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企業・団体向け WEBマガジン「#Think Trunk」 JALが農業労働力不足に対し、企業の地域貢献活動の一環として人材を提供。社員が実体験から得たものは?

2023.03.28
HR(Human Resources)
従業員満足(ES)向上
サステナブル
人材・組織力強化

日本航空株式会社様(以下、JAL様)が「農業労働力支援事業」を活用し、2022年6月15日から15日間、JAL現役客室乗務員をはじめとする社員の方々が山形県で実際にさくらんぼの収穫や選別、箱詰め作業をする「山形さくらんぼ収穫農業支援」を行いました。「農業労働力支援事業」とは2021年4月からJA全農様とJTBが行っている取り組みで、労働力不足が課題となっている農業現場での作業支援を起点とし、新たな雇用創出による地域活性化や地方創生に向けた施策を展開しています。本記事では、JAL東北支社 事業部長 髙橋秀次氏に活用に至った経緯、実際に取り組んでみての感想やその効果、今後の支援展開などについてお話を伺いました。

取材に応じてくださった方

日本航空株式会社 東北支社 事業部長髙橋 秀次 氏

実施概要

山形さくらんぼ収穫農業支援

日程
2022年6月15日(水)~30日(木)
場所
山形県天童市、東根市、南陽市、高畠町
参加人数
「JALふるさと応援隊」をはじめとするJAL社員(各日5名)含めJTB農作業サポーター延べ約1000人
内容
さくらんぼの収穫、選別、箱詰め作業など

労働力不足が深刻なさくらんぼ生産者を支援し、地域社会の課題解決へ

Q.どのような経緯で「山形さくらんぼ収穫農業支援」の実施に至ったのか教えてください。

髙橋氏

当社は2016年から山形県のさくらんぼの出荷最盛期に合わせて、山形と東京(羽田)間、山形と大阪(伊丹)間とでさくらんぼの航空輸送を行っています。出荷等の調整を担うJA全農山形様とさくらんぼの航空輸送のやり取りをしていくなかで、さくらんぼ生産者の労働力不足が深刻な問題になっていることを知りました。そして「農業労働力支援事業」のことも知りました。

以前から当社は地域貢献活動の一環として「JALふるさとプロジェクト」を実施しており、持続的な活動にしていくために、地域社会の課題解決に資する具体的なアクションを継続的に行っていきたいと考えていました。JA全農山形様とJTB様のご担当者にお会いし、さらに詳しく「農業労働力支援事業」のお話を聞くことで、事業スキームや目的、未来像に共感しました。

また、当時はコロナ禍で飛行機の減便が続くなか、多くのJAL社員が自治体や行政などに出向し、人材活用を推進していたこともあり、当社の人材を本業である航空事業以外で活用できる場所があれば、積極的に派遣していこうという気運が高まっている時期でもありました。こういった経緯からJA全農様やJTB様と連携協定を締結し「農業労働力支援事業」に参画することを決め、この事業を活用した「山形さくらんぼの収穫農業支援」を実施することにしました。

JALが大切に想う「現地、現物、現人」を活かせる取り組み

Q.具体的にはどういったところに共感されたのでしょうか?

髙橋氏

農業労働力をシェアするというようなプラットフォームを、JTB様が「JTBアグリワーケーション🄬」(※)として既に作り上げており、地域課題をサステナブルに解決する良い仕組みであることに深く共感しました。そして、目的やゴールである地域活性化の実現にもつながるという未来図に対しても共感を持ちました。労働力をシェアするというところでは、今回の「山形さくらんぼの収穫農業支援」も同じだと感じています。

また、当社の「JALふるさとプロジェクト」は社員がその土地について深く知るということも目的のひとつであり、「現地、現物、現人(現場に足を運び、実際に見て、当事者に会う)」主義を大切にしています。JAL路線は現在55の空港とつながっており、山形空港はJALのみのシングルトラックの空港ではあるものの、社員全員が山形空港を訪れているわけではなく、東北にゆかりがある者でも今回初めて山形に訪れたといった社員がいました。ですので、この「山形さくらんぼ収穫農業支援」は、参加した社員にとって、その土地のことを深く知り、地域の独自性や課題を探究する貴重な機会になるのではという思いもありました。

JTBアグリワーケーション🄬とはワーケーションと農業を組み合わせ、地域の農業人手不足と企業の新たな働き方をマッチングし、地域における関係人口の拡大に貢献する仕組みです

Q.今回、参加された方たちはどのようなメンバー構成だったのでしょうか?

