新型コロナウイルスの流行により、急速にテレワークが普及しました。その結果、社員間コミュニケーションに課題を感じている企業も少なくありません。また、一年以上におよぶ外出自粛に疲れを感じている社員も多いでしょう。ワクチン接種が進み、緊急事態宣言も全面解除されたため、都道府県をまたぐ移動も増えてくると予想されます。このような状況から、個人旅行のニーズが高まりを見せています。今後は社員のリフレッシュや失われたコミュニケーション機会を取り戻すため、対面での社員旅行実施を考える企業も増えていくと思われます。本記事では、Withコロナ、アフターコロナにおけるリアル社員旅行の企画・実施について注意点をまとめました。社員旅行を企画される際の参考にしていただければと思います。
国内旅行への期待の高まり
2021年10月現在、2回目の新型コロナワクチン接種率は6割を超えました(※1)。また、9月末日で緊急事態宣言は全面解除されました。この流れを受け、現在、旅行へのニーズが高まりを見せています。
1 出典:新型コロナワクチンの接種状況| 政府CIOポータル
旅行ニーズが高まる背景
NTTコム リサーチが行った調査によると、20代の若者はもちろんのこと、全世代において、コロナ禍で出かけられないストレスや長期のテレワークによるオンライン疲れを感じていることがわかりました。
また、第一生命経済研究所の調査(※2)によると、緊急事態宣言下において、実に8割を超える人が「必要のない限りなるべく外出しないことを心がけながら生活していた」ということもわかっています。特に20代の若者に不必要な外出を避ける傾向が強く見られ、今後はその反動が来ることが考えられます。実際に同調査でも、「新型コロナウイルスの感染拡大が収束したら外出の機会を増やしたい」と回答した人は20代男性で71%、20代女性で84%に上っています。
加えて、特に年齢が若くなるほど「仮に収束しなくても旅行の機会を増やしたい」と考える人の割合が多いこともわかりました。環境省の資料(※3)によると、国内旅行再開のタイミングとして、多くの人が「治療薬やワクチンの普及」そして「政府や行政による外出自粛の解除」を挙げています。両方の条件がそろった今、旅行への熱は高まりを見せてくると思われます。
2 出典:コロナ禍の中での外出・旅行意識 ~出かけたいがまだ我慢~ (第11回 ライフデザインに関する調査)
3 出典:新型コロナウイルスにより生じた 旅行・観光に対するニーズや志向変化
興味のある旅行先
前述の環境省の調査によると、旅行目的の上位には、「日常からの脱却」「美味しいものを食べること」「思い出づくり」が挙げられています。しかし、感染への不安が払しょくできているわけではありません。そのため、多くの人は宿泊先に対して、マスク着用や密を避けるなどの「感染予防策」を希望しています。
行き先としては、リフレッシュできる、三密を避けられる、人が少ない地域や自然が多い地域が人気です。特に注目なのが自然を満喫できるアウトドア施設です。昨今のアウトドアブームの影響で、全国各地にアウトドア施設、グランピング施設が増えています。首都圏からさほど時間のかからないエリアで、密を避けたアウトドア研修やワーケーションが行えるのも魅力です。
今後しばらくは、旅行客と受け入れ先が共に感染を避けつつ旅行を楽しむスタイルを模索する時期になると思われます。
Withコロナ、アフターコロナの社員旅行で気をつけること
アフターコロナの社員旅行では「ガイドラインに沿った感染対策」は欠かせません。この時期に社員旅行の幹事を引き受けることになった場合に、特に気をつけたい点についてご紹介します。
準備段階では、旅行スケジュールや宿の手配に加え、感染防止のガイドラインに沿った対策を行うことが重要です。アフターコロナに適応した旅のカタチを模索し、安心安全な社員旅行の実現に向けてチェック事項を確認しましょう。社員旅行の目的と考えられるリスクを踏まえたうえで、旅行の開催形態を検討することが大切です。例えば、部署ごとに人数を分けてリアル旅行を実施し、各地の会場をオンラインでつなぎ交流するなどです。また現地集合・現地解散にすることで移動時の密を避けるといった方法もあります。
宿泊先や観光、食事での立ち寄り先、移動時など「なるべく密を避ける」「長時間にならない配慮」を心がけることが感染対策につながります。また、先ほどご紹介したグランピング施設など密になりにくい旅行先を選択するのもおすすめです。
社員旅行の幹事が気をつけるべきポイント
