスタマイズした情報を提供したり、リアルイベントでは表現しにくい世界観を演出したりすることも容易になります。
実際に外出自粛期間中にアーティストのオンラインライブなどに参加して、リアルイベントとは違った楽しさを実感した方も多いのではないでしょうか。
「場所や時間の制限なく参加できる」「3密を回避できる」という点も、オンラインイベントの大きな強みです。
03ハイブリッド型イベントの強みとは?
では、ハイブリッド型イベントの強みとは一体何でしょうか?
結論からいえば、「リアルイベントの強みとオンラインイベントの強みのイイトコドリができること」、これがまさにハイブリッド型イベントの強みです。
具体的に以下の表で、リアルイベント・オンラインイベントそれぞれのメリット・デメリット、そしてハイブリッド型イベントが「どこをイイトコドリしているのか?」を見ていきましょう。
参加者が「好きな方を選択できる」ことこそ、ハイブリッド型イベントの最大の強みです。
参加者はスケジュールや環境(端末性能や住んでいる場所)によって好きな方を選べます。
また主催者側はリアルの濃いつながりを求める方・オンラインで気軽に参加したい方のどちらにもリーチできます。
演出・体制次第ではオンラインでリアルのような臨場感を共有することも可能です。
リアル・オンラインイベントそれぞれのリスク・注意点
安全・安心を提供するイベントにするには、ウイルス感染に伴うリスクへの対応も必要です。それは感染の直接的な危険だけでなく、オンライン関係のノウハウ不足による通信トラブル・イベントの失敗も含まれています。リアルとオンライン、それぞれのリスクや注意点を見ていきましょう。
01リアルイベントで考えられるリスク・注意点
新型コロナウイルス感染症のワクチンが開発されるまでは、リアルイベントの開催にあたってさまざまな注意が必要です。
手洗いや咳エチケット(ハンカチやティッシュ、袖などで口・鼻を押さえる)の呼びかけはもちろん、以下のようなリスクマネジメントを考えておきましょう。
・例1.入退場時の混雑を避ける
・例2.会場が密にならないよう、座席の配置・定員などに配慮する
・例3.濃厚接触にならないように、食事の提供方法を工夫する 等
いわゆる3密(「密閉空間」「密集空間」「密接空間」)を避ける明確なルールを設け、参加者を安心させるイベントの企画が大切になります。
02オンラインイベントで考えられるリスク・注意点
ニューノーマル時代の在り方として期待されるオンラインイベントとはいえ、まだ企画・運営に不慣れな企業は多いです。とくに配信環境や参加者とのコミュニケーションにおいて、当日に想定外のトラブルに苛まれることは珍しくありません。事前に以下の対策を検討しておきましょう。
・例1.途中でダウンしないような、配信内容・受信者に合わせたシステムの選定
・例2.ITリテラシーが低い人でもうまく視聴できるような工夫
・例3.運営者・配信側・受信側が混乱しないオペレーションの構築(連絡体制・時間のバッファ)
個人のITリテラシーや配信環境は、主催側でコントロールできない部分があります。あらゆるケースに対応できるよう、体制や機材について綿密な話し合いが必要です。
このようにリアルとオンライン双方とも、会場(環境)の選定や人員配置、使用ツール等の事前準備、当日のバックアップについて考えなければなりません。
とくにハイブリッド型イベントは、どちらのリスクにも対応できる対策が必須になるでしょう。
より具体的な対策については、当記事の文末にある資料「ニューノーマルに対応したハイブリッド型イベント実施のポイント」でご紹介しています。ぜひそちらもご参考ください。
ハイブリッド型イベントの成功事例
ここからは実際に、ハイブリッド型イベントをいち早く実践した企業の成功事例を見ていきます。
01成功事例の概要
今回ご紹介するのは、化粧品販売を取り扱うB社のインナーイベント「年間表彰アワード」の事例です。
リアルイベント(会場)参加の「アワード受賞者」が、オンライン(ライブ配信)参加の「非受賞者」に見守られる形になりました。
アワードは「感動的な演出/サプライズ」をゴールとして進行しています。では以下より、具体的な進行内容を見ていきましょう。
02成功事例の具体的な演出・サプライズ
今回のイベントでは、社員たちへの「事前告知」の時点でサプライズが仕込まれています。
事前
・映画の予告編のような形でアワード開催を告知し、社員に視聴してもらう
・リアル・オンライン参加者双方に「招待状」を手渡す
開催当日はリアル参加者・オンライン参加者がインタラクティブに交流する、臨場感あふれる演出が行われました
当日
・受賞者をドキュメンタリー番組風のVTRで紹介する
・「受賞者」「受賞者を送り出した営業所」を二次元中継でつなげる
・オンライン参加者からのメッセージや「いいね」投稿
・アンケートをオンラインで集約
そしてイベント終了後にも、参加者全員に向けてのサプライズを用意しています。
終了後
・アワードの映像を編集し、総集編として全社員に配信
このようにリアル・オンライン参加者の双方を満足させる企画が、事前・当日・終了後でそれぞれ実施されました。
03参加した人の声
実際にアワードを企画した人・参加した人それぞれの声を見ていきましょう。事務局は参加率や会場の盛り上がりについてコメントしています。
事務局
・いままで参加できなかった非受賞者の参加率が大きく向上した!
・いままでより多くの人に見ていただけた上に、オンラインならではの演出による一体感で、リアル会場が例年以上に盛り上がった!
オンラインで参加した非受賞者は「よい刺激になった」とのコメントを残しました。
非受賞者
・「自分もこんなふうに表彰されたい!」と、モチベーションが一気に上がった!
リアルでの参加になった受賞者にとっては、一味違う特別感を味わえたようです。
受賞者
・テレビ番組のように紹介してもらえて嬉しかった。
「がんばってよかった」と思ったし、「またがんばろう」とモチベーションが上がった!
多くの参加者が、「リアルとオンラインを組み合わせたハイブリッド型イベントならではの効果」を感じたという結果となりました。「受賞者の承認欲求を満たし、非受賞者が羨むような特別感」という目的・コンセプトに則した、ハイブリット型イベントの成功事例といえます。
まとめ
これからのイベントは「リアル+オンライン」が主流になっていくと推測されます。
実際にインナーイベントを皮切りにして、すでにハイブリッド型イベントを開催する企業が増えてきています。
現在の危機的状況を「変化するチャンス」と捉えて、新しいイベントの在り方を検討してみてはいかがでしょうか。
しかし、イベント開催を控えている担当者の中には「もう少し具体的な手法や注意すべき点を確認したい」と考えている方も多いと思います。
そのような方のために今回、「 ニューノーマルに対応したハイブリッド型イベント実施のポイント(ハイブリッド型イベント 実施のチェックリスト~入門編~付)」用意しました。
こちらはリアルイベント・オンラインイベントの双方に対応できるよう、「イベントを開催するために必要な知識・ポイント・具体的な対応策」をまとめたものです。
企画・実施前の確認に使える「ハイブリッド型イベント 実施のチェックリスト~入門編~」も資料内に付属しています。ぜひダウンロードして、安心安全なイベントの企画・運用のためにご活用ください。