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企業・団体向け WEBマガジン「#Think Trunk」 インセンティブを科学する【セミナーレポート】 withコロナ時代に社員のモチベーションを高める、インセンティブ設計のヒント

2020.09.08
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働く人の価値観の多様化に伴い、インセンティブに求められる要素が複雑化しています。さらに、集合型インセンティブイベントの開催が難しい状況にある今、社員のモチベーションを高める施策に悩む企業は少なくないでしょう。JTBでは、withコロナ下でのインセンティブイベントやインセンティブ制度設計を再始動するきっかけにしていただこうと、2020年7月に「インセンティブと脳科学」と題したオンラインセミナーを実施。総務・人事、営業推進・マーケティング関連部署の皆さまを中心に、約1,500名にご参加いただきました。本記事では、基調講演 「インセンティブと脳科学」およびパネルディスカッションのポイントをダイジェストでお届けし、ニューノーマル時代のインセンティブ施策のヒントを探ります。

【オンラインセミナー】JTB Incentive Lounge 「インセンティブを科学する」 開催概要

●日時:2020年 7月31日(金)16時~17時30分
●プログラム:
*第1部 基調講演 「インセンティブと脳科学」 講演者:池谷裕二氏(東京大学・薬学部・教授)
*第2部 ニューノーマル時代のインセンティブの在り方に関するパネルディスカッション

パネラー:今里直史氏((株)帝国ホテル 営業部 次長)
菊入みゆき氏(ワーク・モチベーション研究所 所長/明星大学 特任教授)
福田敦((株)JTB 企画開発プロデュースセンター所長

インセンティブとやる気を脳科学の見地から解説 ~基調講演より~

基調講演 「インセンティブと脳科学」では、東京大学・薬学部・教授で、『海馬』『記憶力を強くする』『進化しすぎた脳』などの著者でもある、池谷裕二先生から「インセンティブ=報酬」と「やる気」について、脳科学の観点から解説していただきました。

インセンティブ=報酬とは何か?

そもそもインセンティブ、すなわち「報酬」とは何でしょうか? その正体は、「脳の“腹側被蓋野(ふくそくひがいや)”という部分に対する刺激」です。腹側被蓋野が刺激されることで、快感や高揚感がもたらされることがわかっています。腹側被蓋野は動物の脳の中心部にあり、ドパミン神経細胞とも呼ばれます。

動物と人間の「報酬」には、違いがある

人間を含め動物は、基本的に「ご褒美」がないと学習、成長しません。逆にいえば、ご褒美をもらうことで学習できます。これを、”報酬によって行動が「強化」される”といいます。    そして、行動を「強化」する方法には、次のような3つの段階があります。    

●STEP1:外発的強化
すなわち「しつけ」です。他者から褒められることで、「やってみよう」という段階です。
●STEP2:代理強化
観察学習です。例えば同僚や友人が褒められるのを見て、「自分もやってみよう」という段階です。
●STEP3:自己強化
内面化の段階です。他者から褒められなくても、「人の役に立った」「尊敬された」「感謝された」「成長した」「よくやった!」などと、自分自身を褒めることで、自分の行動を「強化」できる段階です。
            
「ご褒美がもらえるから、がんばる!」という外発的強化による行動は、次項で説明する「手段動機」です。手段動機からの行動は持続性が低く、成果も一定以上には伸びないことが、調査からわかっています。従って、「外発的強化」から「代理強化」、そして「自己強化」できる人材へと成長を促すようなインセンティブ設計をすることが、企業のインセンティブ制度の在り方として望ましいといえるでしょう。

やる気(モチベーション)とは何か?

では、やる気(モチベーション)とは何でしょうか? その正体は、「脳の側坐核(そくざかく)が活性化すること」です。腹側被蓋野の下流にある側坐核が活性化され、ここから神経伝達物質の一種であるドパミンが放出されると、やる気スイッチが入ります。    

やる気を司る2つの「動機」

それでは、何が側坐核を活性化させるのでしょうか。これに関わる、興味深い調査結果をご紹介します。2014年にアメリカの陸軍士官学校が学生に対し、陸軍を志望する動機についてアンケートを行い、その後の「継続性」や「成果」と学生の志望動機の関連を、数年にわたり追跡調査しました。その結果、志望動機が「家族を守りたい」「国家のために貢献したい」「出世して尊敬されたい」といった「手段動機」(注1)だった学生より、「陸軍はなんだか楽しそう!」という「内発的動機」(注2)だった学生の方が、学校や陸軍を途中で辞める率が低く、かつ出世する率が高いことがわかりました。
                    
