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企業・団体向け WEBマガジン「#Think Trunk」 EVP向上の視点から考えるオフィスの在り方。従業員が「働きたい」と思えるワークプレイスを構築するには

2023.04.12
HR(Human Resources)
従業員満足(ES)向上
生産性向上

社会が変化し、働き方の価値観が広がる中で、オフィスの在り方も多様化しています。最近では、企業の成長には、「EVP(Employee Value Proposition)=従業員への価値提供」や健康経営、従業員のエンゲージメント向上を図ることが欠かせない要素となっており、働きやすさも重要視されるようになってきました。従業員が「働きたい」と思うワークプレイスを構築するためにはどうすればいいのか。今回は、JTBグループのオフィス移転や企画設計・工事などを一手に担い、あらゆるケースに対応してきた株式会社JTBアセットマネジメントの取り組み事例を交えながら、EVP向上の視点でオフィス改革を進めるポイントをご紹介していきます。

これからの企業経営に求められるEVP

EVPとは、「Employee Value Proposition(従業員への価値提供)」の頭文字をとった言葉で、企業が従業員に提供できる価値のことです。EVPを高めることが企業イメージや従業員のエンゲージメントの向上につながり、採用の強化や離職率改善などが期待できるため、これからの企業経営には、自社のEVPを把握し、価値を高めていくことが求められています。

EVPを高める手段

  • 職場環境
  • 報酬/評価制度
  • 福利厚生などの諸制度
  • 勤務体制
  • キャリア形成支援
  • 資格補助
  • ワークライフバランス
  • 社内風土/文化 など

背景にあるのは「社会の変化」と「働き方の広がり」

EVPが注目されている背景には大きく2つの理由があります。1つは、少子高齢化による人材不足といった「社会の変化」。もう1つは、転職が一般的となり終身雇用が前提ではなくなった「働き方の価値観の広がり」です。そのため、多くの企業が「人材の強化(採用・育成・多様化への対応)」を経営の重要課題として認識し、課題改善の施策としてEVP経営に取り組んでいます。

EVPが求められている背景

社会の変化

  • 少子化による人材不足
  • 長寿命化による人生100年時代
  • 働き方改革の法制度化
  • テレワークの急速な普及
  • 共働き世帯の増加 など

働き方の価値観の広がり

  • 終身雇用の終焉
  • 転職が一般的になり雇用が流動化
  • ワークライフバランス
  • 高齢者、女性の活躍
  • 価値観にあった仕事を選ぶ など

さまざまな企業で行われているオフィス改革

コロナ禍以前は、オフィスに出社し、顔を揃えて働くのが当たり前でしたが、最近ではリモートワークが浸透し、出社して働くことがマストではなくなりました。そのため、都内にあるオフィスの規模を縮小したり、本社機能ごと地方に移転したりする企業が増えています。また、複数あった拠点を統合し、他社と連携したサテライトオフィスを設置するなど、新しいオフィスのかたちが生まれています。先進的なオフィスの事例に共通しているのは、「働き方にあわせた働きやすいオフィス」であるということ。EVP向上のためには、ハード面の整備も効果的です。

オフィス構築の前段階で大切なこと

ここからは、2020年に本社移転を行った株式会社JTBアセットマネジメントの取り組み事例を交えて、EVP向上を目的としたワークプレイスの構築についてご紹介していきます。JTBグループやその他様々な企業様のオフィス移転や企画設定・工事を担い、あらゆるケースに対応してきた株式会社JTBアセットマネジメント。2020年には自社の本社移転を行いました。EVP向上を果たしたオフィス改善の事例です。

JTBアセットマネジメントでは、移転の話が出る以前から、お客様への提案・サービス向上の意味合いも兼ねて、働き方を見直すためのプロジェクトを発足。従業員の自律性と業務効率を求めた働き方改革を推進していました。働きやすさを従業員同士で考えた結果たどり着いたのが、場所に縛られずに働けるフレキシブルなオフィスです。本社移転の話をきっかけに、これまで進めてきたすべてのことをつなぎ合わせて、従業員と企業、双方の理想に近いワークプレイスの構築をスタートしました。オフィス改革の前段階で大切なのは、以下の2つです。

