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企業・団体向け WEBマガジン「#Think Trunk」 従業員たちは「新しい学び」を求めていた。ブリヂストン彦根工場の人事担当者が描く、新たな社員研修のかたち。~一人ひとりの習慣を変え、組織のカルチャーを変える~

2023.09.15
ミーティング・イベント
HR(Human Resources)
人材・組織力強化

乗用車用タイヤを製造するブリヂストン彦根工場は国内最大である1日あたり5万4千本の生産能力を誇り、およそ1500名にのぼる社員のみなさんが働いています。

2022年からは「Culture Change」というテーマのもと、全社的な改革が進められ、人財育成や研修の在り方も改めて見直されようとしています。

その改革を担う一人、総務部の中川隆博様にお話を伺いました。

写真左

株式会社JTB ビジネスソリューション事業本部 第一事業部
辛嶋 智

写真右

株式会社ブリヂストン 総務部 労務・CSR推進課
中川 隆博 様

創業者の時代からつづく、人財への投資を惜しまない文化

辛嶋:
はじめに、ブリヂストン様が「人財」や「人的資本」について、どのように考えているのか、企業風土や方針について聞かせていただけますか?
中川:
ブリヂストンには、創業者である石橋正二郎の時代から、人財への投資を惜しまない文化がありました。私がそのことをまず実感したのは、石橋がかつて無給で働いていた徒弟たちを有給にして、ちゃんと休日も取れるように労働時間も改正したというエピソードを聞いた時のことです。休まず働くことが当たり前だった時代に、きちんと休んで生産性を上げていこうと働く環境を変えていったのです。
辛嶋:
創業期というと、今から1世紀近くも前のお話でしょうか。
中川:
当時としては本当に、大改革だったと思います。その後、東京に新しいタイヤ工場をつくる時には、創業の地である九州から移住する社員や家族の方たちが幸せに暮らせるように、社宅はもちろん病院や児童会館、運動場まで、あらゆる施設を整えていきました。
辛嶋:
社員のみなさんのために生活基盤を丸ごと支えるような、並々ならぬ人財投資をされてきたのですね。
中川:
こうした方針は、時代や環境が変わっても社内に息づいていると感じます。たとえば、個人の活躍や成果がよりはっきり評価されるような人事評価の再設計や、IT分野の研修などを新たに加えた教育制度の拡充を通して、一人ひとりの「自律的な成長」やブリヂストンを通じた「自己実現」を促し、個人の成長が会社の成長になり、それがまた個人にも還元されていくような共創関係を目指そうとしています。

一人ひとりがイキイキと働き、明日も会社に来たくなる職場へ

辛嶋:
中川さんが今所属されている労務・CSR推進課のミッションについてもお聞かせいただけますか?
中川:
はい。ブリヂストンは2022年3月、未来からの信任を得ながら経営を進める軸として、「Bridgestone E8 Commitment」を発表しました。これは、ブリヂストンらしい「E」ではじまる8つの価値を、ブリヂストンらしいやり方で、従業員、社会、パートナー、お客様と共に創出し、持続可能な社会を支えることにコミットすることを表現したものですが、その中でも「Empowerment=すべての人が自分らしい毎日を歩める社会づくりにコミットする」という価値が、私たちが所属する課のミッションに大きく関わっています。
労務・CSR推進課では今、「一人ひとりがイキイキと働き、明日も会社に来たくなる職場の実現に向けて」をミッションとして掲げ、性別や年齢、障がいの有無を問わず、誰もが活躍できる職場になるよう取り組みを進めています。
辛嶋:
中川さんご自身は、このミッションをどのように自分の中に落とし込まれているのでしょうか?
中川:
これまでは工場内の多くの組織が、「同じ地域で生まれ育った男性」を主として構成されていました。しかし今では、LGBTQといった方々も含めて、これまで「あっても見えづらかった」多様性が可視化されるようになってきました。多様な個性・特性を持つ方が当たり前にそれぞれの職場にとけ込み、自分の持ち味を発揮できるようになるには、ハード面の配慮はもちろん、その場で働く一人ひとりの意識を変えていく必要があります。
この彦根工場が育んできた素晴らしいカルチャーを引き継ぎながら、多様な人々が活躍できる職場を作り上げていくことを常に意識しています。

