2015年の国連サミットで採択された、「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」であるSDGs。今や世界的に、企業にとっても必須の取り組みとなりつつあります。とはいえ、まだまだ社内の理解浸透が進まないという声もあるはず。そこで今回は、SDGsを取り巻く事情に詳しい桑島浩彰氏を講師に迎えて開催したセミナーの様子を、ダイジェストでお届けします。
開催概要
- 開催日
- 2022年3月10日(木) 11:00~12:00
- 開催方式
- オンライン
- プログラム
-
- 主催者挨拶
- アメリカのSDGsの取り組み紹介
- サンフランシスコの事例
- ニューヨークの事例
- 講演/Q&A
- 本日のスーパーマーケット@シリコンバレー
- 米国で今起こっていること
- グローバル大企業のSDGs事例
- 立ち上がる起業家たち
- 米国におけるSDGsのトレンド(まとめ、Q&A)
- SDGsの取り組みに向けて~JTBのソリューションご紹介~
講演者紹介
東京財団政策研究所 主席研究員
株式会社K&アソシエイツ 代表取締役
東京財団政策研究所 主席研究員
株式会社K&アソシエイツ 代表取締役
東京⼤学経済学部卒、ハーバード大学経営大学院およびケネディ行政大学院共同学位プログラム修了(MBA/MPA)。三菱商事株式会社、株式会社ドリームインキュベータ、ベンチャー経営2社を経て現職。カリフォルニア⼤学バークレー校ハース経営大学院ハース・エグゼクティブ・フェロー及び東京財団政策研究所主席研究員。 東洋経済オンライン(日本にはロビイングが足りない!)、日経テクノロジーオンライン(桑島浩彰の日本再発進)、日経経済教室など記事寄稿多数。神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程にて破壊的イノベーション下における企業変革およびサステイナビリティ経営について研究中。著書に講談社現代新書「日本車は生き残れるか」(共著、2021年5月)、ダイヤモンド社「ESG財務戦略-SDG時代を勝ち抜く」(共著、2022年4月発刊)がある。米シリコンバレー在住。
2001年よりJalpak International Oceania、ニュージーランド・クライストチャーチ支店に勤務。2008年 STWorldのJalpak New Zealand売却によりSTWorldに転籍。2011年 America Travel Factory LLC へ転籍(STWorld USA とJTB USAの合弁会社) ロサンゼルスへ移住。General Manager として、経営に携わる。2019年 JTB USA Incへ転職。サンフランシスコ支店長として、現在に至る。
アメリカのSDGsの取り組みを紹介
最初に、SDGsへの理解が進んでいるアメリカの取り組みを紹介する形で、JTBのサンフランシスコ支店とニューヨーク支店の社員が現地で撮影したビデオが上映されました。その事例の一部をご紹介します。
事例01サンフランシスコ空港
サンフランシスコ空港では、プラスチックの完全撤廃の取り組みが行われています。例えば、2年前から空港内ではジュースの自動販売機が撤去されました。また、コンビニでもプラスチック容器に入った飲み物の販売がなくなり、代わりにリサイクルができるビンやカンで販売されています。そして、空港内には水を補給できる給水機を随所に設置。レストランでも、リサイクルできる容器が使われています。
事例02Rentbrella
ニューヨークには、「街から捨てる傘をなくし地球を守る」をミッションとして掲げている「Rentbrella」という傘のシェアリングサービスがあります。利用方法は簡単で、専用アプリをダウンロードしてクレジットカード情報を登録したら、最寄りの傘の収納ボックスを検索して傘をレンタル。借りた後は、また近くのボックスに返却するだけです。「Rentbrella」側は、利用料や収納ボックス、傘への出稿による広告収入でマネタイズ。出稿する企業側は認知度の向上に加え、サステナブルなサービスを利用することによるブランドイメージの向上をはかれます。