POINT01コミュニケーション設計

社内でのコミュニケーションのパターンを整理して、オフィスでの働き方を検討しておくと、どのようなワークプレイスを構築していけば良いのかが見えてきます。対面なのかリモートで対応できるのかの切り分けや、一対一かグループか、全体で行わなければいけないのかなど、細かくコミュニケーションの考え方を整理しておくことが重要です。

POINT02目的や目指す効果を従業員に発信

ワークプレイスは企業での働き方を表すものです。「企業が従業員に求める働き方とは?」「オフィスとは何のためにあるのか?」を考え、目的や目指すべき効果を明確にすることが必要です。方針が決まったら、従業員への事前説明会などを実施し、目的の共有と意識の変化を促すことで効果が上がります。

EVP向上を目的としたワークプレイスの構築

来客にも対応する打ち合わせスペースは開放的な空間に

実際のオフィスデザインとともに、今回の変更の意図についてご紹介します。

まずは打ち合わせエリアを集約し、オープンスペースとしての場所を広く取ることで、社内のコミュニケーションはもちろん、外部の方とのコミュニケーションも取りやすい環境を作りました。執務エリアはフリーアドレス化し、合わせて働くシーンに合わせて、自由に働く場所を選ぶことができるよう、複数のエリアが用意されています。部署に関係なく、その日の業務内容に合わせた場所に座れるため、部署の垣根を越えた交流も生まれました。

従業員のクローゼットスペースをオープンにしたことで、収容できる容量がアップ

また、書類が多くオフィスの中が煩雑になっている状況を改善したいという従業員の要望を受け、全従業員に書類削減の目的、方法と削減後の運用方法についてのセミナーを実施し、啓蒙活動とデジタル化の取り組みを推進。書類の一部をデータ化、および外部倉庫に保管することで従業員一人あたりの占有面積の縮小に成功しました。書類削減とフリーアドレスの実現にあたっては、オフィスの方向性が決まり、勤怠管理や個人収納物のルール化、書類のデジタル化など、移転後の運用を想定しながら制度設計を行いました。

「このオフィスで働きたい」と思わせるデザイン

ミーティングもできる待合いスペースはホテルのロビーのよう

「このオフィスで働きたい」と思ってもらうためには、デザイン性も重要です。集中して仕事ができる場所で、かつ居心地のいい働きやすい場所をつくっていかなければ、EVPも向上しません。オフィスのデザインは、集中できる環境をつくるため、黒が基調のシックで落ち着いた雰囲気にしました。

移転後、従業員からは出社に対するモチベーションの向上などの好意的な意見が多く寄せられています。強いて言うなら、ウェブミーティングのために定員4人の会議室に1人でこもる機会が多く、ミーティングスペースが足りないという不満がありましたが、現在は簡易個室をつくるなどで試験的に対応しています。

フリーアドレスや収納の削減についても、1割ほどの従業員からは不満の声も聞こえます。今後、出社が増えてきたときに場所を探すのに時間がかかってしまう、過去の書類を倉庫から取り出さなければいけない大変さなど要望はさまざまですが、不満を改善せずにEVPが下がってしまう事は本末転倒の為、状況に応じて運用ルールの見直しや環境の改善をしていく予定です。

最初からすべて満足いくことはほぼなく、運営してから見えてくることも多くあります。ただ、何度も修繕工事をするわけにもいかない為、ミーティングスペースを壁で仕切らずにオープンな空間にしておくなど、改善しやすいフレキシブルなオープンオフィスを意識しておくことも必要です。

