ワーケーションをしてみたいと回答する従業員は6割にも上り、若い世代を中心に期待されています。ただ、実際にワーケーションを経験した従業員の数は1割未満。その原因としては、従業員と会社の双方が費用負担を懸念していることや、会社がワーケーションを導入していないことなどが挙がります。そこで今回は、ワーケーションの導入を考えている総務人事の皆さまへ、従業員の本音とともに、導入へむけて経営陣や従業員にどのように働きかけていくのか、そのポイントを紹介します。
ワーケーションへの期待は高いが課題もある
従業員のワーケーションへの期待は高まっています。エン・ジャパン株式会社が行ったアンケートによれば、20代~30代の6割近くがワーケーションをしてみたいと回答しています。
特に、多い理由として「仕事をしつつリフレッシュできる」(59%)、「非日常に身をおくことで新しいアイデアが浮かぶ」(48%)、「長期休暇が取りやすい」(41%)などが挙げられます。しかし、ワーケーションをしたことがある人の割合は7%前後です。ワーケーションを利用できない理由として、多く挙げられているのは以下の3つです。
旅行・帰省先でまで仕事をしたくないから53%
社内で認められていないから36%
出勤しなければできない仕事だから33%
ワーケーションは単なる旅行ではなく、旅行の合間に仕事の時間を設けることで、今までよりも休みを取りやすくしようとするものです。そのため、「プライベートと仕事はきちんと分けたい」と考えている従業員は消極的な傾向にあります。また、社内にワーケーション制度が導入されていないので、興味があっても利用できないという声もあります。とはいえ、57%の人が今後ワーケーションという働き方が広がっていくと回答しており、期待が高まっているのは間違いありません。
ワーケーション制度を導入するためのポイント
ワーケーションを導入すれば、自分の好きな場所で仕事をしたり、家族サービスをしながら働くことができます。一方、企業側も休暇取得の促進、健康経営の推進、社員満足度の向上につなげることができます。とはいえ、勤怠管理や労災の適用ルール、費用の負担などが不明確で、ワーケーションの導入に踏み切れない企業が多いのではないでしょうか。
勤怠管理はどうする?
ワーケーションは、オフィス以外の場所で業務を行うため、従業員の労働時間把握が難しくなります。したがって、オフィス外にいても、勤怠管理できる仕組みを導入しなければなりません。
- クラウド上で勤怠管理できるソフト
- チャットツールで、◯時~◯時が不在である旨がわかるようにする
また、有給休暇を半日や時間単位で取得できるようにすれば、午後の2時間だけ会議に出て、残りの時間で休暇を楽しむといった働き方も可能になり、より休暇を取りやすくなります。
ワーケーション利用時の労災補償の範囲について
ワーケーションを行う際、従業員への労災補償の範囲についてあらかじめ決め、周知する必要があります。まず、労災補償の範囲は業務中のケガや病気(通勤中含む)に限られます。ワーケーション実施中でも、業務中のケガや病気と認められなければ、労災認定はされません。なお、労災補償の範囲に含まれやすいのは、以下のようなケースです。
- 自宅から宿泊施設への移動中の負傷
- 業務終了後に飲食店へ移動中の負傷
- 業務の前後や休憩中の負傷
一方で、業務終了後に飲食店で酔った際に怪我をした場合や、プライベートの旅行先から宿泊施設への移動中の負傷は、労災認定されにくいでしょう。労災が適用される範囲については、ケーススタディとして周知するなど、従業員の理解を得られるように工夫して伝えることが重要です。
従業員がワーケーションを安心して利用できる仕組みとは?
ワーケーション導入にあたり、障壁になるのが「人事評価」の難しさです。オフィスで一緒に働かない以上、従業員がきちんと業務を行っているのかが見えにくいため、どのように成果指標を設定するか考えなければなりません。また、正しく評価されているのか不安に感じる従業員もいます。これを避けるために、以下の施策が有効です。
- 従来の評価制度を見直し、結果重視の制度に変える
- 目標の設定や評価方法を客観的に判断するために数値を使う
- 部下にも業務内容について説明の機会を与える
まず、従来の結果とプロセスの両方を重視して評価方法では、残念ながら公平な判断は難しいかもしれません。そのため、誰の目でもわかる結果重視の評価制度に変えることが考えられます。加えて、目標設定や評価方法については、どの上司が見ても公平に判断できるように数値化する必要があります。さらに、部下が上司に対して業務内容や成果に至るまでの課程を説明できる機会を設けてみるのも効果的です。より公平な評価ができるようになれば、業績向上も期待できるはずです。
ワーケーションにかかる費用の負担は?