(注1)    手段動機:目的や目指す理由があり、そのための手段とする行動動機
例えば、「成績が上がったらお小遣いをもらえるから、がんばって勉強する」という場合、「お小遣いをもらう」ことが目的であり、「がんばって勉強する」ことはその手段でしかない。このような外的刺激による行動動機を「手段動機」と呼ぶ。
(注2)    内発的動機:理由付けして行動するのではなく、「好き」「楽しい」気持ちから、自発的に行動する動機
例えば、「プログラミングが楽しくて、寝る間も惜しんでプログラミングの勉強をする」という場合、「プログラミングが好き、面白い、上達することが嬉しい」が報酬。「お小遣い」のような外的刺激がなくても、自ら進んで勉強をがんばることができる。このような自発的な行動動機を「内発的動機」と呼ぶ。    
    
つまりこの調査結果は、内発的動機=「好き」「楽しい」ことが、一番のインセンティブであることを示しているといえます。

■まとめ

自己強化と内発的動機づけから考える、インセンティブのポイント
池谷先生の講演からは、インセンティブに次のような脳科学的視点を取り入れることが効果的だと考えられます。
受賞者に対しては、「自己強化」のステップ、すなわち「人の役に立った、尊敬された、感謝された、成長した」と実感できる制度であること。
非受賞者に対しては、「代理強化」のステップ、すなわち「仲間が受賞したなら自分にもできるかもしない」と思えるようにすること。
さらに、「ご褒美がもらえるからがんばる自分」から、「楽しくて夢中になってがんばる自分」へと変われるよう促すことができれば、より長いスパンで成果を出し続けられるようになるはずです。他の表彰者の発表を聞く機会や接点を増やしたり、仕事に対する意欲が高い人たちと交流を深めたりするのも効果的でしょう。

脳の仕組みを生かして自己成長を促し、「楽しくて夢中になってがんばる自分」を支援するインセンティブを、制度設計の参考にしてみてはいかがでしょうか? 

インセンティブ設計者のお悩みにお答えします!~パネルディスカッションより~

続くパネルディスカッションでは、インセンティブ設計に関わる方々からお寄せいただいたお悩みやご相談に、3人のパネラーが具体例を交えて回答しました。

【相談】コロナ禍でインセンティブイベントの開催が困難になっています。どのような方法なら可能でしょうか?

はじめに、「コロナ禍でインセンティブイベントの開催が困難になっています。なんとかして続けたいのですが、どのような方法なら可能でしょうか?」というご相談に対し、長年にわたり、旅行やMICE(注3)の企画制作、インセンティブ事業とその効果測定に携わる、福田敦((株)JTB企画開発プロデュースセンター所長)が、オンラインで開催したばかりの「JTB Challenger’s Awardアワード」の事例を紹介しました。
(注3)Meeting(会議・研修)、Incentive travel(報奨旅行)、Convention(国際会議・学会)、ExhibitionまたはEvent(展示会・イベント)の総称
                                    
「JTB Challenger’s Awardアワード」は、全国の法人事業に関わる約5,200人の社員を対象に、毎年行われるインセンティブイベントです。例年、受賞者のみを対象にホテルでの表彰式と懇親会を開催していましたが、今年は通常のイベント実施が難しくなりました。そこで、受賞者の紹介VTRや役員からの祝辞、成功事例のプレゼンテーションなどを事前収録し、2020年7月10日に初めて全社員にオンデマンドで配信しました。

実施後のアンケートからは、コロナ禍という状況下でもアワードを実施したことに対する社員からの感謝の声が多く寄せられました。また、社員全員が視聴したことでアンケートの回答率が大幅に向上し、特に非受賞者の認知度、モチベーション、行動意欲度のすべての数字が向上しました。全員参加型のイベントにより、非受賞者の意識向上・自分事化につながった結果だと考えられます。一方、受賞者からは「リアル開催の方が盛り上がる」という意見が多く、「次回がんばりたい」という意欲度もやや減少しました。
                                                
「コロナ禍にあっても、どんな形でもいいから継続したい」という思いから、オンラインで実施したことで、会社の姿勢を示すことができました。多数の社員から感謝され、「確実に会社からのメッセージが伝わった」と感じています。また、オンラインだけで開催するデメリットもわかりました。これからインセンティブイベントを企画される方は、受賞者にはリアルの表彰の場を提供しながら、全社員がオンラインで参加できるよう、リアルとオンラインを融合した「ハイブリッド型インセンティブイベント」を検討することをお勧めします。

【相談】インセンティブイベントで三密にならないか心配です。どのようなやり方なら実施できるでしょうか?

