閉じる ✕
  • サービス・ソリューションから探す
  • 課題・目的から探す
学校・教育機関向け
自治体・行政機関向け
閉じる ✕
  • サービス・ソリューションから探す
  • 課題・目的から探す
自治体・行政機関向け
学校・教育機関向け

企業・団体向け WEBマガジン「#Think Trunk」 カーボンニュートラルに取り組む企業の事例5選|成功パターンから学ぶ実践ガイド

2025.12.25
ミーティング&イベント
会議・イベント運営
サステナブル

「脱炭素経営が必要なのは分かるが、何から手をつければいいのか分からない」「現場に負担ばかりかかり、社員の協力が得られない」。こうした悩みをお持ちの経営者や担当者の方は多いのではないでしょうか。

日々の業務に追われる中で、さらに新しい課題に取り組むのは容易ではありません。しかし、先行して取り組む企業の多くは、これを単なる義務ではなく「コスト削減」や「新たな利益」を生むチャンスに変えています。

本記事では、成功事例から学ぶ実践のヒント、そして無理なく社内を巻き込むための具体的なステップなどを解説します。

目次を表示(編集禁止)

カーボンニュートラルが企業に必須となる3つの理由

まずは、なぜ今、多くの企業がカーボンニュートラル(CN)を経営の最優先事項として掲げているのか、その背景から見ていきましょう。

2050年カーボンニュートラル目標に向けた外部環境による必然性

パリ協定に基づく世界的な脱炭素の流れの中で、日本政府も2050年のカーボンニュートラル実現を宣言しました。企業には自社の直接排出(Scope1・2)だけでなく、サプライチェーン全体(Scope3)での削減が求められており、この動きは加速の一途をたどっています。

特にScope3では、出張に伴う移動やイベント開催なども対象となります。移動・宿泊・照明・演出など、これまで意識していなかった領域での削減も視野に入れることが、企業の社会的責任を果たすことにつながります。急速に進む制度化と市場要請によって、企業は脱炭素対応を後回しにできない状況になっているのです。

投資・採用・ブランド強化につながる「リターン型」のメリット

脱炭素経営は「コスト」ではなく、資本コスト削減・ESG投資獲得・採用力向上といった利益機会へ直結し始めています。特に、データやロードマップを開示する企業は投資家からの信頼を獲得し、Z世代など価値観重視の人材からも選ばれる傾向があります。

企業の姿勢を明確にすることは、優秀な人材の確保やブランド価値の向上というリターンをもたらす効果的な投資といえるでしょう。

法規制・金融・取引先からの「やらざるを得ない圧力」の拡大

気候関連の情報開示はプライム市場で実質義務化されており、企業は気候リスクの財務影響を「戦略・ガバナンス・リスク管理・指標と目標」の観点で説明を求められるようになりました。特に移行リスク・物理リスクのシナリオ分析やScope1~3の開示は、投資家の評価軸として定着し、融資条件にも反映され始めています。

さらに2026年度からは、日本でも「GX-ETS(排出量取引制度)」が本格導入される予定で、GXリーグの枠組みの中で運用が開始されます。排出量に価格がつく時代が到来することで、企業のコスト構造に直接影響する仕組みが始まり、脱炭素対応は「できればやる」から「事業継続の前提」へと位置づけが変わりつつあるのです。

さらにCSRD(EU企業サステナビリティ報告指令)など国際的な開示義務の拡大や、大企業によるサプライチェーン排出量管理の強化により、中小企業も脱炭素対応が取引継続の前提となりつつあります。「対応すれば評価される」から「対応しなければ選ばれない」へと状況が変化しているのが現状です。

カーボンニュートラルを加速させた企業の成功パターン5選

脱炭素経営は、設備投資だけでなく、社員の意識改革やサプライチェーンとの連携など、多面的なアプローチが求められます。ここからは、自社の推進に応用しやすい5つの事例をご紹介します。

01 機器メーカーA 社サプライチェーン全体で削減を進める分科会モデル

機器メーカーA社では、自社だけでなく仕入先を巻き込む「カーボンニュートラル分科会」を設置し、Scope1~3の排出量を算定。特に影響の大きいカテゴリ1(調達品)のホットスポットを可視化し、削減策を共同で検討する体制を整えました。これにより、供給網全体での排出構造を把握しやすくなり、段階的な削減につながっています。

さらに、環境情報開示の要求が高まる中、A社の取り組みは取引先からの信頼性向上にも寄与。協働型で進めることで、Scope3という多くの企業が直面する課題に実効的に対応できるモデルとなっています。

