企業イベントの成功には、企画・運営の全体像を理解し、重要なポイントを押さえることが不可欠です。この記事では、イベントを担当する方々に、イベントの運営に必要な動きと成功のためのノウハウを紹介していきます。
なお、文末にはお役立ち資料「開催地・会場選定77のヒント」はじめ関連記事のリンクもご用意しております。ぜひご覧ください。
INDEX
企業イベントとは?
企業イベントとは、企業が特定の目的達成のために社内外に向けて行うイベントのことです。以下の項目ごとに詳細を説明します。
社内イベント
社内イベントは、従業員間のコミュニケーション促進やチームビルディング、モチベーション向上などを目的として行われます。
具体例としては、新年会、忘年会、社員旅行、トレーニングセッション、ワークショップ、部門別の交流会、社員表彰イベントなどがあります。
社外イベント
社外イベントは、顧客やパートナーとの関係構築、ブランドの認知度向上、製品やサービスのプロモーション、新規ビジネスの発掘などを目的として行われます。
具体例としては、新商品発表イベント、カンファレンス、展示会、セミナー、ビジネスパーティー、顧客感謝イベント、チャリティーイベントなどがあります。
【イベントの全体像】5つのステップ
イベント運営の全体像は、大きく分けて、5つのステップがあります。具体的には以下の通りです。
- イベントの企画
- 目的やテーマを決め、参加者やプログラムを検討します。
- イベントスケジュールの策定
- 日程や時間、場所を確定し、プログラムの流れを計画します。
- イベント実施に向けた準備
- 施設や機材の手配、スタッフの配置、参加者への案内などを準備します。
- イベントの開催(当日)
- 準備が整ったらイベントを実施します。
- イベントの振り返り
- 参加者やスタッフからのフィードバックを収集し、次回の改善点を考えます。
STEP 01イベントの企画
企業がイベントを企画する際には、イベントの目的やターゲットを明確にし、与えられた条件の中で、最適なものを計画します。目的やターゲットを設定することで、、その主旨や必要事項がより明確になり、効果の期待できるイベントを計画することができます。
参考リンク:イベントを成功させるための重要なポイント
イベントの目的を明確にする
イベントを企画する際には、以下の点を踏まえることが重要です。
- 具体的な目的を設定する
- イベントの目的を具体的に設定することで、企画の方向性が明確になります。目的の例として「新規顧客の獲得」「ブランドの認知度向上」「既存顧客のロイヤリティー向上」「新製品やサービスのプロモーション」などがあります。
- 目的を限定する
- 目的をできるだけ絞り込むことで、企画を立案しやすくなります。また、目的は担当者だけではなく、運営に携わる協力会社にも周知しておくことが重要です。
イベントのターゲットを設定する
ターゲットを設定する際には、具体的なターゲット像を設定しましょう。参加者ごとに興味・関心が異なるため、具体的なターゲット像を想定し、その興味や関心に合わせた内容を提供することが重要です。ターゲットを不明確なままの計画でイベントを進めると、誰にも響かないイベントになるおそれがあります。
一般消費者向けのイベントでは、年齢や性別、年収、職業などをさまざまな項目からターゲットを絞りますが、企業向けのイベントにおいては、参加者の業種や役職、会社の規模や売上高、ビジネスモデルなどをもとに検討します。
イベントに参加することで得られるメリット明示する
イベントへの参加により得られるメリットを明示することで、参加者の関心を引きつけ、より強く参加意欲を高めることが可能です。具体的にメリットを示すことで、参加者にイベントへの価値や利点を深く理解させることにもなります。
企業や専門の業界が開催するイベントでは、専門的な情報や業界の最新トレンド情報を得ることに加え、業界内の人脈拡大や新たなビジネスチャンスの創出の機会があること等、多くのメリットがあります。ワークショップやセミナーにおいては、スキルや知識の習得や、新しいアイデアの発見があるかもしれません。
このように、イベントのメリットの明示は参加者が参加する価値を感じ、参加者数の拡大や満足度向上につながります。また、参加者がイベントに興味を持ち、積極的に参加する意欲を高めるための重要な施策である、とも言えます。イベントのメリットを明示する場合は、具体的な文言を設定し、打ち出すポスターやバナーがある場合は、訴求文言として入れ込むのも効果的です。
「6W2H」で考えるのがおすすめ
イベント運営において、「6W2H」を用いて物事を考えることは、必要な要素を網羅的に考えるのに有効です。その内訳は以下のようになっています。
- Who(誰)
