年間1万件超。これは、JTBが手がける「ビジネスイベント」の数です。(2019年実績)JTBは旅行会社のイメージが強いかもしれませんが、実は法人顧客に対するビジネスイベントの開催支援にも力を注いでいます。「旅行と同様に、通常とは異なる非日常的な“交流”が生まれることから、コミュニケーションの活性化や関係性の強化、エンゲージメント向上につながる」と捉えているからです。コロナ禍を経て、企業とステークホルダーの関係性やイベントに対する考え方も変化している今、どのようなビジネスイベントをつくっていくのか。2023年7月に実施した市場調査で判明したビジネスイベントの最新トレンドを基に、ミーティング&イベント事業の担当者が未来像を語りました。
出典:2023年9月1日 『東洋経済オンライン』に掲載された記事広告を一部修正したもの(制作:東洋経済ブランドスタジオ)
INDEX
多くの企業が「ビジネスイベント」を重視する傾向に
ビジネスイベント(社内外向けのセミナー、カンファレンス、周年イベントなど)を取り巻くトレンドの把握を目的に、JTBが2021年から年に数回行っている「ビジネスイベントに関するインターネット調査報告レポート」。 ビジネスイベント担当者400人※を対象に23年7月に実施した調査では、イベントに費やす予算が想定以上に高い傾向を示しました。
従業員数500人以上もしくは売り上げ100億円以上の企業に勤める社外向けイベント担当者200人と社内向けイベント担当者200人(重複担当者も可)
事前の期待も、開催後の手応えも大きいわけですが、そもそもどのような目的でイベントを開催しているのでしょうか。「社外向け、社内向けを問わず重視されているのはコミュニケーションです」と前澤は説明しています。
「必ずしもリアルで集わなくてもイベントが開催できるという認識がコロナ禍で定着したと思いますが、オンラインでもオフラインでも、コミュニケーションの活性化は非常に重視されています。特徴的だったのが、『イベントに参加する際に重視する目的は何ですか』という設問の結果です。参加者目線でも、コミュニケーションへの期待が大きいことがわかりました」
イベントを“点”とせず、“面”で効果を生み出す
実際、参加目的の設問では「通常では得られないコミュニケーションが図れる」が最も多いという結果に。続いて回答割合の多い項目を見ても、単なる情報収集ややり取りにとどまらず、非日常の交流によるエンゲージメントの醸成を期待していることは明らかです。
とりわけ社内向けイベントについては、コロナ禍でイベントができなかった反動だけでなく、人的資本経営に対する関心の高まりも影響しているとみられています。
「今回の調査で人的資本経営に『関心あり』と回答した人は6割を超え、その課題を解決する手法として最も多く選ばれたのは、社員向けセミナーや表彰式の開催など『社内コミュニケーションを活性化させる取り組み』です。そうした点からも、モチベーションやエンゲージメントを高めるための打ち手としてイベントが有効とみられていると思います。
一方で興味深いのは、イベントだけで解決しようとするのではなく、オフィス環境の整備や社内アンケートの実施、1on1ミーティングといった日常の施策と組み合わせたい意向の高さです。イベントを“点”にせず、日常の施策と掛け合わせて“面”で効果を生み出そうとしていると考えられます」(前澤)
単発のビジネスイベントでコミュニケーションを途切れさせるのではなく、日常の施策とシームレスにつなげることで、人的資本経営で重要視されるエンゲージメントを醸成していこうというわけです。
エンゲージメントを高めるキーワード「FUN」
せっかく課題に合わせたビジネスイベントを実施しても、成果を判断する指標がミスマッチでは効果も長続きしません。アンケートや1on1ミーティングといった日常の施策とのシナジーも生まれにくいでしょう。
そうした事態に陥るのを防ぐためには、「イベントの開催だけでなく、前後および全体を俯瞰して目標達成のためのストーリーを示す必要がある」と北島。JTBでは顧客の目的やニーズに応じてイベントを設計するとともに、開催前から開催後までの一連をサポートしています。
そのためには、テクノロジーやデータ活用も重要です。同社では、世界2万社超が利用するイベント管理プラットフォーム「Cvent(シーベント)」を活用したソリューションを提供し、イベント参加者のタッチポイントの把握や、そのデータの管理運用による、イベント単発ではない連続性を担保した施策の実施を支援しています。
