企業の持続的成長のためには「DX推進」が欠かせません。ただ、「マーケティングDXの重要性は理解しているが、何から手をつければいいかわからない」「具体的にどんなツールが必要で、どうデータを活用すれば成果に繋がるのか?」こうした悩みを抱える担当者様は少なくありません。本記事では、マーケティングDXの基本から、成果を出すための具体的なステップ、必須ツールの解説、そして成功事例までを網羅した「実践的ガイド」として、貴社のDX推進を後押しします。

DXとは?
DXとはDigital Transformationの略で、直訳すると「デジタル変換」という意味です。一方、ビジネス用語におけるDXにはもう一歩踏み込んだ意味合いがあり、「IT技術の活用によって企業活動や人々の生活の質を向上させること」とされています。経済産業省のDX推進ガイドラインでは「データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。
デジタルマーケティングとは?
デジタルマーケティングとは、デジタル技術やデータを活用して情報収集・分析を行い、各施策の効率化や効果の最大化を図り、売れる仕組みを作る施策のことです。
Webサイトに注力した「Webマーケティング」とは異なり、デジタルマーケティングの手法はオンラインで収集できるデータだけでなく、リアル店舗での消費者行動データの活用も含まれます。このように、さまざまなチャネルのデータを総合的にマーケティングに生かすことで、さらなる効果が期待できます。
またSNSなどデジタルの拡散力を活用することで、より多くのステークホルダーに企業の存在価値や商品をアピールすることができます。プロモーション効果だけでなくブランディングの効果も期待できます。
マーケティングDXが目指す究極のゴール:優れた顧客体験(CX)の実現
現代のマーケティングにおいて、最大の競争力は「顧客体験(CX:Customer Experience)」です。顧客は、オンライン・オフラインを問わず、ブランドとの接点で一貫した価値を求めています。しかし、現状では多くの企業が分断されたデータや場当たり的な施策に依存しており、顧客はブランドに統一感を感じられず、体験価値が損なわれています。
この課題を解決するために必要なのがマーケティングDXです。マーケティングDXとは、単なるデジタル化ではなく、データとツールを駆使して顧客一人ひとりを深く理解し、あらゆる接点で最適なコミュニケーションを提供することで、一貫した優れた顧客体験を創出する経営戦略です。
Before:分断された顧客接点
- 顧客データが部署ごとに散在
- 施策が個別最適で一貫性なし
→ 結果:顧客は「誰に何を伝えたいのか」が不明瞭な体験を受ける
After:DXにより統合された顧客体験
- 顧客情報をひとつにまとめて管理
- 顧客ごとに合わせた対応を自動で実施
- 集めた情報をもとに、すばやく判断できる仕組みを整備
→ 結果:顧客はどの接点でも一貫したブランド体験を享受
マーケティングDXの本質は「顧客理解の深化」と「体験価値の最大化」です。データ活用とツール導入は、そのための手段であり、CXを軸にした戦略設計こそが企業成長の鍵となります。
DXとデジタルマーケティングの関係性
デジタルマーケティングは、デジタル技術やデータを活用して顧客との接点を増やし、売れる仕組みを構築する施策です。一方、DX(デジタルトランスフォーメーション)は、こうしたマーケティング活動をさらに進化させ、顧客体験(CX)を軸にした戦略を可能にする取り組みです。
DXは単なるデジタル化ではなく、企業全体の仕組みを変革し、データとツールを連携させることで、マーケティングの精度とスピードを飛躍的に高めます。
つまり、DXはデジタルマーケティングを進化させ、顧客体験を軸にした戦略を可能にする鍵となります。
マーケティングDXを加速させる必須ツール
マーケティングDXの全体像とツールの関係性
マーケティングDXは、単なるデジタル化ではなく「顧客体験の質を高め、収益を最大化するための仕組みづくり」です。その中核となるのが、データを起点にしたツール群の連携です。
具体的には、CDP(Customer Data Platform)を基盤に、マーケティングオートメーション(MA)、営業支援(SFA/CRM)、分析を担うBIツールが有機的に結びつくことで、顧客理解から施策実行までを一気通貫で支援します。
重要なのは「ツールは目的を達成するための手段」であるという視点。導入ありきではなく、自社の課題とゴールに合わせた選定が不可欠です。
目的別・主要マーケティングDXツール解説
①顧客データを統合・管理する「CDP/DMP」