中川:
そういったことを踏まえて、私という個人に会社と組織のミッションを落とし込んでいくと、「彦根工場の良いところを保ちつつ、誰もが多様性を受け入れイキイキと活躍できるよう、ハード/ソフト両面から変革を促していく」ということになると理解しています。

一人ひとり違う考えをお持ちなのでなかなか一筋縄では進みませんが、日々現場の方々とお話ししながら一歩一歩取り組みを進めています。

エンゲージメントサーベイで見えた、従業員との意識のギャップ

辛嶋:
中川さんは今、「7つの習慣ⓇOutdoor」をはじめ、これまでに無かった社員研修を取り入れ、彦根工場に新しいカルチャーを根づかせようとされていて、我々JTBも伴走支援をさせてもらっています。こうした取り組みのきっかけについて、お聞かせいただけますか?
中川:
2022年に「Culture Change」と銘打たれた全社的なプロジェクトが始動し、研修を見直す大きなきっかけになりました。当時は、コロナ禍が長引きながらも経済活動が再開していった時期で、改めてブリヂストンの「現場力」を高めて稼ぐ力を再構築するための施策の一つとして、プロジェクトがスタートしました。
製造技術や設備など、さまざまな部門の人たちが取り組みを進める中、私は彦根工場の人事を担う一員として研修の企画を任されることになりました。
辛嶋:
どのように研修の企画を進めて行かれたのですか?
中川:
まず現状を知るための一環として、定期的に行われている「エンゲージメントサーベイ」や「ストレスチェック」の調査結果に改めて注目しました。すると、彦根工場における調査スコアは、コロナ禍を経て悪化を見せており、エンゲージメントが低い社員の比率が高くなっていることがわかったのです。
はじめは、感染症対策により従業員同士の交流が減ったことが影響したのではないかという見込みもありましたが、現場で働く従業員から話を聞いたり、調査のフリーコメントをより詳細に分析したりする中で、エンゲージメントを悪化させている原因はそれだけでなく、従業員のみなさんが「学ぶ機会が少ない」と思っていることがわかりました。
辛嶋:
それは意外な結果ですね。中川さんのお話を伺っていると、むしろ「学びの機会」に溢れた会社ではないかと感じるのですが。
中川:
私も、この結果には少なからぬ衝撃を受けました。総務・人事の立場としては、作業ごとのマニュアルの整備からOJTの実施、安全・防災・環境などの講義、自己啓発を支援する制度などを数多く整えて、一人ひとりの成長を支援しているつもりでしたから……。会社側と従業員の意識のギャップが浮かび上がり、「単に研修メニューの数を増やすことが必ずしも従業員のみなさんの満足度につながるわけではない」ということに気づかされました。

みんなが欲している学びを、実感できるレベルで渡せていなかった

中川:
会社としては既にかなりの数の研修を用意しているものの、従業員たちからは「成長したい」「学びたい」「学ばせてくれない」というコメントが多く寄せられていました。恐らく「何を学ぶべきか」「何を学びたいか」まで明確にイメージできている人は少ないものの、今までとは別のところに新しい学びを求めている、あるいは、これまでとは違う学びの形態を求めているのではないかと推察しました。
辛嶋:
これまでとは違う学びの形態?
中川:
はい。これまでは、みんなが欲している学びを、実感できるレベルで渡せていなかったのではないかと思います。研修の企画を任された当初は、従業員同士の交流を復活させつつ成長に向けた動機付けや絆の強化をはかろうと、山籠もりや無人島体験など純粋なチームビルディング系の研修を探していたのですが、そこから一歩進んで「新たな学びを、彼らが実感できる形で提供できるような研修が必要だ」と認識を改めました。
辛嶋:
一般的なチームビルディングではなく、「新たな学びを提供する」ということに重きを置かれたのですね。
中川:
そこから、現場で働いているメンバーやその上司の方でプロジェクトチームを発足して、どのような学びを提供すべきか徹底的に議論を重ねていきました。自分でもリサーチをしていく中、Webサイトで「7つの習慣ⓇOutdoor」のことを知り、興味を惹かれました。

「7つの習慣ⓇOutdoor」とは?