- 主催者、参加者、スタッフなど、関係者の確認と役割の明確化が必要
- When(いつ)
- 開催日時の選定とスケジュールの調整が重要
- Where(どこで)
- 開催場所の選定と会場の手配が必要
- What(何を)
- イベントの内容やプログラム、アクティビティの決定がポイント
- Why(なぜ)
- イベントの目的と意義を明確化、参加者のモチベーションの高揚にもリンク
- How(どのように)
- イベントの運営手順や実施方法、予算編成等を計画
- How much(いくらで)
- イベントの予算や費用の見積もり、資金調達方法を考慮します。
- With whom(誰と一緒に)
- 協力会社やパートナー、スポンサーとの協力関係の構築が重要です。
このなかでも「What(何を)」は特に重要です。参加者に提供するコンテンツや価値を考えることはイベントの成功にも直結するからです。
参加者が何を提供され、どのような体験や知識を得られるのかを明確にすることは、参加者の期待値を高め、イベントの話題性拡大や参加者数増加につながります。
イベントのコンテンツ事例
著名人を講師やゲストに招いてのイベント
よくある企画として、著名人やインフルエンサーを講師やゲストに招くものがあります。例えば、ある商品の販促活動を目的としたイベントの場合、インフルエンサーによるユーザー代表としての登壇などもその一つです。有識者、元プロスポーツ選手などを招くことで、イベントに第三者目線といった観点や、権威付けといった特殊性を付与できます。
参加型・体験型イベント
参加型や体験型のイベントも人気です。例えばARアプリを使用した脱出ゲームや謎解きイベント、宝探しイベントなども開催されています。これらのイベントは参加者が主体的に参加できるところが人気の理由です。
国籍に関係なく日本文化に興味を持つ人に向けて、日本文化体験ツアーを行ったイベントもあります。他にも、開催時期に合わせて同時にまちフェスを実施するなど、さまざまな工夫が考えられます。
来場者同士での交流型トークイベント
来場者同士のコミュニケーションを重視するイベントもあります。来場者によるその場での意見発表や、特定テーマについての来場者同士での議論など、さまざまな企画があります。自社サービスの満足度を高めるために、サービス利用者をターゲットにしたイベントも増えています。サービス提供者は来場者の意見を利用者の生の声として収集できるとともに、来場者自身も他のユーザーがどのようにサービスを利用しているかが分かるなど、さまざまにメリットがあります。
STEP 02イベントスケジュールの策定
ターゲットをイメージして開催日程を決めてから、イベントの規模に合う会場を確保します。
日程を決める
イベントの開催に適した日程は、ターゲットによっても変わります。会社員がターゲットの場合は、土日祝日のお昼頃にイベントを開催することで、来場がしやすくなります。もしも平日に開催する場合は、18時以降に開催することで、仕事を終えてからの参加が可能です。イベントの性質上、業務として来場するケースが多いと考えらえる場合には、日中に開催が参加者には好都合です。
イベント会場を予約する
会場選定や確保は、来場者数に見合った大きさかどうかがポイントです。また、会場の場所も、イベントの参加者数に大いに影響します。たとえば子育て世帯をターゲットとする場合は、ショッピングモールや住宅街の付近で会場を設定することで、対象者が来場しやすくなります。開催地や会場を決める際は、以下の資料をお役立てください。
STEP 03イベント実施に向けた準備
イベント当日に向けて準備するべきことは多岐にわたりますが、スムーズに進行をさせるためには、事前に計画を立て、しっかりと準備をすることが不可欠です。
アンケートを用意する
参加者に対してアンケートを実施すると、イベントの目的を達成できたか、主催者の意図や目的が正しく伝わったかどうかを確認できます。10段階で回答するなど結果を数値化できるよう工夫すると、結果がわかりやすくなります。またアンケートの結果は以降のイベントへの反映や、商品開発やサービスに盛り込むなど、将来や企業活動に役立てることが可能です。
管理ツールを導入する
効率よくイベントを管理するために、管理ツールの活用もおすすめです。MA(マーケティングオートメーション)ツールは、ターゲットとなる見込み客の抽出に役立ちます。CRM(顧客管理)システムは顧客情報を管理するツールで、既存顧客がターゲットのイベントにおいては特に効果を発揮します。また、MAツール、CRMシステムと連動するイベント管理システムもあります。管理ツールにつきましては、以下もご参照ください。
当日の運営マニュアルを作成する