CDPは、オンライン・オフラインを問わず顧客データを一元管理し、個々の顧客像を明確化するための基盤です。DMPは広告配信に特化したデータ管理を担います。選定のポイントは、既存システムとの連携性とリアルタイム性です。
②見込み客を育成し、施策を自動化する「MA」
MA(マーケティングオートメーション)は、メール配信やスコアリングなどを自動化し、見込み客を効率的に育成します。導入時は、シナリオ設計の柔軟性と分析機能の充実度を確認しましょう。
③営業活動を効率化・高度化する「SFA/CRM」
SFA(Sales Force Automation)は営業プロセスの可視化と効率化、CRM(Customer Relationship Management)は顧客関係の深化を目的とします。マーケティング部門とのデータ連携が進むことで、営業とマーケティングの一体化が実現します。
④データ分析と意思決定を支援する「BIツール」
BIツール(Business Intelligenceツール)は、膨大なデータを可視化し、意思決定を支援します。重要なのは、ダッシュボードの使いやすさと予測分析機能。現場での活用度を高めるため、UI(User Interface)/UX(User Experience)も選定基準に含めましょう。
成果に繋がるデータ活用の実践ステップ
Step 1: ゴールの設定とKPIの策定
データ活用の第一歩は、「何を達成したいのか」明確にすることです。売上拡大、リード獲得、顧客ロイヤルティ向上など、目的に応じてKPI(Key Performance Indicator)を設定します。ゴールが曖昧なままでは、データ分析も施策も効果を発揮しません。
Step 2: 散在する顧客データの収集・統合(データ基盤構築)
顧客データは、Webアクセスログ、購買履歴、イベント参加情報など多岐にわたります。これらをCDP(Customer Data Platform)などの基盤に統合することで、顧客の全体像を把握できます。データの質を担保するため、クレンジングと正規化も重要です。
Step 3: 顧客解像度を高めるデータ分析と可視化
統合したデータを分析し、顧客セグメントや行動パターンを抽出します。BIツールを活用すれば、リアルタイムでの可視化や予測分析が可能になり、意思決定のスピードが飛躍的に向上します。
Step 4: 分析結果に基づく施策の実行(パーソナライゼーション)
最後に、分析結果をもとに施策を実行します。例えば、セグメント別に最適化したメール配信や、営業提案のパーソナライズ。データ活用は分析で終わらず、実行までがワンセットです。
事例紹介マーケティングのDX化で得られる効果
ここからは、事例を通じてマーケティングのDX化の効果についてご紹介します。

リード獲得2倍を達成した広告会社A社の事例
メディアのデザインに自然に溶け込み、ユーザー体験を阻害しないネイティブ広告サービスを提供しているA社は、従来のオフライン施策に加え、デジタルマーケティングの強化に踏み切りました。
具体的には、Web上で動画やe-bookを活用し、ユーザーと双方向のコミュニケーションが可能な「インタラクティブコンテンツ」を制作。インタラクティブコンテンツの最大のメリットは、ユーザーの反応に応じて、ニーズに合った最適な情報を提供できる点です。
さらに、自社サイトのトップページにインタラクティブコンテンツのポップアップを全画面表示させることで、約2倍のリード獲得に成功しました。
市場機会発見のスピードを向上させた大手衛生用品メーカーB社の事例
衛生用品メーカーB社では、消費者をよりよく理解するためにSNSやECサイトの口コミ等を収集・統合するデジタル基盤を構築。消費者インサイトの検証スピードを上げることで、商品戦略の高度化を目指しています。また、生産工場では、最先端のテクノロジーを活用し、資材搬送や設備の監視・制御システムを自動・ロボット化。単純作業や重労働「ゼロ」に成功し、製造原価の削減にもつなげています。こうしたデータ活用は、マーケティング戦略の精度向上にも直結しています。
AIの導入で営業効率の向上に取り組む大手ガス会社C社
ガス会社C社では、予測モデルを効率的に構築できるAIツールを導入したことにより、これまで数ヵ月かかっていた予測モデルの構築を短期間でできるようになりました。例えば、設備の故障や電力の市場価格の予測など、AIを活用することで精度の高い予測を実現。また、データを活用して見込顧客を数値化し、営業効率の向上も実現しました。このように、C社ではAI活用によって膨大なデータを速やかに分析・予測し、マーケティングの最適化を図っています。
顧客との新しい接点を創出できるビジネスイベントのDX化
近年、マーケティング施策の一つであるビジネスイベントをDX化する企業が急増しています。デジタル技術を活用したイベント運営は、今後のスタンダードとなるでしょう。
ビジネスイベントのDX化とは?
