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企業・団体向け WEBマガジン「#Think Trunk」 子育て世代向けのマーケティング戦略。鍵を握るのは、「エデュテイメント」

2024.07.12
プロモーション
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会議・イベント運営

急激なスピードで社会が変化している現代。生まれ育った時代背景によって、購買動機にも大きな違いが生まれています。現在子育てをしているのは、デジタルネイティブであり、物質的豊かさを経験してきたミレニアル世代が多くを占めています。

マーケティング担当者の中には、「子育て世代への具体的なマーケティング戦略が立てられない」「子育て中の親だけではなく、子どもにも商品やサービスを届けたいが効果的な手法がわからない」という課題をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

今回の記事では、さまざまな企業と協働で子育て世代向けの教育コンテンツを開発してきた正頭英和先生にお話を伺いました。株式会社JTB 企画開発プロデュースセンターの高岡裕之が聞き手となり、子育て世代の購買動機やマーケティング戦略について深掘りします。

プロフィール

正頭 英和 先生(Shoto Hidekazu)

小学校教諭。東京大学客員研究員。1983年大阪府生まれ。関西外国語大学外国語学部卒業。関西大学大学院修了(外国語教育学修士)。京都市公立中学校、立命館中学校高等学校を経て現職。2019年に世界約150ヵ国・約3万人の中から、教育界のノーベル賞「グローバル・ティーチャー賞」トップ10に選出された。「桃鉄 教育版」のエデュテイメントプロデューサーを務めるなど、さまざまな企業と協働で教育コンテンツを開発している。

高岡 裕之(Takaoka Hiroyuki)

㈱JTB 企画開発プロデュースセンター
OYACONET-QUEST事業責任者

「OYACONET-QUEST」はJTBグループの社内公募制度により事業化された新規事業です。

便利なだけではダメ。子育て世代の購買動機に変化あり

高岡
正頭先生は、さまざまな企業と協働して教育コンテンツを制作されていますよね。その中で、子育て世代にはどのようなニーズがあると感じますか?
正頭
子育て世代に限らず消費者全体に言えることですが、今は“買う理由”がないと商品やサービスを買わなくなっている時代だと感じます。味が同じハンバーガーでも、環境にいいハンバーガーと環境に悪いハンバーガーだったら、やはり環境にいいハンバーガーを買う。買う理由が多ければ多いほど、消費者は決断がしやすくなります。
子育て世代になると、親が子どもに何かを買い与えるときには「教育的に意味があるかどうか」を意識するようになります。子どもが欲しがっているゲームソフトが2つあるとしたら、より学びにつながる方を買うわけです。
便利なものが溢れている現代で、「この商品は便利ですよ」という売り方をしても意味がありません。商品の差別化がしにくい時代における売り方は、何かしらの付加価値をつけるか、低価格を価値にするかの二択しかないと思っています。私は教育の専門家として、商品に付加価値をつけるアプローチとして教育コンテンツの開発に関わらせてもらっているような感じです。

これまでの企業とのコラボレーション実績に見る、子育て世代へのアプローチポイント

高岡
ものを買うことへのハードルが上がっている現代において、どう興味を持ってもらうかは難しそうですね。
正頭
そうですね。ただ、子どもの数は減っていますが、親が1人当たりの子どもにかける教育費の金額は上がり続けているんです。市場としては大きくなっているのではないかと感じます。
とは言え、toCサービスを提供している企業の方は、新しい広告のかたちを求めているように思います。α(アルファ)世代と呼ばれる子どもたちはテレビをほとんど見ないですし、YouTubeの広告もスキップするので見ていません。これまでと同じやり方では、子どもたちにアプローチする手段がないんですよ。そのような状況に対する新たな手段の一つが、「エデュテイメント※」だと思っています。
例えば、KONAMI(コナミ)さんが開発しているすごろくゲーム「桃太郎電鉄(桃鉄)」を買うのは主に30代から40代の親世代でした。子ども世代にはあまり親しまれていなかったんです。そこで「桃鉄 教育版」を開発することで、子どもたちにも興味を持ってもらうことにつながりました。その結果、めちゃくちゃ売れたんです。