髙橋氏

当社からは現役客室乗務員で構成される「JALふるさと応援隊」の山形県担当メンバーをはじめ、本社の貨物郵便本部に所属するJAL社員が参加しました。

「JALふるさと応援隊」は社内公募により選ばれた全国47都道府県で各約20名、合計約1000名の現役客室乗務員が活動しています。さくらんぼの収穫農業支援期間であった2022年6月の段階では、飛行機の運航状況が以前と比べてまだ戻っていない状況でしたので、在宅ワーク等を行って待機していた東京からのメンバーもアサインし、ヒューマンリソースを提供。JAL社員は各日5名、「JALふるさと応援隊」の山形県担当メンバーを中心に他の東北エリアの社員たちも含め、16日間できる限り多くの社員が体験できるように調整しました。

一つ一つ手で収穫するさくらんぼの農作業から得られる大きな学び

Q.実際に取り組んでみての感想はいかがですか?

髙橋氏

今回は地域貢献をしたいという思いが強い「JALふるさと応援隊」のメンバーと貨物輸送本部本社の担当者たちが多く、参加する前から意欲は高かったです。しかし、さくらんぼ農家の生産者に教わりながら作業してみると、その大変さを実感しました。さくらんぼは果物の中でも傷みやすく繊細なため、一つ一つ手で収穫し、丁寧に扱わないと商品としては流通できなくなります。大きさや色、成熟度の違い別にさくらんぼを選別する選果作業や、箱詰め作業なども行いましたが、全ての工程において相当な根気が必要となるんですね。また、貨物輸送業務の担当者は、普段、扱っている商品をkgやt(トン)といった大きな単位で考えてしまいがちなのですが、今回さくらんぼの小さな果実を実際に見て、自身の手で収穫したことによって、さくらんぼ輸送の役割や自分たちが担っている意義についても気付くことができ、業務意欲の向上につながりました。15日間のうち私も6日間同行し、いろいろな社員と一緒になって農作業をしましたが、終了後はみんなとてもリフレッシュした表情をしていました。

Q.生産者と社員の方々の交流で何か得たことなどはありましたか?

髙橋氏

このような機会がなければ、生産者である地域の方々と7時間近く交流することってなかなかないと思うんですね。「助かったよ」「また、来てね」などと生産者に声をかけられ、すごく頼りにされると、社員たちの自己肯定感が高まって、仕事に対しても良い影響をもたらしているようです。山形という地域についても深く理解できますし、「現地、現物、現人」が企業にとっていかに大切か実感することができました。

また、農作業を実際にしてみることで、地域国産品・名産品を支えている生産者に対する社員たちのリスペクトがより一層高まったと感じます。首都圏や関西圏をはじめ、全国の消費者の口に運ばれる山形のさくらんぼ。その流通過程と言いますか、生産過程に触れられたというのも、社員にとっては大きな経験となりました。

持続可能な取り組みとするために、新たな社内副業制度の導入へ

Q.今後の「農業労働力支援事業」の展望についてお聞かせください。

髙橋氏

6月の「山形さくらんぼ収穫農業支援」に続き、2022年10月17日~12月24日には「山形ラ・フランス選果農業支援」も行いました。期間は約2ヵ月以上で、1日30名の労働力を派遣するというかなり大規模な事業となりました。前回の「JALふるさと応援隊」のメンバーは業務アサイン(任命)でしたが、今回は約6000名が閲覧できる社内プラットフォームで募集をかけました。さらに社内副業制度を新しく付加し、有給や休日などを使って農業労働力支援を行う社員個人がきちんと収入を得られるようにしました。支援を通して社会課題を解決することは社員にとって知見が広がるとともに、人的ネットワークも広がっていきます。こういった制度を設けることで継続的に取り組んでいきたいと考えています。また、農業労働力支援は例えば社員研修の一環としても活用できそうですし、この労働力をもっとシェアしていき、新しいチャネルも開拓していきたいですね。そして、JA全農様とJTB様の「農業労働力支援事業」の取り組みに、他の企業様も誘いながら仲間の輪をどんどん広げていければと思っています。


まとめ

今回はJAL様による「農業労働力支援事業」を活用した活動をご紹介しました。「山形さくらんぼ収穫農業支援」に続いて、いち早く「山形ラ・フランス選果農業支援」も実施するなど、積極的にこの活動を行うJAL様の地域に貢献したいという強い想いが伝わる事例となりました。また取り組みの継続のために、新しく社内副業制度を設けたというお話も印象深かったです。この記事が、皆様の企業における地域貢献活動の参考になれば幸いです。

本記事に関するお問い合わせ、ご相談、ご不明点などお気軽にお問い合わせください。

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