加えて、海外の最新トレンドを取り入れるなど、イベントのあり方自体も随時アップデート。イベント関係者が注目する米Cventの主催イベント「Cvent CONNECT 2023」(2023年7月、ラスベガス開催)に参加した前澤は、「リアルイベントの価値を実感した」と話しています。
「あらゆる部分で、エンターテインメント性のある工夫を凝らしていることが印象的でした。エントランスでの温かい出迎えに始まり、ゲームや体験ブース、ボウリング場やプールサイドバー貸し切りでのナイトイベントなど、楽しさを感じさせる体験を至る所で提供していました」
前澤は、こうした体験に共通するキーワードは「FUN」だと言います。参加者に楽しさを感じさせることで、イベント自体だけでなく、出展企業やゲームコーナーなどで景品を用意する協賛企業に対しても“好感”が残るのです。
「参加者と出展社間、そして参加者間をつなぐ仕掛けも充実していました。専用アプリで自由にコメントが書き込めて情報交換できるほか、他の参加者との個別チャットも可能だったり、受付時に配られる名札の2次元バーコードを読み取ることで参加者同士が気軽にネットワーキングできたりと、コミュニケーションを促す仕組みが多数用意されているのも驚きました」(前澤)
ビジネスイベントといえば、主催者と参加者の「1対1」の関係がイメージされやすいでしょう。しかし「Cvent CONNECT」では、主催者の開催目的や、出展企業や協賛企業を含むすべてのステークホルダーのゴールを想定したうえで、それぞれのエンゲージメントの最大化を目指した取り組みを行い、「Win-Win-Win」の関係が構築されています。「さまざまな企業がいろいろな形でつながり、全員で『FUN』を醸成することで新たなビジネスが生まれていく可能性を感じました」と前澤は振り返ります。
イベントで顧客や従業員との「つながり」強化へ
JTBも同様に「FUN」の醸成を狙ったビジネスイベントを展開しています。7月に開催した企業向けイベント「JTB Engagement Camp 2023」がその1つです。
そこでとくに力を入れたのが、エンゲージメントを高める「空間」の演出です。イベントというと、会場そのものの空間に左右されるところも大きいですが、「JTB Engagement Camp 2023」では配置するアイテムを工夫。たき火台やローチェア、テントなどを配置して「キャンプ」をイメージした空間を会場に再現しました。無機質になりがちな会場で非日常を演出し、セッションにはアクティビティや寸劇を取り入れました。
注目したいのは、平日の午後から6時間という長丁場のイベントで、来場者の平均滞在時間が4時間を超えたことです。「終了後のアンケートでは『こういうイベントのやり方があるのか』という参加したお客様の声や、『お客様と普段は話せなかったようなことを長い時間話せた』といったJTB社員の声も聞かれました。非日常な空間での体験は心に残りやすく、コミュニケーションを活性化しエンゲージメントを高める効果があると実感しました」(北島)。
ビジネスイベントと一口に言っても、目的はさまざま。社内向けと社外向けで、やるべきことも違うでしょう。しかし、どんなビジネスイベントであっても、コミュニケーションを活性化し、エンゲージメントを醸成させることが重要なのは間違いありません。「JTB Engagement Camp 2023」のように「キャンプ」をイメージさせることが最適解とは限りませんが、空間演出がもたらす効果が大きいことは証明されたといえるのではないでしょうか。
「ビジネスイベントの課題を解決するためには、適切な空間演出を含めて、イベントの『マエ・ナカ・アト』に伴走するのが重要です。JTBが110年以上にわたって培ってきた『旅マエ・旅ナカ・旅アト』をワンストップでサポートし続けてきたノウハウを生かして、お客様の課題を理解し、綿密に設計したビジネスイベントをご提案していきたいと思います」と前澤は力を込めます。
旅行を軸とした感動や共感の創出を生業とするJTB。その事業ドメイン「交流創造事業」のベースとなる価値創造の源泉には、「つなぐ・つなげる」という考え方があります。豊富な知見と実績を持つビジネスイベントにおいても、顧客・従業員とのエンゲージメントを高め「つながり」を強化するパートナーとして、企業に寄り添います。