近年、さまざまなメディアで“SDGs”という言葉を目にするようになりました。「社内でも関心は高まっているものの、何から始めたらよいかわからない」という企業のご担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで本記事では、SDGsの取り組みの1つとして注目されている「企業版ふるさと納税」を活用した取り組みについて、実際に企業版ふるさと納税を活用した企業の担当者の声を交えてご紹介します。
経営戦略に反映している企業は6割に留まっている
すでにSDGs(持続可能な開発目標)の考え方を企業理念に反映させている企業は、約8割にのぼるという調査結果もあります 。(2018年 一般社団法人日本経済団体連合会 企業行動憲章に関するアンケート調査より)
一方で、経営戦略や事業計画にまで組み込んでいる企業は6割に留まっており、今後は理念の実現に向けて具体的に行動していけるよう、戦略や計画に組み込むことが課題だと言われています。
寄付や物資提供だけではない、新しい社会貢献の可能性
SDGsの考え方が広がり、企業の社会貢献意識が高まっている一方で、実際にはどのような活動に自社で取り組めそうなのか、まだ検討段階にあるという企業も多いのではないでしょうか。
企業の社会貢献活動というと、省エネや省資源、温室効果ガスの削減へ向けた取り組み、被災地や支援団体への寄付、物資の提供などが挙げられます。実は今、企業が地方自治体へ行う寄付金額は年間1兆円以上にのぼり、市場が活発化しています。なぜ企業は、地域に寄付をするのでしょうか。
地域が抱える課題は、人口減少による過疎化や働き手の不足、エネルギー問題など、年々深刻化しています。こうした問題は、地方自治体や国からの助成だけでは解決が困難なケースも多いと言います。そこで注目されているのが、企業のもつ力。地域の課題意識に共感した企業が寄付などの支援を行うことで、課題解決を後押しすることができます。
また、自社の設備やアイデア、技術を提供することも、地域に貢献する方法の一つです。ここで、さまざまな社会貢献活動の形をご紹介します。
01 活動例 地方自治体とのつながりを作り、双方の活動を応援しあう
「地域に貢献したいけどきっかけが掴めない」という場合、例えば被災地の経済回復のための展示など、地方自治体がイベントや販売会を行う際に、自社の会議室などのスペースや設備を提供する方法があります。また、イベント開催などの機会が少ない地域で企業がスポーツや文化芸術のイベントを主催し、地域の住民を招くケースも見られます。
このように、自社の施設やイベントを通じた機会を提供することで、地域住民と企業のつながりを作り、双方の活動を活性化することができます。
02 活動例 自社の商品やサービスを活用し、事業に貢献する
本業のビジネスと社会貢献活動を組み合わせている企業もあります。ペットボトルのミネラルウォーターを買うと、売上の一部が開発途上国への寄付となるキャンペーンは、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
03 活動例 自社の拠点がある地域の環境を守る
企業と関わりの深い地域に貢献する方法もあります。例えば、自然を守り観光資源として長く活用したいという自治体に対し、その地域に商品の開発研究所を持つ企業が行った活動です。企業側にも「研究所所在地に貢献したい」という思いがあり、寄付に加えて地域と共同で保全推進事業(ガイドの育成や整備)を進め、地域とのパートナーシップを深めました。また、自社の顧客にこの活動をPRしたところ、多くの共感を得られたという実績もあります。
04 活動例 従業員の社会貢献意識を育て、事業開発につなげる
自社の従業員に対し、地域のイベントへの参加を促すなど、地域住民と積極的に関わる機会を作っている企業もあります。現場の声を聴き、どのように事業に活かせるのかを考えるきっかけとなり、広くは、企業の事業創造、サービス構築や商品の開発のためのアイデアが生まれることも期待されています。