ビジネスイベントとは、セミナーや新商品発表会、展示会、経営方針発表会、優績代理店表彰イベントなど、企業が事業拡大のために行うさまざまな取り組みを指します。
DX化とは、従来のイベント運営フロー(告知~参加者集約~運営~事後フォロー)にデジタルツールを導入し、効果を最大化することです。
従来のオフライン中心のイベントでは、顧客との接点が限定的で、データ収集や分析が難しいという課題がありました。DX化により、デジタルを活用した顧客情報の収集や、データに基づく購買行動の分析が可能になり、より精度の高いマーケティング施策を実現できます。

ビジネスイベントのDX化の3つのメリット
ビジネスイベントのDX化は、単なるオンライン化にとどまらず、データ活用によるマーケティング精度の向上を実現します。具体的なメリットは次の3つです。
1.顧客接点の拡大と参加ハードルの低減
オンラインやハイブリッド型イベントの導入により、遠方や海外の顧客も参加可能になり、商圏が大きく広がります。これにより、新規顧客獲得の機会が増加します。
2.運営効率の向上とコスト削減
会場手配や印刷物の準備など、従来のオフラインイベントで発生していた負担を大幅に軽減できます。さらに、デジタルツールを活用することで、集客・受付・フォローまでを一元管理し、運営の効率化を実現します。
3.データ収集・分析によるROIの最大化
DX化の最大の価値は、イベント参加者の属性や行動データをリアルタイムで収集・分析できる点です。これにより、イベント後のマーケティング施策を精緻化し、投資対効果(ROI)を最大化できます。例えば、視聴データと購買履歴を掛け合わせて、次回イベントのターゲティング精度を高めることが可能です。
マーケティングDX推進の壁と乗り越え方:人材と組織
よくある失敗パターン:ツールを導入しただけで満足してしまう
DX推進で最も多い失敗は、「ツールを導入した=DX完了」という誤解です。実際には、ツールはあくまで手段であり、使いこなす人材と組織体制がなければ成果は出ません。導入後の運用設計や社内浸透が不十分なままでは、投資が無駄になるリスクがあります。
DX人材は育成すべきか、採用すべきか?
DX推進には、データ分析やマーケティング戦略に精通した人材が不可欠です。しかし、外部採用だけに頼るのは現実的ではありません。既存社員のリスキリング(再教育)と、必要に応じた専門人材の採用を組み合わせるハイブリッド戦略が有効です。特に、マーケティング部門とIT部門の橋渡しができる「DX推進リーダー」の育成が鍵となります。
部門間の壁を越え、全社で推進する組織体制の作り方
マーケティングDXは一部門だけで完結しません。営業、マーケティング、IT、経営層が連携するクロスファンクショナルな体制が必要です。さらに、社内の意識統一を図るためには、キックオフイベントやワークショップなど、コミュニケーションの場を設けることが効果的です。
まとめ
マーケティングDXは、単なるデジタル化ではなく、顧客体験(CX)を軸にデータとツールを活用し、企業全体で価値を創出する経営戦略です。
本記事で紹介した「ツール」「データ活用」「人材・組織」の3要素は、DXを成功に導くための不可欠なピースです。
しかし、現実にはこうした組織・人材面の課題は、多くの企業が直面する共通の悩みです。JTBでは、長年培ってきたイベントマネジメントやコミュニケーションデザインの知見を活かし、社内の意識統一を図るキックオフイベントの企画や、DX推進を担う人材育成プログラムのご提案も可能です。
自社だけでの解決が難しいと感じたら、ぜひ一度ご相談ください。
