Withコロナが常態化し、様々なリアルイベントが復活する中、製薬企業が実施する講演会においてもリアル開催が見られるようになってきました。一方でウェブ講演会が一定の市民権を得たこともあり、製薬企業にとってはリアルで開催する意義はもちろん、目的やニーズに応じた開催形式を選択する必要性が生まれています。そこで本記事では、多様化してきた講演会の開催形式やリアル開催の意義、医師側のニーズ等についてお届けします。
INDEX
リアル開催が回復傾向...医師にとっては選択肢が拡大
新型コロナウイルスの感染拡大から2年10カ月が経過する中、製薬企業が実施する講演会でも会場に医師を集め、リアルで開催するケースが見られるようになりました。しかし、リアル開催がコロナ禍前の水準に戻ったわけではありません。非対面・非接触型がキーワードとなり、技術革新を追い風にウェブ講演会が台頭し、講演会の開催形式が多様化しています。
コストや手間はかかるものの、講演者と参加者の双方向コミュニケーションが可能なリアル開催、多くの医師に参加機会を提供しやすい一方で講演者から参加者への情報提供が一方通行になりがちなウェブ開催は、それぞれの特性として長所と短所が明確でした。コロナで対面主義だった医師の価値観が変化したことに加え、対面の講演会でなければ提供できない価値をウェブ講演会で提供できつつあり、医師にとっては参加手段の選択肢が拡大しているようです。
製薬企業の創意工夫...ウェブ講演会のさまざまなカタチ
製薬企業もウェブ講演会に前向きな姿勢を示しています。ある内資系準大手は、ウェブ会議にディスカッションを盛り込み、その場で集計できるアンケート機能等を取り入れるなど参加型を意識した講演会を企画するといった工夫を行っていました。
別の企業ではTeams、Zoomでは困難なオンライン情報交換会を別プラットフォームの活用によって開催し、VR空間を用いたウェブ講演会、アナライザーシステムで双方向性や参加型に対応した講演会を企画するなど新たな試みを始めました。
エリア単位で行っていた講演会がウェブ方式になったことにより、エリアに限定せず全国で視聴することができるようになった一方で、エリア講演会で案内が困難だった医療関係者に自社ポータルサイトから配信することで情報提供対象を拡大することが可能となるなど、テクノロジーで距離の壁を乗り越えようとしています。
そこに、メタバース講演会という第3の選択肢が登場しました。内資系製薬大手は、医療従事者向けに本格展開を始めたことを公表。デジタルとリアルの空間をつなぎ、双方向性や対面のメリットを仮想空間で再現させていく新たなコミュニケーションに挑んでいます。
参加者はキーボードで自分のアバターを動かすことで会場の場にいるように講演会を聞くことができ、会場とオンラインとそれぞれが異なる参加形態であってもアバターを介して参加者間で交流ができます。
リアルとウェブ、メタバースと講演会の選択肢が拡大する中、今後もITの技術革新が進展し、医師とのコミュニケーションにおいても対面と非対面のバランスが変化し、非対面が優位となる局面が予想されます。毎年薬価改定が製薬業界に追い打ちをかけ、講演会に投じる予算の見直しを迫られている企業もあり、コロナが収束したとしても講演会のリアル開催が過去のように頻繁に実施される姿に戻るのは考えにくいでしょう。
リアル開催の意義、有用性とは?
講演会をリアルで開催する意義、有用性はどこにあるのでしょうか。各社からはリアルでの講演会には、「演者が参加者の反応をリアルタイムで確認しながら講演できる」「演者と参加者、参加者間で質疑応答や情報交換を容易に行える」などの利点が挙げられました。ウェブがどんなに進化しても対面で情報交換する価値は変わりません。小規模な参加人数でディスカッションを目的とした講演会はリアル開催を選択する企業もあり、対面でコミュニケーションが取れ、双方向を望む医師にはリアルでの講演会に対するニーズが現在も高いようです。
また、コロナ禍で普段は会えなかった様々な人たちと、久しぶりに会って話ができるのもリアル講演会ならではの魅力かも知れません。メールやウェブ会議でのリモート面会などでやりとりはしていても実際に会ったことがない人たちとの対面での雑談から話が弾み、思いも寄らず日常の診療に役立つような深い情報が得られたとの意見もありました。
医師のニーズは異なる!?リアル講演会の参加動機
医師にリアル講演会の参加動機を聞いたところ、全国講演会、都道府県・市を対象としたエリアでの講演会では医師のニーズが異なることが分かりました。ホテルなどを借りて開催される全国講演会の場合、招待される医師は厳選されるため、講演会に呼ばれることが「ステータス」となり、参加したいとの回答がありました。
一方、エリア講演会に参加する医師は面識がある関係が多く、病院からクリニック、クリニックから病院、病院から病院と患者の紹介が地域内で頻繁に行われている状況から、特定の患者の治療やケアについて有益な情報共有、意見交換の場となっていることが分かりました。地域での医療連携をサポートする側面で考えると、全国講演会よりもエリア講演会の方がリアルで実施する意義が明確と言えそうです。
まとめ
今回は、目標達成を実現する進化した講演会の在り方についてお届けしました。2025年に地域包括ケアシステムの構築を控え、専門医と非専門医、病院医師と開業医による医療連携の推進、地域医療に関する情報交換は必須となります。その地域での医療連携の状況や参加する医師のニーズ、処方傾向、他施設の医師との関係性などを把握した上で、ウェブ、リアルで提供できる価値を多様な側面から考え、講演会の開催形式を検討していくのもいいかも知れません。
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