イベントに関わる全ての関係者に対して必要な情報をもれなく共有するためには、綿密な運営マニュアルが必要です。また、トラブルが起きた際の適切な対応方法もマニュアルに記載します。記載すべき項目や作成時の注意点などは、後ほど詳しく紹介します。
告知・PRする
社外向けのイベントなら、メールマガジンやポータルサイトへの広告掲載、SNSの投稿などで大々的に告知・PRします。ターゲットに合った媒体の選定が、効率的な告知・PRのポイントです。社内向けのイベントなら、社内サイトへの掲載、全社メールでの配信などを行います。
STEP 04イベントの開催(当日)
イベント当日の流れを解説します。スムーズにイベントが進むよう、各担当者の仕事内容を明確にしておきます。
受付
参加者を待たせずスムーズに案内するためには、参加者数を考慮した人数を受付に配置します。氏名を確認してパンフレットを渡すなど、作業量も考慮した受付人数の配置がポイントとなります。
イベントシステムの活用により、非接触・少人数のスタッフでの受付対応も可能です。イベント会場への経路を確認のうえ、シンプルな案内方法も考えます。
進行台本の準備
進行台本とは、プログラムを時系列に記載したものです。音響や照明のタイミング、司会者のナレーションなども記載しておくとよいでしょう。
司会者などのリハーサル
進行担当者が、司会者や登壇者などに対して段取りを説明します。当日、会場でリハーサルをして初めて発覚する問題もあるため、事前に社内などで練習をしていたとしても、会場でのリハーサルは欠かさず行いましょう。
機材・音響・照明の確認
パソコン、プロジェクターなどの機材は予期せぬトラブルが発生する場合もあるため、入念に動作を確認しましょう。音響や照明などを会場側に依頼する場合は、事前にタイミングなどをすり合わせておきましょう。当日に初めて段取りを伝えるのではなく、進行台本を事前に確認してもらうことが大切です。
トラブルの想定
発生しやすいと考えられるトラブルは、事前に対応フローを用意するなど、運営マニュアルに加えておくほうが安心です。
不測の事態にも臨機応変に対応できるよう、できるだけ多くのトラブルを想定することが大切です。また、複数のトラブルが同時起きてもしっかりと対応できるよう、複数の対応窓口を用意しておくと安心です。
STEP 05イベントの振り返り
次回以降のイベントがより良いものになるためにも、重要なのが、実施当日の振り返りです。
まずは、当初設定したイベント目的の達成度合いや失敗点などを洗い出し、評価をします。参加者のフィードバックや担当者の意見も集めます。
振り返りの指標としては、SNS拡散数やイベント参加者数、コンテンツ参加数、チラシやサンプリングの配布数など、これらのデータを分析し、イベントの成功要因や改善の余地を把握します。また、参加者へのお礼メールとアンケートを通じて、彼らの体験や意見を直接聞くこともポイントです。
蓄積したデータは、次回のイベントをより良いものにするためにも、具体的な改善策を策定するために不可欠です。
イベント運営マニュアルとは?
イベント運営マニュアルは、イベントの詳細や組織図など、スタッフが知るべき情報をまとめた文書です。このマニュアルには、イベントの開催日時や場所、プログラムの詳細、各部門の役割や責任、緊急時の対応策などが含まれます。また、スタッフの連絡先や重要な連絡事項も記載されることがあります。
イベント運営マニュアルを作成することで、いくつかのメリットがあります。
1つめに、スタッフ全員が一元化された情報を知ることで、円滑なイベント運営が可能となります。また、予期せぬトラブルや緊急時の対応策についても事前に整備されているため、安心してイベントに望むことができます。さらに、マニュアルによってスタッフのトレーニングや準備も効率的に行えることから、イベントの品質向上にも繋がります。
ただし、イベント運営マニュアルを作成する際にはいくつかの注意点があります。まず、正確で最新の情報を反映させることが重要です。イベントの詳細やプログラムが変更された場合には、マニュアルも適時更新しましょう。また、各部門やスタッフの役割や責任を明確に定義し、誰が何を担当するかを明示することも大切です。また、マニュアルは分かりやすく、スタッフが容易に使用できる形式で作成しましょう。
イベント運営マニュアルに記載すべき項目
イベント運営マニュアルには、実際にどのような項目を記載すべきなのでしょうか?代表的なものをいくつか紹介します。
- イベント概要
- イベントの趣旨やテーマ、開催日時、場所などを明記し、参加者やスタッフにイベント全体のイメージを提供します。
- 組織図
- イベントの組織構造や役割分担を示し、各部門やスタッフの連絡先、責任範囲を明確にします。
- プログラム