経済産業省

02 ITソリューションB 社再エネ100%とICPでカーボンニュートラル達成

ITソリューションB社は、エネルギー効率化と再エネ導入を同時に進めることで、事業活動におけるカーボンニュートラルを達成しました。社内の投資判断に炭素コストを組み込む内部炭素価格を導入し、脱炭素を経営判断の基準として定着させた点が特徴です。

これらの施策は、排出量を減らすだけでなく、設備投資の妥当性を高め、事業運営の透明性向上にも貢献。組織全体で納得感のある形で進められるモデルとして、脱炭素経営を本格化させたい企業の参考になります。

経済産業省

03 化学メーカーC 社Scope1~3可視化と省エネ改善で信頼向上

化学メーカーC社では、Scope1~3算定により事業全体のホットスポットを明確化し、データ整備と開示体制を強化しています。可視化を起点に社内理解を進めつつ、空調設備更新、照明LED化、クリーンルームのインバーター化など省エネ施策に着手し、電力使用量を2003年比で約30%削減しました。

今後は、太陽光発電設備の導入や再エネ電力プランへの切り替えも有力施策として検討中です。透明性の高い開示と実績ある省エネ改善が評価され、外部調査や取引先からの信頼向上にもつながっています。

経済産業省

04 フエニックス・コンタクト日本法人 様【JTB事例】周年 × 脱炭素推進

フエニックス・コンタクト日本法人様は、創業100周年を機に「サステナビリティ」を軸とした全社プロジェクトをJTBと共創しました。SDGs研修や全国4拠点でのSDGsツアーにより、社員が循環型農業や資源循環を体験的に学ぶ機会を提供。さらに、日常行動をCO₂削減量として可視化する脱炭素アプリを開発し、社員の88%が利用する高い参加率を実現しました。

学び・体験・行動の3段階で構成した施策により、短期間でCO₂削減の実績と社内の意識変容が生まれ、「周年を会社変革の起点にする」成功パターンとなりました。

05 株式会社秋田スズキ 様【JTB事例】CO₂ゼロ旅行®の導入

株式会社秋田スズキ様は、毎年実施している優績販売店向けの招待旅行に「CO₂ゼロ旅行®」を導入し、移動・宿泊・バス移動などで発生する13tのCO₂をJ-クレジットでカーボン・オフセットしました。公的な「無効化通知書」が発行され、社内外への報告資料やウェブサイトで自社の取り組みを明確に示せるようになった点が高く評価されています。

JTBは旅行計画だけでなく、企業理念や事業方針をふまえた脱炭素施策の選定まで伴走。環境配慮型のイベント運営を「実績として残せる」形にすることで、企業価値向上とステークホルダーからの信頼獲得につながりました。

カーボンニュートラル実現の6つのステップ

経済産業省やBCG(Boston Consulting Group)の知見に基づき、企業がカーボンニュートラルを実現するための6つのステップを解説します。JTBでは、基本となる「測る・減らす」の前段階として、まず「知る」ことから始めるプロセスを推奨しています。

STEP01まずはカーボンニュートラルとは何かを「知る」

具体的なアクションの前に、まずは経営層と担当者が「なぜカーボンニュートラルが必要なのか」を正しく理解することがスタートラインです。基礎知識がないまま進めると、目的が曖昧になり、形骸化しやすくなります。

この段階では、「脱炭素まちづくりカレッジ」のような、ゲーム感覚で学べるツールの活用が効果的です。楽しみながらカーボンニュートラルの全体像や重要性を「知る」ことで、社内の心理的ハードルを下げ、スムーズな導入が可能になります。

 

STEP02排出量を「測る」

次に、自社のCO₂排出量を把握します。電力やエネルギー使用量から算定ツールを活用し、可能な範囲でサプライチェーン全体(Scope3)も測定します。BCGの調査では、Scope3まで測定する企業は、測定していない企業に比べて利益を得る可能性が1.6倍高いことが判明しています。

出張やイベント開催など、見落としがちな排出源も含めて可視化することが、効果的な削減への第一歩です。

 

STEP03経営の意思決定と組織体制を整える

現状が見えてきたら、全社的なプロジェクトとして推進体制を構築します。経済産業省は「最初のステップは経営層での意識統一」と明確に定義しており、トップのコミットメントが不可欠です。

カーボンニュートラルのメリットを全社で共有し、特定の部署任せにせず、部門横断型のプロジェクトチームを組成することが成功の鍵となります。

 

STEP04科学的な削減目標を設定する

体制が整ったら、国際基準に沿った目標を立てます。BCGの調査によれば、SBT(Science Based Targets)など科学的根拠に基づく目標を設定している企業は、脱炭素による利益効果が高い企業グループに入る可能性が約1.9倍高いと報告されています。