続いて、おもてなしの立場から多くのインセンティブイベントの最前線で指揮を執られる、(株)帝国ホテル 営業部 次長の今里直史氏に、「インセンティブイベントで三密になってしまわないか心配です。なんとか実施したいのですが、どんなやり方なら可能でしょうか?」というご相談に回答いただきました。帝国ホテル東京がどのようにして濃厚接触を回避しながら、インセンティブイベントを開催しているか、その具体例を伺いました。
                        
帝国ホテル東京では、ホテルにとってのニューノーマルを考えるにあたり、お客さまと従業員の健康・安全を守ることを第一に、ホテル全体の安心安全対策を以下の通り徹底して行っています。

・すべての出入り口に、検温用サーモグラフィを設置
・お客さまが頻繁に触る扉などの手が触れる場所は、30分おきに消毒
・飛沫感染防止のアクリルパネルを設置して接客、職務に応じてマスク、フェイスガードを着用
・外気を取り入れるシステムの設置と窓の開放で、換気を促進

表彰式などを行う宴会場は、レイアウトを工夫しています。例えば、図の「孔雀の間」スクール席の場合、従来は1テーブル3人掛けだったものを1テーブル1人掛けに変更しています。本来の収容人数の4分の1に抑えることで、十分なソーシャルディスタンスを保つことが可能です。

 

さらに二酸化炭素の濃度を常に計測し、来館人数に応じて適正な循環量で外気を取り入れる換気システムを導入し、厚生労働省にて推奨される必要換気量を保っています。4階の窓付きの宴会場では、外気を直接取り込むために、網戸を設置しました。

交流・情報交換の場として欠かせないブッフェスタイルの立食パーティも、食事の盛り付け方や、食事コーナーと歓談コーナーを分離するなど、工夫と対策を十分に施せば、コロナ禍にあっても実施することができます。「インセンティブイベントの開催をあきらめない」「やり続ける」という会社の姿勢を見せることは、きっと社員のモチベーションの向上につながるはずです。

【相談】インセンティブ制度のモチベーションに与える影響は?/インセンティブ制度を効果的に伝えるには?

最後に、長年にわたり働く人のモチベーションを研究されてきた、国内のワークモチベーション研究の第一人者である菊入みゆき氏(ワーク・モチベーション研究所 所長/明星大学 特任教授)には、インセンティブに関するご相談・ご質問に多数お答えいただきました。その中から2つのご質問に対する回答を紹介します。

Q:インセンティブ制度が社員のモチベーションに与える影響は?
今後も有効な手段になり得ますか?
A:インセンティブ制度は、社員のモチベーション向上に確実に寄与しています。

JTBコミュニケーションデザイン ワーク・モチベーション研究所が実施した調査結果によると、社員のモチベーションを上げる2大施策は、    
    1)ワークライフバランスがとれている=働きやすさの実現
    2)がんばったことが認められ、評価される=働き甲斐の実現
でした。インセンティブは、2)にあたります。このことからも、インセンティブ制度が社員のモチベーション向上に、確実に寄与していることがわかります。

Q:インセンティブ制度を社員に効果的に伝えるには、どうしたらよいでしょうか?
A:受賞に至ったその仕事の意義や価値を伝えるとよいでしょう。

インセンティブ=報酬には、良い側面と悪い側面があります。

■良い面とは・・・
報酬には「がんばった証し」、「努力の結果」などの「情報」が含まれています。その「情報」を受け取ることで、「認められた」、「評価された」という喜びが得られます。

■悪い面とは・・・
報酬が目的になると行動がふりまわされるようになります。報酬が少ない、あるいはなくなるとモチベーションが下がったり、やる気がなくなってしまったりします。

そこで、インセンティブ制度を伝えていく際には、なぜ受賞できたのか? という「情報」の側面を強く打ち出すとよいでしょう。「アワードを受賞することは、お客さまにとっても社会にとっても、非常に価値・意義のある仕事をしたということである」と伝えることで、インセンティブの良い面を引き出し、社員の参加意欲を高めることができます。例えば、表彰の際にお客さまからのメッセージ動画を紹介するなど、「喜んでいただけた」ことを実感できるような演出を加えると、さらに効果的でしょう。
                    
菊入氏は、「インセンティブは、会社と社員のコミュニケーションの場であり、会社がぶれない姿勢、一貫した姿勢でメッセージを発信していけば、必ず社員のモチベーションアップという効果が生まれます」と締めくくりました。

■まとめ

インセンティブを脳科学からの視点でとらえた基調講演、そして皆さまからのご質問にお答えする形でインセンティブイベントの今をお伝えしたパネルディスカッションを通じ、ニューノーマル時代のインセンティブの在り方がイメージできるオンラインセミナーでした。インセンティブの制度設計に関わる皆さまにとって、「再始動・進む・歩き出す」きっかけにしていただけましたら幸いです。
JTBでは、皆さまのお悩みに少しでも寄り添えるよう、「JTB Incentive Lounge」を立ち上げました。今後も、企業の方向性を判断される皆さまが、その時期や環境下でまさに悩まれている課題をテーマとして取り上げ、セミナーやディスカッションの場を用意してまいります。どうぞお楽しみに!
効果的なインセンティブ設計について関心をお持ちの方は、ぜひこちらのダウンロード資料「マンガ 『そのインセンティブ 本当に効果ありますか?』」もぜひ併せてお読みください。

本記事に関するお問い合わせ、ご相談、ご不明点などお気軽にお問い合わせください。

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