ワーケーションを導入する場合、以下の費用を従業員・企業のどちらが負担するのかが焦点になります。
- 宿泊費
- 交通費
- 観光費
- 食費
- 通信費
総務人事の皆さまの中には、滞在先までの移動費や宿泊費は個人負担が当然とお考えの方もいるかもしれません。しかし、ワーケーションに興味を持っている従業員の考えは違うようです。
BIGLOBEのアンケートでは、従業員が自費で支払ってもよい金額は5,000円未満が42.1%、5,000円から10,000円未満が22.1%という結果でした。このことから、ワーケーションは企業が導入する制度なので、自己負担は少なくて当然と考える従業員が多いことがわかります。そのため、自己負担で費用がかかることに従業員が理解を示さなければ、ワーケーションの普及率も上がりません。ただ、ワーケーションの導入費用を抑えたいと考える方も多いかと思います。そこでおすすめなのが、ワーケーションを積極的に受け入れている自治体から、宿泊費や移動費などの補助を受けることです。
ワーケーション促進に活用したい自治体の補助金・助成金
政府は、「新たな旅に対する補助金事業」にワーケーション推進にかかわる予算とし5億400万円を含めることを決定しました。補助金の対象に含まれる費用は、宿泊費、移動費、ワークスペースの費用などです。補助金額は地方自治体により異なりますが、宿泊費は1泊5,000円、移動費は10,000円前後が相場です。また、サテライトオフィスを設置したり、借りたりする場合は、引っ越し代やオフィス賃料として100万円以上補助されるケースもあります。自治体ごとに限度額や補助金の条件を紹介します。
補助金の期限は自治体ごとに異なります。掲載は2021年6月15日現在の情報です。詳細は各自治体のHP等をご確認ください。
費用負担を軽減!補助金・助成金を実施する自治体と要件
北海道富良野市
市内の宿泊施設でワーケーションを実施した市外企業を対象に、宿泊費やワークプレイス利用料の一部助成を実施しています。富良野市は自然が豊かな地域で、従業員のストレス解消もしやすいので、業務生産性の向上も期待できます。具体的な条件については富良野市のホームページをご確認ください。
助成限度額
対象経費 | 限度額 | 助成割合 | 単位 | 備考 |
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宿泊費 | 10,000円 | 1/2以内 | 1泊/1人 | 7連泊まで |
ワークプレイス利用料 | 3,000円 | 1/2以内 | 1日/1人 | 5日分まで助成 |
栃木県
地方へのサテライトオフィス設置を検討している企業が、お試し勤務を行う際に必要なオフィスの利用料や引っ越し代、事務機器のレンタル費用の一部を補助しています。条件を満たしていれば、栃木県内に事業所がある企業も対象に含まれます。詳しい要件については、栃木県のホームページをご確認ください。
助成限度額
対象経費 | 限度額 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|
利用する物件の賃借料や利用料 | 1月あたり最大20万円 | 1か月~最大3か月
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石川県と能登地域の9市町村(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町、七尾市、羽咋市、志賀町、宝達志水町、中能登町)
石川県外の企業へ補助を行っており、能登地域へのお試しツアーやお試しテレワークを実施した場合、以下の費用が補助されます。石川県の補助金は補助対象の範囲が広く、全10件の物件をお試しできます。なお、予算が上限に達すると終了してしまいます。詳しい条件については、石川県のホームページをご確認ください。
助成限度額
対象経費 | 限度額 | 全体の上限額 |
---|---|---|
交通費 | 実費相当額 | 1人5,000円、1企業15万円 |
宿泊費 | 1泊あたり8,000円 | |
施設利用費 | 実費相当額 | |
移動費 | 1日あたり5,000円 |
まとめ
新しい働き方・休み方として注目されるワーケーション。勤怠管理や労災補償の問題などクリアしなければならないポイントはありますが、従業員が安心して利用できるような制度を取り入れることで、ワーケーション導入へのハードルが下がり、従業員の満足度もあがるはずです。また、補助金を用意している自治体を利用することで、従業員の負担も減り、ワーケーションに対する社内の理解を得やすくなります。
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