科学的根拠に基づく目標は、対外的な信頼獲得に直結するだけでなく、社内の削減活動を加速させる強力な指針となります。

 

STEP05省エネ・再エネで実際に「減らす」

目標達成に向け、具体的な削減を実施します。まずは投資を伴わない空調温度調整、清掃徹底などの取り組みから始め、段階的に高効率設備への更新、太陽光発電導入、再エネ電力プランへの切り替えなどを進めましょう。

できることから着実に実施し、削減効果を実感することが、継続的な取り組みのモチベーションにつながります。

 

STEP06残った分はカーボン・オフセットで埋める

削減努力を尽くしても残る排出量は、J-クレジット制度などの活用により相殺(カーボン・オフセット)します。ただし、SBT等の基準ではオフセットを削減量として算入できない場合もあるため、あくまで直接削減(ステップ5)を優先することが重要です。

その上で、どうしても発生する出張やイベントの排出には、「CO₂ゼロ旅行®」や「CO₂ゼロMICE®」を活用することで、実質的なゼロに近づけます。カーボン・オフセットは不可避な排出を補い、環境コミットメントを示すことで企業価値を高める有効な手段です。

社内浸透と実行を進める仕組みづくり

多くの企業が直面する「社員のやらされ感」を払拭し、全社一丸となってカーボンニュートラルを推進するための実践的な方法を紹介します。

社員が自ら参加したくなる仕組みをつくる

例えば「グリーンチョイスギフト」のように、社員が環境配慮商品を「自分で選ぶ」体験は、単なるポイント付与や表彰よりも、社員の心理的満足度が高まります。

さらに、食品ロス削減に寄与する「ロス旅缶」のように、社会課題の解決と「選ぶ楽しさ」を両立できるコンテンツを組み合わせると、環境行動を自発的な選択へと変えることができます。「やらされSDGs」から脱却し、社員が主体的に関わるカルチャーづくりに取り組むことが重要です。

ゲーム性を取り入れて楽しく巻き込む

部門対抗のCO₂削減コンテストや、個人の削減量を可視化するアプリ活用など、ゲーミフィケーションにより楽しみながら取り組める仕組みを構築しましょう。

例えば「脱炭素まちづくりカレッジ」は、カードゲーム形式で地域のカーボンニュートラルを疑似体験できる教育プログラムで、短時間でも「自分ゴト化」が進む点が特徴です。ゲームを通じてカーボンニュートラルを学ぶことで、Z世代の高い環境意識を活かしつつ、組織全体の活性化につなげることが可能です。

部署を超えて進めるチーム体制づくり

サステナビリティ部門の「縦割り」を打破し、各部門から選抜されたメンバーによる横断型プロジェクトを推進します。これにより、現場のリアルな声や業務フローが初期段階から施策に反映され、実効性の高い取り組みを設計しやすくなります。

また、部門間で温度差が生まれにくく、合意形成もスムーズに進むため、全社的な意識改革と知識共有が継続的に促される体制が整います。

カーボンニュートラル推進で使える補助金・支援制度

設備投資やコンサルティング導入のハードルを下げる、国や自治体の支援制度を紹介します。

2025年11月時点の情報です。最新の情報につきましては、公式サイトなどでご確認ください。

環境省の支援策

環境省の「脱炭素化事業支援情報サイト(エネ特ポータル)」では、多様な補助金情報を一元的に提供しています。特に「GXサプライチェーン構築支援事業」は、企業単独では取り組みにくい「取引先との協働によるCO₂削減」を支援するもので、排出量の可視化から削減計画の策定、設備導入まで幅広くカバーするのが強みです。中小企業も対象となり、実務負担を大きく軽減できます。

経済産業省の支援策

経済産業省では、事業再構築補助金の成長分野進出枠(GX進出類型)など、カーボンニュートラル関連の設備投資を後押しする制度を拡大しています。最大1億円の補助により、再エネ電力プランへの切替や高効率空調・ボイラーの更新、太陽光の導入など、まとまった投資も現実的になります。

また、脱炭素化に取り組む企業の新規事業開発を支援する仕組みもあり、「コスト」ではなく「攻めの投資」として活用できるのが特徴です。

取り組みを「見える化」する国際認証・イニシアチブ

カーボンニュートラルへの取り組みを対外的にアピールし、ステークホルダーからの信頼を獲得するための国際認証を紹介します。

【SBT】科学的削減目標で信頼を得る

パリ協定と整合する科学的根拠に基づく排出削減目標を設定することで、国際的信頼を獲得できるのがSBTの特徴です。日本では大手から中小まで幅広い企業が認定を取得しており、サプライチェーン全体での脱炭素を示す指標として重視されつつあります。