他にも、これまでJTBアセットマネジメントが手掛けたある企業では、フロアが4フロアに分かれていてフロア間の交流がほぼなかったため、移転後は2フロアに分け、そのうちの1つに相互コミュニケーションの活性化を考えてオフィススペースを集約しました。もう1つのフロアには、接客・会議スペースのほか、従業員が集中して作業に取り組める「こもルーム」、多様なコミュニケーションの形を実現する「ブレストゾーン」、従業員が仮眠できるリフレッシュスペースの「ゴロんとシート」など、コミュニケーションとリラクゼーションを融合したコミュニティスペースを設置。多様な働き方の実現とコミュニケーションを生み出す場となりました。

また、公益財団法人日本交通公社の本社移転では、併設する「旅の図書館」のコンセプトにふさわしい場所と図書館の機能を実現するため、移転候補地の提案段階からプロジェクトに参画し、プロジェクト全体のマネジメントを担当するなど、あらゆるケースに対応しています。

JTBアセットマネジメントが手掛けた公益財団法人日本交通公社本社ビル「旅の図書館」

入居ビル自体の取り組み評価システム「CASBEEウェルネスオフィス」

オフィスの形態としては、自社ビルと入居ビルに大きく分けられますが、大企業の本社などを除いてテナントとしての入居が多いと思います。入居先を選定する際の選定理由は、主に賃料と区画の形などですが、移転の際には、オフィス構築の取り組みに適した入居先の検討が必要です。

日本における建築物の環境性能評価指標として活用されてきた「CASBEE」は、時代の流れとともに建築物の健康性能(建物利用者の利便性、快適性)についての評価が必要と考え、2020年度より「CASBEEウェルネスオフィス」という評価システムを開発しました。評価はテナントのみならずビル全体の取り組みが対象となり、全部で60の項目でランク付けされます。基本性能だけでなく、運営管理やプログラムなど、ビルオーナーとしてより積極的な取り組みをしていることも評価対象です。

CASBEEの公式HPではCASBEEウェルネスオフィスの評価システムで評価を受け、ランク付けされたビルの一覧を見る事が出来ます。「健康経営」や「従業員のエンゲージメント向上」を目指す企業はこれらの情報を参考に、各社の視点のみならず、多角的・客観的視点も加えていく等し、より効果の高いオフィスをつくる土台の準備が大切です。

CASBEEの公式HPに載っていないビルでも評価ツールを使って健康性能を客観的に判断できます。JTBアセットマネジメントにもCASBEEオフィスウェルネス評価員の資格を持った専門家がおりますので、入居先などの選定についてもご相談ください。

詳細はこちらからご覧ください。


まとめ

「働きたくなるオフィスづくり」は、人材不足が深刻化する中で優秀な人材を獲得するために重要です。また、同僚や取引先とのコミュニケーションを取るための場所としてどのようなかたちにしていくのか、ブランディングも含めて「働きやすさ」を社内外にアピールする必要があります。

これからは、時代の変化に対応するために、PDCAサイクルを回して継続しながら、より良いオフィスのあり方を目指して改善していくことが必要です。人材を「選ぶ」時代から「選ばれる」時代になった今、企業は求められる高いニーズに応えていかなければいけません。この記事がEVP向上に取り組む方々がオフィス改革を進める一助になれば幸いです。


会社紹介 株式会社JTBアセットマネジメント

JTBグループのオフィス移転や空間デザイン企画・設計・工事などの経験を活かし、さまざまな企業のEVP向上のためのオフィス構築を支援。JTBグループ外の企業に対しても、オフィスデザインの構築とあわせてアフターフォローのマネジメントやコンサルティングを展開している他、ご所有資産の有効活用策の1つとして、ワーケーション環境整備に向けた調査や支援も行っている。

詳細はこちらからご覧ください。


ホワイトペーパー(お役立ち資料)エンゲージメント向上への取組み ~事例を動画で紹介!~

ニューノーマル時代、多くの企業において、社内外のコミュニケーションの形は確実に変化しています。そのような中で企業を取り巻く関係者とのエンゲージメント強化のために、新しい取り組みを実施した5つの事例を動画と資料でご紹介します。ぜひ、ご覧いただき、貴社の取組みのヒントになさってください。

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