今回は、従業員のモチベーションを高める「表彰式」をコロナ禍で活用が進んだオンラインで実施した事例をお届けします。新型コロナウイルス感染拡大を受け、株式会社JTBでは社内表彰式をオンライン(ライブ配信)で開催。昨年7月に続いて2回目となるオンライン表彰式「JTB Challengers Award 2020」では、ライブ配信ならではの演出とサプライズが参加者を待っていました。オンライン表彰式を演出する際に重視するポイントやAIを活用した実証実験について、主催側の責任者である株式会社JTB 常務執行役員 ツーリズム事業本部副本部長 檜垣克己(開催当時:法人事業本部事業推進部長)にインタビューを行いました。
感染対策を実施したうえで取材しております。
開催概要
- イベント
- JTB Challengers Award 2020
- 開催日
- 2021年3月30日(火)
- 開催方式
- オンライン開催(ライブ配信)
プログラム
- 開会挨拶
- 法人事業本部表彰
・個所業績表彰(「最優秀表彰」「優秀表彰」) - 法人事業本部表彰
・チーム表彰 ・個人表彰 ・サポーター表彰 - 法人ビジネスユニット表彰
・旅行事業 ・コミュニケーション事業 ・地域交流事業 ・総務系ソリューション事業 - 特別表彰
- Excellent表彰(3部門「チーム表彰」「個人表彰」「サポーター表彰」)
- 閉会挨拶
「オンラインインセンティブ表彰式」実施のポイントとは
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、リアルでのイベント開催自粛が強まる中、表彰式をはじめとする社内イベントも、オンライン化が進んでいます。JTBグループでも、コロナ禍前はリアルで開催していました。しかし、コロナ禍によりリアルでの開催が難しくなったため、2019年度から法人事業部門の社内表彰式をオンラインで開催しています。2020年度は、ライブ配信で開催しました。
― JTBでは表彰式をどのように位置づけているのでしょうか。
檜垣
JTBグループでは、20年以上前から表彰式を実施しています。当社では、企業成長において不可欠な「人財」の活躍を讃えることは従業員のモチベーションアップやエンゲージメント向上に直結し、ひいては企業の持続的な成長に効果的な取り組みであると考えています。当社が実施する表彰式では、以下の3つのポイントを重視しています。
01会社のメッセージを伝える
02受賞者の達成感を最大化させる
03受賞者以外の人のモチベーションを向上させる
1つ目は、経営陣が考えているビジョンやミッションを全従業員に伝えていくことです。感謝の気持ちだけではなく、会社が求める人物像、コンピテンシーはこんな人である、という考えも同時に発信できる場と考えています。当社のコンピテンシーモデルと言える受賞者の皆さんにさらに成長していただくことが大事なため、もっとがんばれるような仕掛けをしていくことが2つ目です。ライブ配信のアンケート調査では、「とても満足した」という受賞者のコメントがあり、安心しております。
そして3つ目は、表彰されなかった従業員の方々に「次は私たちも」と思ってもらえるような仕掛けをしていくことです。インセンティブ制度で重要な点は、「どの従業員でもチャンスがある」という公平性だと言えます。「自分ごと」にしてもらえるよう、3つ目のポイントも意識して、表彰カテゴリーと基準を設定します。今回の表彰式には約2800名もの非受賞者が視聴しており、受賞者以外にもイベント効果が波及できたと感じております。
このように、ただ開催するだけでは受賞者のみにしかスポットが当たりませんが、全社を巻き込むような方針を立てることで、全体の相乗効果で企業の業績アップや社員のモチベーション向上を実現する表彰式を開催することができるのです。
― JTBならではと言える、表彰式の設計ポイントやよりよいイベントにするための取り組みはありますか?
檜垣
2019年度、コロナ禍でやむを得ずリアル開催からオンライン開催に切り替えて実施しましたが、リアル開催に近づける演出が必要など、さまざまな課題が出てきました。
今回の「JTB Challengers Award 2020」では「受賞者の達成感を最大化する」ことを念頭に、前年度の課題であったリアル開催に近い演出を心がけました。例えば、新入社員を対象とした表彰部門では、受賞者に一言コメントをもらうのですが、誰がコメントするのかは、その瞬間までふせておき、その場で名前を発表するというサプライズ演出で臨場感を出しました。このような仕掛けを行うため、録画配信ではなくライブ配信を選択しました。
表情解析システムで「表彰式」を測定...その可能性とは?
― 「JTB Challengers Award 2020」では、初の試みとして「表情解析システム」を導入されたそうですね?