科学的根拠にもとづく「有効な目標設定」は、投資家からの評価や業務効率の改善にもつながる点が強みです。

【RE100】再エネ100%宣言で企業価値を高める

RE100(Renewable Energy 100%)とは、事業で使用する電力を100%再エネで調達することをコミットする国際イニシアチブで、グローバル企業との取引優位性やブランド価値向上に直結します。

日本企業は2025年11月時点で94社がすでに参画しており、アジアでも存在感が大きいカテゴリーです。再エネ切替の明確なロードマップを示すことで、経営層の意思表示としても強力なメッセージとなります。

失敗しないためのカーボンニュートラル実践ポイント

カーボンニュートラル推進において陥りがちな失敗パターンと、それを回避するための実践的な解決策を紹介します。

宣言だけで終わらない仕組みをつくる

環境方針やカーボンニュートラル宣言を出しても、現場に浸透せず形骸化してしまうケースは少なくありません。これを防ぐには、精神論だけでなく具体的なKPIを設定し、定期的にモニタリングを行う運用体制を整えることが効果的です。

また、進捗状況を経営層へ定期報告するフローを組み込むと、組織としての本気度が保たれます。宣言を「絵に描いた餅」にせず、実効性のある取り組みとして定着させるためには欠かせない仕組みです。

「段階的導入」でコストを膨らませない

初期段階から高額な設備投資を行うと、費用対効果が見合わず息切れしてしまうリスクがあります。まずは運用改善などの「投資ゼロ」でできることから始め、次に補助金を活用した設備更新、最後に再エネ導入と、段階を踏むのが安全かつ確実です。

さらに、削減活動によって浮いた光熱費などを次の投資原資に回す「資金循環」が作れると、財務的な負担も抑えられます。無理のないペース配分こそが、長期間にわたるプロジェクトを成功させる秘訣です。

社内外の理解と協力を得る伝え方

取り組みの内容が素晴らしくても、相手に正しく伝わらなければ協力は得られません。株主には財務へのインパクト、従業員には仕事への意義、取引先には協働のメリットと、それぞれの関心事に合わせた対話設計が重要です。

統合報告書やWebサイトでの発信はもちろん、日々の営業活動や社内報など、あらゆる接点を通じて一貫したメッセージを発信することで、周囲からの信頼と共感の輪が自然と広がっていきます。

まとめ

カーボンニュートラルは、もはや避けて通れない経営課題ですが、同時に企業を変革し、新たな成長をもたらす大きなチャンスでもあります。最初は「何から始めればいいか分からない」と迷うこともあるかもしれません。しかし、まずは「知る」ことから始め、自社の現状を「測る」ことで、意外な排出源や削減の余地に気付くはずです。

JTBでは、排出量の算定から削減計画の策定、そして「CO₂ゼロ旅行®」や「CO₂ゼロMICE®」、「脱炭素まちづくりカレッジ」といった具体的なソリューションを駆使し、企業の脱炭素経営をトータルでサポートしています。単なる移動の手配にとどまらず、「コスト」を「価値」に変えるための戦略パートナーとして、ぜひお気軽にご相談ください。


関連情報

ニュースリリース:2022年5月27日 JTBカーボンニュートラル宣言
2050年CO2排出量ゼロをめざし、持続可能な交流創造事業に挑戦

株式会社JTBは、持続可能な地球環境の実現に向け、事業活動における環境負荷を段階的に削減し、2050年度までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)をめざします。今後は、この取り組みをグループ各社に広げ、お客様・事業パートナーと共に、交流をサステナブルな観点で見直し、心豊かで持続可能な社会の実現と、そのための環境の維持・創出に取り組みます。さらに、地域や観光事業者との連携を深め、ツーリズム産業におけるサステナビリティの推進につなげてまいります。

詳しくは こちら

紹介動画「JTBカーボンニュートラルへの取り組み」(2分20秒)

本記事に関するお問い合わせ、ご相談、ご不明点などお気軽にお問い合わせください。

関連サービス・ソリューション

JTBでは、様々なソリューションを組み合わせることで、それぞれのお客さまにあった課題解決⽅法をご提案いたします。

#Think Trunk

WEBマガジン「#Think Trunk」とは

人と人、人と組織、人と社会とのコミュニケーションのヒントをお届けする
WEBマガジンです。

人間・組織の悩みは、コミュニケーション・関係性の場づくりで解決できる。
〜JTBは、新しい形の交流のあり方を創造し、社会に貢献していきたいと考えています〜

JTB法人事業のお客様へお役立ち情報や課題解決のきっかけとなる知見、経験、アイデアを紹介するWebマガジンです。また産・官・学の皆さまとの接点があるJTBならではの垣根を越えた共創のヒントをお届けしたいと考えています。