本日のスーパーマーケット@シリコンバレー
桑島氏による講演本編では、まずシリコンバレーのスーパーマーケットに最近並んでいる、サステナブルな食品が紹介されました。
例えば、アメリカでは「カーボンニュートラルミルク」が発売されています。一般的にミルクの生産には二酸化炭素が排出されますが、世界的にミルクに限らず食品産業全体でこの二酸化炭素の排出量の多さが問題に。「カーボンニュートラルミルク」は、そうした問題を解消するミルクとして売り出されているそうです。
また、最近では植物肉が普及してきていて、プラントベースのソーセージやチキン、ミートスパなども売られています。プラントベースにすると、家畜の飼育に比べて育成時の水の使用料や二酸化炭素の排出量を大幅に減らせるのだとか。
米国で今起こっていること
次に、アメリカ社会の問題や特徴について話がありました。アメリカの企業は成果主義で従業員を解雇しやすい状況もあり、社会格差が広がっていることが問題になっているそうです。また、世代間格差も広がっており、ミレニアル世代やZ世代はお金を稼ぐことよりも社会貢献に目を向けていて、それ以前の世代とは自己実現や社会に対する認識が異なってきているそう。
また、社会全体で株主第一の資本主義から、顧客や従業員、サプライヤー、マイノリティ、女性なども重視する、ダイバーシティへと意識の変容も起きています。
企業では、経営層の指示でSDGsに特化した部署を作る動きもあるようですが、現場は売上達成と社会貢献の両立に悩む現状もあるそうです。
グローバル大企業のSDGs事例
では、企業によるSDGsの実際の取り組みとしては、どんな事例があるのでしょうか。本記事では、セミナーで紹介された事例のうち一部をご紹介します。
事例01P&G
途上国では生理がタブー視されていることから、正しい情報が得にくいため、女の子は衛生的にも健康的にも十分なケアができない現状があります。そこで、一般消費財メーカーのP&Gは、途上国での生理用品の無料配布や情報発信を実施。女の子や女性が、自信と自由を獲得するための支援を行うことで、ブランディングにもつなげています。
事例02MOLSON COORS
MOLSON COORSは、イリノイ州に本社がある醸造業の会社です。ですが最近、ビバレッジカンパニーと称して、アルコール飲料の会社というイメージからの脱却をはかっています。現代は若者のアルコール離れが進んでおり、社会的にも健康志向が高まっているためだそう。
桑島氏は、こうした企業はSDGsの流れや消費者の変容を、ある意味「変革のチャンス」と捉えている点が共通する特徴だと話していました。
立ち上がる起業家たち
続いて、スタートアップ企業のSDGsの取り組み事例をいくつかご紹介します。
事例01テスラ
日本では、テスラは電気自動車のメーカーという印象が強いですが、それはあくまで第一段階で、最終的には石油や化石燃料に依存した社会からの脱却を目指しています。そのビジョンが、特にカリフォルニアの市民を中心に大きな共感を得ているそうです。テスラの車に乗れば環境に貢献できる、というモデルを確立した成功事例と言えます。
事例02パタゴニア
パタゴニアは、登山用品やアウトドア用品、衣料品などを手がけるアメリカのメーカーです。同社は最近食品も手がけるようになり、ビールやワイン、スナックやシーフードなども取り扱っています。「地球を救うためにビジネスを営む」というビジョンの延長で、創業者が農業に着目。再生型有機農業を通して、気候変動や土壌劣化の問題に取り組んでいるそうです。
まとめ
最後に、桑島氏からセミナーのまとめとして次のようなお話がありました。
SDGsには社会格差や気候変動、ダイバーシティ、途上国の問題など、持続可能な世界を実現するための17のゴールがあります。そのゴールに向けた取り組みの価値を、いかに顧客に伝えていくかが企業の課題であり、工夫のしどころ。ご紹介した事例を、ぜひ参考にしてほしいとのことでした。
セミナーでは、本記事で紹介した事例のほかにも、さまざまな事例が紹介されました。また、講演中はQ&Aの時間も随所にあり、参加者からはさまざまな質問がありました。セミナー内容を詳しく知りたい方は、ぜひ以下よりご覧ください。