エデュテイメント:教育(education:エデュケーション)と娯楽(entertainment:エンターテイメント)を組み合わせた造語。「楽しみながら学ぶ体験」を通して、知識を身につけていくこと。

高岡
これまでの商品やサービスにエデュテイメントの要素を加えることで、届ける層を広げていったわけですね。それ自体が企業にとってはプラスですが、さらにどのようなメリットがあるのでしょうか?
正頭
エデュテイメントの要素を含めることで“思考するプロセス”が加わり、その体験が親や子どもの記憶に残りやすくなります。例えば、さまざまな場所を訪れてもらうための工夫の一つとしてよくあるスタンプラリーが記憶に残り続けていることはほとんどないと思います。企業にとっては回って欲しいルートを決めてスタンプを置くだけで楽しんでもらえるのでコスパはいいのですが、記憶に残らないのであればマーケティングの効果は期待できないですよね。
基本的には、苦労をして成し遂げたことは人の記憶に残りやすくなります。不便だからこそ得られる益のことを「不便益」と言うのですが、そういう体験をしていくことで長期記憶に保存されやすくなります。私が教育コンテンツを開発するときは不便さや不足の要素を入れているので、楽しさに加えて達成感もあり、記憶に残りやすくなっているのではないかと思います。
高岡
なるほど。商品やサービスにエデュテイメントの要素を加えることは、親の行動にも何か影響があるのでしょうか?
正頭
子どもが好きになったものは、親も好きになってくれることが多いなと思います。不景気でお金を使うことに慎重になっている時代だからこそ、「失敗したくない」という気持ちもある。そうなると、試しにあれこれ買ってみようとは思わないですし、調べてもよくわからないと買わない選択をすることもあります。けれど、子どもが「これが好き!」と言ったものに関しては、親としては買い与えやすいんですよね。
例えば、子どもがアンパンマン好きであれば、アンパンマンのお風呂セットかドラえもんのお風呂セットを買うかで悩むことはないですよね。同じように、子どもがその企業の商品を好きになってくれたら、親として財布の紐はゆるみやすくなると思います。

「エデュテイメント」を盛り込んだ最新の開発事例 ~「OYACONET-QUEST」~

高岡
子どもの好きを増やしていくこともアプローチのポイントですね。今回、正頭先生とJTBで共同開発した新サービス「OYACONET-QUEST(おやこねっと くえすと)」は、まさにエデュテイメントの要素を含めた体験型教材なので、子どもの好きを広げることにもつながるように思います。

「OYACONET-QUEST」は、子どもたちと世の中のさまざまな場所、モノ、コト、情報との出会いを、子どもたちが楽しみながら学びにつなげることができるように、クエスト(ミッションチャレンジ)様式に仕立て、体験型教材としてご家庭にお届けするものです。例えば、事業者の皆様の「商品・サービス」「売り場」「職場」「施設」「イベント」などの事業活動自体を、エデュテイメントの力で、子どもたちの体験(学びの機会)に変えることができます。

このサービスを通して、ユーザーにはこれまでの体験の概念を覆す革新的な体験価値を、クエストの素材提供者である事業者の皆様には、自社・自施設・商品のプロモーションやブランディングの機会として子育てファミリーとの新たな接点を提供します。

高岡
「OYACONET-QUEST」の開発にあたり、意識したことを教えていただけますか?
正頭
大前提として、みんながハッピーになることは意識しました。「OYACONET-QUEST」には、エデュテイメントの要素を含んだコンテンツを作りたい企業にとっても、ご家庭にとってもメリットがあるんですよね。企業にとっては自社商品やサービスに触れてもらう機会を作れますし、ご家庭ではそれを低価格、もしくは無料で体験できる。そうすると、いい循環が生まれていくように思います。
「OYACONET-QUEST」の体験型教材

教育への関心が高い子育て世代。親が抱える悩みとは?