感染症対策を考えながらの社員旅行と言っても、そこまで複雑なことではありません。大切なことは、気をつけるべきポイントをしっかり押さえ、感染対策に手を抜かないことです。ここからは社員旅行にあたり、旅行前・旅行中・旅行後の「気をつけるべきポイント」をご紹介します。
01旅行前
- 旅行の目的を決めた後、社内アンケートを取ることで、社員が今の時期に旅行することに関して、どう捉えているのかを把握する。
- 宿泊先や立ち寄り先の選定にあたっては、「感染症対策を行っているか」「三密を避けることができるか」「営業時間や営業スタイルの変更はないか」を確認する。
- 三密を避けるために、入場時の制限や感染防止対策が生じるため、スケジュールには余裕を持たせる。
- 万が一、滞在先で参加者が発熱した場合に備え、担当保健所や受け入れ病院などの連絡先を確認しておく。
02旅行中
- 旅のしおりに、参加者の体調記録欄を設けておく。参加者には出発1週間前から体調記録を取るように依頼する。当日朝も集合前に各自検温し、37.5度以上であれば不参加といったルールを徹底する。
- 朝・昼・夜など、定期的に体温チェックできるよう非接触型の体温計を準備。また、マスクや手洗い、大声を控えるなどの感染対策の徹底を呼びかける。消毒液やアルコール除菌などもあらかじめ準備しておく。
- 旅行後に感染が判明した場合に備え、滞在場所や滞在時間を記録しておく。
- 幹事も大声を控えるため、書面やメールなどでの指示を心がける。万が一、途中で体調不良者が出た場合は、保健所や医療機関へ相談する。
03旅行後
- 旅行後も参加者には約2週間の体調チェックを依頼。体調不良になった場合やPCR検査で陽性になった場合は、速やかに連絡をもらうよう要請する。
事例紹介 ~これからの社員旅行のカタチ~
ここで、開放的なアウトドア環境で交流を深めた事例とマイクロツーリズムで社員旅行を実施した事例をご紹介します。
事例01アウトドアで三密回避!研修やオフサイトミーティングができる「CAMPING OFFICE」
「CAMPING OFFICE」とは、アウトドア総合メーカー「スノーピーク」において各種研修を手がける「スノーピークビジネスソリューションズ」のプログラム。全国の経営者有志で構成された経営者団体様が年に1度行う野外研修で、このCAMPING OFFICEを実施しました。会場となるテント設営から、プログラムが始まります。ビジネス講座で情報交換をしたあとは、バーベキューや焚き火を囲んだ懇親会など、参加者同士の活発なコミュニケーションが生まれるプログラムを実施しました。非日常空間でのミーティングや焚き火を見ながらの交流では、会議やオンラインで行うミーティングとは異なり、普段はあまり語ることのない自らの「思考」や「思い」まで語り合うことができたとのことです。
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事例02マイクロツーリズムで安心安全な職場旅行を実現
「マイクロツーリズム」とは、1~2時間程度の旅先を訪れる短距離旅行のこと。コロナ禍を経て、3密を避けながら近場を訪れる旅行スタイルとして浸透しつつあります。JTB 福岡支店では、お客様への提案の準備として、2020年 夏の職場旅行としてマイクロツーリズムを実施。日程が異なる3つのコースを用意し、社員を複数の班に分け、それぞれのコースに約15名ずつ参加することで多人数による密を避けました。また、移動中の飲酒や、宴会中のお酌を控え、フェイスシールドなどを利用し感染対策を徹底。結果として各班の参加人数を絞ったことで、より深いコミュニケーションを取ることができました。
■関連記事:WEBマガジン「#Think Trunk」
まとめ
ワクチン接種が進み、緊急事態宣言が解除された今、外出や旅行へのニーズが徐々に高まりつつあります。企業においても、コロナ禍での社員のストレス解消やコミュニケーション改善などを目的としたリアル社員旅行の実施が検討され始めています。
コロナ禍での社員旅行は、感染リスクへの配慮から十分に目的を達成できないのではないかとの声も聞かれます。しかし、アウトドアで行ったり、現地集合・現地解散にするなど、さまざまな工夫をすることで社員旅行の本来の目的を十分に達成できます。
コロナ禍は、テレワークの促進といういい面もありましたが、企業と社員の距離を広げてしまったという側面もあります。今後を見据えて、失われた会社の一体感や社員間コミュニケーションをリアル社員旅行で復活させてみてはいかがでしょうか。