日本たばこ産業株式会社(以下JT)のRethink PROJECT(リシンク・プロジェクト)と、株式会社JTB、合同会社イーストタイムズは、2021年6月から地域の魅力を再発見・発信する地方創生プロジェクトを開始しました。業種が異なる3社が協業することで、それぞれの強みを活かしながら地方創生の一助を目指す本プロジェクト。なぜ3社が協業に至り、地方創生プロジェクトを推進することになったのでしょうか。本記事ではJTのご担当者にお話を伺い、協業に至ったきっかけやプロジェクトの社会的な意義について深掘りをしていきます。
3社による地方創生プロジェクトとは?
それぞれの分野で地域課題の解決に取り組んでいた3社。JTはRethink PROJECTとして、これまでにない視点や考え方を活かして、社会課題と向き合ってきました。また、JTBは『感動のそばに、いつも。』をブランドスローガンに、イーストタイムズとともに「ローカル魅力発掘発信プロジェクト」を通じて、地域の魅力を発信する取り組みを行ってきました。地域の魅力を再定義する活動をしていた3社は、実現したい地域社会の姿やアプローチに対する考えが一致し、今回の協業に至りました。
2020年9月から始まった「ローカル魅力発掘発信プロジェクト」では、地域の魅力を発掘・発信するプロが、住民の方々とともに、地域の隠れた魅力を発掘し、発信するワークショップを開催してきました。発掘された魅力を発信するレポートである「ハツレポ」はふるさと納税ポータルサイト「ふるぽ」に多数掲載され、その魅力をふるさと納税の返礼品にする取り組みも行っています。
ここからは、実際のRethink PROJECTの活動内容や、地方創生プロジェクトでの取り組みについて、JTのご担当者のお話をご紹介します。(取材協力:JT渉外企画室次長代理 加藤様)
Q.JTが取り組む「Rethink PROJECT」とは?
- 加藤氏
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Rethink PROJECTとは、私たちJTが日本国内で、パートナーシップを基盤に取り組む、地域社会の貢献活動の総称を指します。「視点を変えれば、世の中は変わる。」というメッセージを掲げ、パートナーの皆様と「新しい明日」をともに作り上げるために、社会課題と向き合うプロジェクトです。「Rethink」という言葉は直訳すれば、「再考する」「考え直す」といった意味を持っていますが、私たちはこの「Rethink」を「視点を変えて考える」という意味で使っています。
例えば、水が半分入ったコップを見たときに「半分も入っている」と思うのか、「半分しか入っていない」と思うのかは人によって異なります。「半分しか」と思った人が「半分も」の視点に、「半分も」と思った人が「半分しか」の視点に気付くことが、私たちが考える「Rethink」のイメージです。
Q.「Rethink PROJECT」での取り組みについて教えてください。
- 加藤氏
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Rethink PROJECTでは「Rethink」の概念のもとに、地域での清掃活動や、森林保全活動、著名人を招いての文化イベントの開催など、さまざまな施策を展開しています。
代表的な例では2004年から「ひろえば街が好きになる運動」という市民参加型の清掃活動を実施しています。全国各地のお祭りや催事にブース出展をし、ご来場者の皆様と力を合わせて街をきれいにするプロジェクトです。「“ひろう”という体験を通じて、“すてない”気持ちを育てたい」そんな願いを込めて、清掃活動に参加するきっかけ作りをさせていただいています。
今回の地方創生プロジェクトの意義
Q.新たな地方創生プロジェクトに参画する意義は何でしょうか?
- 加藤氏
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その地域だけにある物、魅力的な人、場所などを全国に発信するという、JTBさんとイーストタイムズさんの取り組み主旨に賛同し、共に取り組みをさせていただく意義を感じています。
JTはRethink PROJECTの一環として、2018年から「Rethink Creator PROJECT(リシンククリエイタープロジェクト)」というプロジェクトに取り組んでいます。そのプロジェクトの中では「地元を誰かに任せない」というキーワードを掲げて、全国各地での、一般市民向けのクリエイティブセミナーと、地元の魅力を発信するポスターコンテストを開催しています。そこでは、視点を変えて考えたものを形にして世の中に発信できる人財を「リシンククリエイター」と呼び、それぞれの地域の課題を地域のリシンククリエイターが解決する、いわば、クリエイターの地産地消による地方創生の実現を目指しています。
つまりは私たちも地方創生の一助となるべく取り組みをしていたため、JTBさんとイーストタイムズさんの取り組み主旨には感銘を受けるところがありました。
なぜ3社協業に至ったのか
Q.今回の3社協業に至ったきっかけを教えてください。
- 加藤氏
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協業に至ったきっかけは、当社の企業版ふるさと納税に関する記事をご覧になったJTBさんの「ふるコネ※」広報担当の方から、ご連絡をいただいたことでした。
JTBの企業版ふるさと納税サイト
実際にお会いし数カ月たった頃に、名刺管理アプリで、JTBさんが「ローカル魅力発掘発進ワークショップ」を開始するプレスリリースを出されたという通知が届いたのです。その際、JTとしてはもちろん、私個人が成し遂げたいことと全く同じことを考えてらっしゃる方がいるのだと衝撃を受けました。その後、私の方からご連絡を差し上げて、そのワークショップの責任者の方や講師の方とお会いして協業に至りました。
Q.ローカル魅力発掘発進ワークショップにおいて、特に共感した点は?