正頭
私は教員をしているので保護者と関わる機会が多いのですが、みなさん子育てに関してめちゃくちゃ悩んでいるんです。「どうしたらいいのかわからない」「正解がわからない」と言って。「OYACONET-QUEST」を通して、そこに一つのアンサーを出せるといいなと思っています。
高岡
保護者の方は、どのような悩みを抱えているのでしょう?
正頭
保護者からは「これからはどういう教育が必要ですか?」とよく聞かれます。私はそれに対して「体験です」と答えるようにしているのですが、次に出てくるのが「どんな体験をさせればいいですか?」という質問。
多くの方は、海や山での自然体験をイメージするんです。けれど、それだけが体験なわけではありません。日常生活の中にも体験できることはたくさんあります。洗濯も料理も一つの体験になるわけです。ただ、親自身に余裕がなかったり、子どもによってはハードルが高かったりして、なかなか上手くできないこともあります。そこに対して「これをやっておけばいいですよ」という提案ができるといいなと思っていたんです。
高岡
その悩みはよくわかります。実は、私自身が親として「子どもの体験をもっと深められないか?」という問いがあり、それがきっかけで「OYACONET-QUEST」の開発に踏み切ることになりました。
我が家では毎年3月になるといちご狩りにいくのですが、いつも「美味しい」「楽しかった」で終わってしまう。それはそれでいいのですが、もっと学びにつながるような仕掛けはできないかなと思っていました。正頭先生が提案してくださったキャッチコピー「いつもの場所が、体験のステージになる」は、まさに「OYACONET-QUEST」の特徴を表しているように思います。

「エデュテイメント」を活用したマーケティング

高岡
エデュテイメントの要素を入れた教育コンテンツを提供することで、企業側は顧客のインサイトを聞くこともできると思っています。
例えば、子どもが親にインタビューし、その結果をアウトプットしてもらう活動を入れることで、企業は普段なかなか聞けない顧客の声を聞けることにもつながります。教育的なフィルターを通すことでそんなアプローチも可能になるんですよね。正頭先生は、企業がエデュテイメントを活用することで、どのような効果が期待できると思いますか?
正頭
そうですね。集客にはつながりますし、社会的ブランディングにもなると思っています。小学生の子どもがいるご家庭に広告を出すことは難しい時代ですが、エデュテイメントの要素を入れることで興味を持ってもらうきっかけになりますよね。
さらに、今は利益を出すことだけではなく、社会貢献性の高い事業をしていくことが求められている時代です。けれど、そういう事業は基本的に収益を上げづらいので、企業としてはあまり予算を出したくないはずなんです。このジレンマがあるんですよね。エデュテイメントの要素を入れた教育コンテンツを出していくことで、集客や販売促進につながるだけではなく、ブランド価値も高まります。これは企業にとって大きなメリットではないかなと思います。
社員の中にも子育て中の方は多くおられると思うので、自社の教育コンテンツを体験してもらうのもいいかもしれませんね。結果として、企業愛を育むことにつながる可能性もあります。
高岡
まさにそうですね。私たちとしても、社会と家庭をつなぐことで子どもたちの学びの場を広げていきたいと思っているので、今日のお話は大変参考になりました。ありがとうございます。

まとめ

便利なものが溢れている現代、消費者は商品やサービスを買う理由を重視するようになりました。特に子育て世代は、子どもに何かを買い与えるときには教育的価値があるかどうかも意識するようになります。

そのような世代に向けて、正頭先生からは、エデュテイメントを切り口に商品の差別化を図っていくマーケティング戦略についてお話いただきました。エデュテイメントと取り入れることは、商品が記憶に残りやすくなるだけではなく、企業のブランディングや社会貢献性の向上、顧客インサイトの分析にもつながります。子育て世代向けの施策の一つとして、「OYACONET-QUEST」の活用もぜひご検討ください。


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