7つの習慣ⓇOutdoorの解説

全世界で4000万部を超えるロングセラーとなり、多くのビジネスパーソンに読み継がれる名著『7つの習慣』。その良書に書かれた成功への普遍的な法則を、座学とアウトドアを組み合わせながら体験的に学ぶことのできる研修プログラム。

プログラムの内容は こちら

辛嶋:
どのようなところに興味を持たれたのですか?
中川:
私が調べた限り、一般のチームビルディング研修は、チームワークの強化に特化したものが多く、+αの学びを言語化・体系化するのが難しいものが多いという印象がありました。 一方で、「7つの習慣ⓇOutdoor」は参加者に対して「7つの習慣」が身に付いたかどうかという明確な基準があるため、学びの成果を可視化しやすい、つまり、人財育成の指標に取り入れやすいのではないかと考えました。
さらに、学ぶことが標準化されているため、「みなさん『主体的』であるとはどのような意識の状態ですか?」「『パラダイム』をどう認識していますか?」というように、研修後のフォローを標準化しやすいところにも魅力を感じました。もちろん、得られる学びの内容が、我々が検討していた「提供すべき学び」と一致していたことも理由の一つです。

新たなカルチャーをどう根づかせるか?研修をつくり込み、ロードマップを描いていく

辛嶋:
「7つの習慣ⓇOutdoor」への問い合わせをいただいたことがきっかけで、研修に向けた打ち合わせがスタートしましたね。
中川:
JTBのみなさんとは、研修の準備段階からいろいろなお話をさせてもらいました。工場のプロジェクトチームで議論した内容に基づき、「従業員はどんな学びを望んでいるのか」「上司(会社)はどんなことを(従業員に)身に着けてほしいと思っているのか」「どのような学び方が良いか」を議論して、私は少しだけシステム関連の仕事の経験があるので「要求定義」という言い方をして、「研修に求める要求は何か」という定義から始めました。
辛嶋:
私たちとしても、単にパッケージ化された研修を提案するというスタンスではなく、ブリヂストン彦根工場様の課題や従業員のみなさんの要求に対して「7つの習慣ⓇOutdoor」をどのように活かせるのかを一つひとつ言語化しながら打ち合わせを重ねていきました。
中川:
どのようなロードマップのもと研修を運用していくかという点も重視しました。この研修は組織に新たなカルチャーを根づかせるというプロジェクトの一翼を担っています。まずは工場長も含め、社内でインフルエンサーとなり得る基幹職、リーダー層の方に「7つの習慣ⓇOutdoor」を体験してもらい、トップから広めていくという方針を決めました。工場長も予想以上に積極的に参加してくださって、朝礼でのお話や社内報を通して、その体験が広く伝わっていきました。
カルチャーチェンジ

 

辛嶋:
初回からトップの方にご参加いただけたことは、私たちとしてもかなりの驚きでした。そこから、一般の技能員さん向け、入社1,2年目の社員向けの研修も実施しましたね。ブリヂストン彦根工場様とJTB、そして研修の講師も交えて打ち合わせを行い、それぞれのレイヤーに合わせて研修を設計していきました。
中川:
新入社員向けの研修では、まだ職場における他者との協働を経験したことのない新入社員に対して、どのような研修を行うべきなのか?また、研修後にまだ「7つの習慣」のパラダイムが浸透していない職場で新入社員が適応していくことを考えた時、研修と実際の職場環境とのギャップが生まれてしまわないか?こうしたことを細やかに議論しながら、シナジー発揮という究極の目的を理解しつつも「職場で良好な人間関係を築くためのスキル(処世術)を中心に学ぶ」という目的を設定しました。
若手社員のビジネスマインドセットとフォローアップ
若手社員のビジネスマインドセットとフォローアップ
中川:
さらに、新入社員のみなさんには研修を経て配属先での勤務がスタートしてから、それぞれの職場で研修から持ち帰った「習慣」を実践してもらい、秋にその振り返りの場となるフォローアップ研修を行う予定です。このフォローアップ研修もJTBや講師のみなさんと一緒に、一からつくりあげているところです。