- 加藤氏
- 「ふるさと」は生まれた場所や住んでいる場所だけではなく、個々人の方々が思いを寄せる街、その全てがふるさとになりうるものであって、日本中、もっと言えば世界中のふるさとは魅力にあふれているものだと私は思っています。自分の住んでいる街の魅力は、長く住んでいるうちに当たり前のものになってしまうことがありますが、初見の方から見たら光り輝くものであふれています。「この街には何もない」とおっしゃる地域の方もいらっしゃいますが、Rethinkして視点を変えることで、その街の魅力を改めて認識し、それを広く世の中に発信してほしいと考え、その点でJTBさんに共感しました。
協業プロジェクトで実現したこと
Q.協業でこれまでどんな取り組みをされたのか教えてください。
- 加藤氏
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JTB沖縄さんをご紹介いただきまして、2021年に那覇市の市制100周年祝う「かなさなはプロジェクト」に取り組ませていただきました。多くの方々からのお祝いメッセージを集めて、メッセージと写真をセットにしたポスターで街を彩るという取り組みです。「かなさ」という言葉は、那覇の方言で「愛する、慈しむ」という意味を持ち、漢字では「愛さ」と書いて「かなさ」と読むそうです。このプロジェクトの名づけ親になってくださったのも、那覇出身でいらっしゃるJTB沖縄の社員さんです。こうしたアイデアも地元の方ならではだと、さまざまな取り組みの中で感じています。
プロジェクトのロゴでは那覇市の花であるブーゲンビリアをあしらっています。ブーゲンビリアの花言葉は「あなたは魅力に満ちている」。きっと楽しいこともあった、そして戦争というつらい過去もあった、それでも観光客を含む多くの方々を喜ばせてきた。そんな那覇市に対して、100歳のお誕生日にかけてあげたい言葉なんだろうなと思っています。
現地には行けなくても、那覇市の100歳をお祝いする人が日本中で一人でも多くなることを願い、JTB沖縄さんにはブーゲンビリアをあしらったステッカーとポスターをふるさと納税の返礼品に添えてお配りいただきました。プロジェクトの終了後、当社の社員が市内のポスターをはがす作業をお手伝いしていた際、市民の方から「コロナの時期に、こんなに笑顔をありがとう」とお声掛けをいただいたそうです。その話をお聞きして、JTBさんと目指した未来に間違いはなかったと確信しましたし、これらはJTBさんが地元の方々とのリレーションを築けているからできたことだと思っています。
Q.プロジェクトで活きているJTの強みとはなんでしょうか?
- 加藤氏
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まだまだ発展途上だと感じてはいるのですが、JTBさんと同じく当社も全国47都道府県に拠点をかまえて、日頃からさまざまなメディアの方々とお付き合いをさせていただいています。そのため、このプロジェクトの認知拡大や共感の向上に向けた広報活動の面では、当社の力が少しでも役立てていただけているのではないかと思っています。
また、全く業種が違う3つの企業体がこころざしを一つにして、地域のために取り組みを展開すること自体が強みとして、多くのメディアの方々から興味関心を持っていただいています。
ローカル魅力発掘発信ワークショップについて
Q.ローカル魅力発掘発進ワークショップの強みはなんでしょうか?
- 加藤氏
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Facebookのグループなどを通して、ワークショップの前後において参加者の方々とのコミュニケーションを非常に深く取られているのが特徴です。セミナーはその当日のみのコミュニケーションになってしまうことが多いですが、ローカル魅力発掘発信ワークショップではセミナーが終わったあとも継続的なコミュニケーションを担保することで、主催者や参加者の皆さん、そして参加者同士のリレーションが続いていくことに大きな価値があると思っています。
Q.ローカル魅力発掘発信ワークショップを通しての気づきは?
- 加藤氏
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SDGsの17番に「パートナーシップで目標を達成しよう」が掲げられている通り、パートナーシップの重要性を改めて感じましたし、体現させていただきました。人に得手・不得手があるように、企業にもきっと得手・不得手はありますが、パートナーシップを前提にすることで、その不得手の部分を補い合い、さらに得手の部分を昇華させることが可能になるのではないかと思っています。
主たる事業やリレーション先、それに取り組む目的などはそれぞれ異なっていたとしても、想いをともにできるのであればパートナーになることはできるし、パートナーシップとして効果を発揮することができるはずです。
今後のプロジェクトについて
Q.今後のプロジェクトの展望についてお聞かせください。
- 加藤氏
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なにかしらの支援を求めてくださる街で、街づくりをご一緒したいです。コロナ禍が明けた折には、それまで我慢していた旅行への欲求が爆発するだろう、とよく言われています。それは「新たなふるさとに出会いたい」という欲求を多くの方々が持っていると言い換えることができるのではないかと思います。
そのような観光については、JTBさんがもともと知見と人脈を持ち合わせていらっしゃるので、私たちRethink PROJECTとしては、JTBさんとのパートナーシップを基盤にしながら、地域社会における持続可能性の向上を一緒に果たしていくことができればと考えています。
まとめ
業種は違っても、地域の個性にフォーカスし、隠れていた魅力を発掘・発信したいと考えていた3社。同じこころざしを持っていた3社は「ローカル魅力発掘発信ワークショップ」をきっかけに共鳴し、協業に至りました。「人に得手・不得手があるように、企業にもきっと得手・不得手がある」と語ってくださったJTの加藤氏。3社のそれぞれの得意分野を活かすことで、これまで多くのワークショップから地域の魅力を引き出すことに成功してきました。企業を超えて協力し合い、地域が活力をつけていくことが、持続可能な社会の実現に繋がるのではないでしょうか。