檜垣
今回導入した「表情解析システム」は、AIにより画面の向こう側にいる参加者の感情がわかるシステムです。人の感情を認識するセンシング技術は、自動車の運転手の表情から眠気を検知し警告を発するなど、すでに私たちの実生活に導入され始めています。さきほどもお話したように、オンラインイベントでは参加者の満足度やROIを可視化することが課題の1つです。アンケート以外の効果検証の方法がないか模索していたところ、「表情解析システム」の存在を知りました。このシステムを、オンラインインセンティブ表彰式の参加者に利用すれば、どの場面で感動したのかを捉えることができ、次の企画に役に立つデータになると考えたのです。
― イベント参加者の表情を解析することで新たな発見があると考え、今回は実証実験を行ったということですね。
檜垣
これまで実施していたアンケートと表情解析システムを掛け合わせることで、参加者自身でも認識していなかったインサイトを可視化できるのではないかと考えました。また人事データや従業員アンケートなどさまざまなデータと掛け合わせることで、社員の属性ごとに、表彰制度や表彰シーンを変えることもできるかもしれません。
なお、このソリューションは表彰式だけでなく、通常のミーティングやオンラインツアーの参加者にも利用可能だと考えており、横展開を検討しています。
リアルでもオンラインでも「感動を伝える」スタンスは変わらない
― リアルとオンライン双方で表彰式を実施されてきましたが、それぞれの違いや実施において心がけたポイントは何ですか?
檜垣
「感動」にどう近づけていくかという点では、リアルでもオンラインでもツールが違うだけで、目的は同じです。我々の理念である「感動のそばに、いつも」のスピリッツは、リアルでもオンラインでも変わらないのです。どうやって今の状態で最高の感動を伝えるのか、実感価値を得ていただくか、を重視して表彰式を企画してきました。また、当社では旅行において、「宿泊」と「交通」を組み合わせてパッケージとして価値提供してきました。この「つなげる」というアクションはDNAとして受け継がれてきており、どんな環境であろうと、ツールや演出などを工夫して「何をつなげて価値としていくのか」を熟考し、私たちはこれからもサービスを提供し続けます。
参加者の声を拾うための2種類のオリジナルアンケートを実施
ここではJTB Challengers Award 2020のライブ配信後に実施したインセンティブ制度の効果を可視化する「インセンティブ革命」とオンラインイベントの効果を可視化する「オンラインイベント効果測定アンケート」アンケートの結果から、受賞者と非受賞者のコメントを抜粋してご紹介します。
受賞者のコメント(一部紹介)
- 双方向の仕掛けや、受賞者コメントなどが聞けたのはよかったと思います。
- 取組事例の共有や各チームの表彰受賞はライブ感がありよかった。
- チャットが画面に表示されていたので、他個所へ異動しておられる方からメッセージがリアルタイムで流れ、嬉しかったです。
非受賞者のコメント(一部紹介)
- 受賞者だけでなく全員がその時間を共有できるライブ配信企画は今後も継続していただきたい。
- 刺激をもらいました。 来年受賞できる様にがんばります。
- 次回入賞出来るようモチベーションを高めて邁進致します。
- 全国の営業個所とオンラインでつながることで一体感があった。
回答結果から、達成感を感じた受賞者が多かったことがわかりました。また、非受賞者から「モチベーション維持のため、欠かせない制度だ」という声や、「来年こそは受賞したい」という熱意あふれるコメントも寄せられ、非常に意義のあるイベントだったと振り返ることができました。
メイキング・関係者インタビュー動画
まとめ
今回は、従業員の頑張りを讃える「表彰式」のオンライン開催の事例をお届けしました。新型コロナウイルスの感染拡大が長期化する中、企業におけるリアルイベントや団体旅行などは軒並み延期や中止となっています。会場に全社員を集めて実施する表彰式も例外ではありません。しかし、オンラインでの表彰式も工夫次第で、受賞者や参加者に対して十分にメッセージを伝え、効果を得ることが可能です。今まで参加できていなかった人が参加できるなど、オンラインならではのメリットもあります。
働き手の価値観や働き方そのものが急激に変化している今だからこそ、表彰式を実施していない企業様は、従業員のモチベーションやエンゲージメント向上の打ち手の1つとして、インセンティブ制度・表彰式の導入を検討してみてはいかがでしょうか?またすでに実施している企業様は、改めて自社のインセンティブ制度や表彰式を振り返ってみてはいかがでしょうか?