入社1年目の社員から、工場長まで。 それぞれに響くストーリーがあり、持ち帰れるものがある

辛嶋:
まだ研修を体験された方は、1500名のうちの1割にも満たない人数ではありますが、どのような効果を感じていますか?
中川:
これまで彦根工場という大きな工場の中で、部門が違えば考え方も慣習もまったく違うという状況だったのが、まずは基幹職・リーダー職のみなさんが研修を体験したことで、「7つの習慣」という同じ文化圏を共有しながら話せるようになったことが大きいと考えています。「今は違うパラダイムの話をしているな」「違う意見だけど、それを受け入れたらどうなるんだろう」というように、これまでそれぞれが違うパラダイムで話をしていたことに気づき、部門や職階をこえたコミュニケーションが柔軟かつ円滑になっているのを感じます。
研修風景:焚火を囲んで自己開示
中川:
たとえば、現場で生産を任されているリーダーはタイヤをつくることを第一に考えている。一方で、人事を担う私にもパラダイムがあってルールを遵守してもらわないといけない。それがぶつかり合った時に、「なんだよ、分かってくれないな」という反応をされがちでした。でも、研修に参加したある主任とはそういうことがまったくなくなったんです。「中川の立場ならそう考えるよな」「でも自分の立場ではこうなんや」「どうしたらいいと思う?」と。この「どうしたらいいと思う?」が肝だと思うんです。「自分も困ってるんだ」と正直に言ってくれる。研修に参加された方とは意思疎通がすごく早くなったし、Win-Winになれるかたちを一緒に考えられるようになりましたね。
辛嶋:
大きな工場の中にいくつもの組織が点在しているからこそ、お互いのパラダイムの違いに気づけたことは、大きな変化だと言えそうです。
中川:
一般従業員や新入社員のみなさんからは、「学ぶ楽しさに気づけた」という意見が多く寄せられています。参加者のコメントを見ていると「こういう学びがあるんだ」「すごく新しいものを学んだ」という声や、「生きる者全員が受けるべきだ」というものもあって(笑)。自分が持ち帰った習慣を意識して続けている方もいますし、高校を卒業したばかりの新入社員が新人配属の時に書いた挨拶文の中にも、これは「7つの習慣」を意識しているなということが明確に分かるものがあり、年齢や社会人経験にかかわらず響く人には明らかに響いていると感じています。
辛嶋:
「7つの習慣」は人間の根っこである人格主義に基づいたものですから、年齢に関係なく入社1年目の方でも持ち帰れるものがあるのではないかと思います。
中川:
そうですね。入社1年目の社員から工場長まで、幅広いレイヤーの方に深い体験を残せる「7つの習慣ⓇOutdoor」の汎用性の高さと、課題のヒアリングからはじまり細やかに研修をカスタマイズするJTBや講師のみなさんの伴走支援が掛け合わさったからこそ、参加者たちに「新しい学び」を提供できたのだと思います。

若手社員研修の実施の様子

動画(5分44秒)

腰を据えて、一人ひとりに習慣を根づかせていく

中川:
もうひとつポイントを挙げると、「何を学ぶか」も重要ですが、「いかに学ぶか」が重要だと考えています。この研修では参加者が「7つの習慣」の重要性に自ら気付けるよう、アクティビティや座学のそこかしこに様々な演出・仕掛けを施してくれています。研修において「誰かに教わる/気づかされる」のと「自ら自覚/実感する」という違いには非常に大きな差があると改めて感じました。
たとえば、Win-Winのパラダイムを学ぶところで、あえて自分たちを競争のパラダイムに落とし込むような仕掛けがあって、自分たちは「チーム対抗だ」「他のチームに勝つ」という思い込みに囚われてしまい、実は他チームと協力すればクリアできるアクティビティだったということに後で気づき、ハッと「Win-Win」の大切さに気づかされるんです。
中川:
私たちは、従業員一人ひとりに新たな習慣を根づかせ、会社に新しいカルチャーを根づかせていくという大きな使命の一端を担っていますので、腰を据えて取り組む必要があると考えています。
『7つの習慣』の学び自体も、研修を受けてすぐ何もかもが変わりました、というような劇的な変化というよりは、少しずつ、少しずつ、もしかしたら気づかないところで変化は起きていくものなのかもしれません。「本当に文化を定着させる」という中長期的な視座のもとでどっしり構えて取り組むことが大事だと思っています。
辛嶋:
そのために、研修の実施後もプロジェクトチームのみなさんと振り返りを行い、課題や改善点を次につなげようとしてきました。
中川:
JTBのみなさんは、課題の背景を汲み取ろうと、掘り下げて細やかな質問をしてくれます。そして、我々の問題・課題の本質を把握したうえで具体的な打ち手に落とし込んでくれる。長期的な取り組みを進めていくうえで、とても信頼できるパートナーだと感じています。
これからも前を見据えて、今ある研修だけでなく、新たな研修の検討も含めて、一緒に「Culture Change」に挑んでいきたいと考えています。
辛嶋:
ぜひ、よろしくお願いいたします。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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