こうした人材育成の視点が、地域との持続的なつながりや事業の発展に結びつこうとしています。
地域と企業がつながる新たなきっかけ「企業版ふるさと納税」
寄付や物資提供だけではなく、地域との深いつながりを作りたいと考える企業が増えています。そんな中、注目されているのが「企業版ふるさと納税」という制度です。
企業版ふるさと納税は、地方公共団体の地方創生プロジェクトに対して企業が寄付を行った場合に、寄付額の約6割を法人関係税から税額控除する仕組みです。(寄付に対する損金算入による軽減効果約3割と合わせて最大9割軽減)
ふるさとコネクトより引用
多くの方は「ふるさと納税」という言葉に馴染みがあるのではないでしょうか。
ふるさと納税(個人版)と異なる点として、寄付を行なった地方自治体から返礼品を受け取るなど、経済的利益を得てはいけないというルールはあります。しかし、企業版ふるさと納税の活用を機に生まれる地域との深いつながりは、直接的な返礼品をもらうよりももっと大きな意義があるとして企業から注目されています。
企業版ふるさと納税のメリットは税制の優遇だけではありません。地方自治体との新たなパートナーシップの構築や企業のCSR活動のPR、地域資源を生かした新規事業展開につながるなど多岐に渡ります。企業の「地域を応援したい」という気持ちと、地域にある課題をマッチングすることによって、その企業に合ったメリットを享受することができるのです。そのため企業は、地方自治体が行うさまざまなプロジェクトを知り、寄付先を選定します。
ポイントは、「どんなプロジェクトと出会えるか」
実際に企業版ふるさと納税を活用した企業の担当者に、寄付先を選ぶ際に重視したことを伺いました。
第1位プロジェクトの内容で寄付先を選ぶ
自治体の所在地や企業との関係性などはあまり関連がなく、社会貢献や自社のSDGs活動の推進など、企業が想定する寄付の目的にいちばん合ったプロジェクトを選んでいるケースが一番多いようです。
この場合、プロジェクトのわかりやすさが重要で、例えば社会貢献を目的とする場合は、自然災害からの復興・復旧支援や新型コロナウイルス感染症対策への支援など、緊急性の高いプロジェクトを選ぶ企業が多いようです。SDGs活動の推進が目的なら、子どもの教育のサポートや環境保全など長期的な視点をもち、「未来につなぐ」プロジェクトが多く選ばれています。
プロジェクト例
第2位寄付の内容に加え、縁のある自治体を選ぶ
第2位は、寄付の目的に沿ったプロジェクトの中から、企業と縁のある自治体を選んだケース。企業の近隣自治体や、工場などの事業所がある自治体など、縁が深い自治体のプロジェクトには寄付しやすいようです。また、社員旅行や個人旅行などでよく訪れる自治体への寄付も意外に多く、企業や寄付の担当者となじみのある自治体のプロジェクトは寄付先として選びやすいことがわかります。
プロジェクト例
第3位寄付したい自治体を決めてからプロジェクトを選ぶ
第3位は、寄付先の自治体が先に決まっていて、その自治体が募集しているプロジェクトから選んだというもの。社員旅行で訪れた縁で自治体に寄付をした例がありました。
このように、寄付先の選定にはさまざまなパターンがあるようですが、1番はプロジェクトの目的や寄付金の使途がわかりやすいほど寄付しやすい傾向にあり、自治体にこだわりはない、という声が多くありました。
まずは、どのような自治体で、どのようなプロジェクトが企画されているのか、情報収集することも一つの方法です。
まとめ
多くの企業と地域の間で、企業版ふるさと納税を通じた新しいつながりが生まれています。企業にとって寄付は、地域とつながり、長く愛されるための「きっかけ」の一つです。その先には、企業と地域が共に発展していく未来があります。この機会に、地域と共に行う、自社に合った取り組みについて検討してみてはいかがでしょうか。
JTBが運用する企業版ふるさと納税ポータルサイト「ふるコネ」には、多数のプロジェクトが掲載されています。企業版ふるさと納税の活用を検討される際の参考にご覧ください。