- イベントの詳細なスケジュールやプログラム内容を記載し、参加者やスタッフがイベントの流れを把握できるようにします。
- 機材・設備
- イベントで使用する機材や設備のリストと使用方法、管理責任者を明示し、機材のスムーズな準備と運用を確保します。
- 安全対策
- 火災や緊急時の対応策、救護体制や安全管理の手順を明確にし、参加者やスタッフの安全を確保します。
- プロモーション
- イベントの宣伝・広報活動の計画や方法、担当者を指定し、イベントの認知度向上と参加者獲得を促進します。
- チケット・受付
- チケット販売や受付業務の手順、担当者とその連絡先を記載し、参加者の受付プロセスを円滑化します。
- キャタリング
- 飲食サービスの提供方法やメニュー、責任者と連絡先を明記し、参加者の食事やドリンクの配慮を行います。
- 清掃・設備管理
- イベント会場の清掃方法や設備管理、責任者を指定し、快適な環境の維持を担保します。
- 問い合わせ対応
- 参加者や関係者からの問い合わせに対する対応方法や連絡先を示し、円滑なコミュニケーションを確保します。
イベント運営マニュアルにはこれらの項目を含むことで、イベントの成功に必要な情報や手順を一元化し、スムーズな運営の手助けとなるでしょう。
イベント成功のための3つのポイント
POINT 01運営チームの組織づくり
運営チームの組織づくりは、イベントを成功させるために不可欠です。役割を明確化した組織を構築することで、各メンバーが責任を持ち、協力してイベントを効率よく運営できます。
全体責任者はイベント全体の統括を行い、運営担当者は広報や会場準備などの具体的な業務を担当します。進行担当者はイベント当日の進行や時間管理を担当し、スムーズな進行をサポートします。
全体責任者が担うべき役割
全体責任者は、運営・進行の進捗状況を確認してイベント全体を取りまとめる仕事。設定した目的の達成に向けて、イベント全体を正しく導いていく重要な役割となります。イベント当日のトラブル対応に支障が出ないよう、全体責任者には当日のタスクを割り当てないのもポイントです。
運営担当者が担うべき役割
運営担当者は、運営マニュアルを準備し、当日の受付や来場者の誘導などを実施します。運営マニュアルに記載すべき項目については、後ほど詳しく解説します。
進行担当者が担うべき役割
進行担当者は進行台本を準備し、音響・照明などの機材を準備します。音楽や映像、司会者登壇のタイミング等も進行担当者が確認します。
POINT 02常にイベントの目的を意識する
イベント成功のためのポイントの1つは、常にイベントの目的を意識することです。イベントの企画や実施においては、参加者や開催時期、会場、時間の都合などで当初の計画が変わることがよくあります。
しかし、常に「イベントの目的」を意識しておくことで、何か予期せぬ事態が生じた場合でも、目的に沿った判断や対応が可能です。イベントの目的を明確に把握し、それを中心に計画を立てることで、イベントの成功に繋げることができます。
POINT 03徹底した時間管理をする
イベント成功のためのポイントの1つは、徹底した時間管理をすることです。参加者の満足度向上に直結する重要な要素です。進行度合いを常に把握し、イベントが予定より押している場合は必要応じて短縮をすることが大切です。
また、イベントの中で短縮できそうな部分を把握し、柔軟に対応することも必要です。特に講師を招くイベントの場合は、事前に残り時間を伝える方法などを決めておくことが重要です。徹底した時間管理により、イベントの進行をスムーズに行うことができ、参加者にとってもより良い体験となるの提供ができるでしょう。
イベント運営にまつわるよくある質問
- Q. イベント運営は何をする?
- A. イベント運営は、企画から準備、実施、後処理までの全プロセスを管理することの包括的な呼び方。
会場の選定、装飾、スケジュールの策定、参加者の募集と管理、必要な設備や人材の手配、当日の進行管理、安全対策の実施、イベント後の評価やフィードバックの収集など、多岐にわたります。
たくさんの役割とともにやるべきことも多々ありますが、それぞれの役割は、大きな目標としての目的を達成することと参加者の満足といった両方を実現することには変わりありません。 - Q. イベント運営会社とは何ですか?
- A.イベント運営会社は、イベントの企画や制作、運営、開催後の成果調査などを代行する会社です。社内イベントからPRイベント、展示会、セミナーなどの社外イベントまで、幅広いイベントを実施・運営します。
クライアントのニーズに応じて、会場の手配や装飾、プログラムの企画立案、参加者の募集・管理、技術機器の手配などを行い、イベントの成功に向けて全体的なサポートをします。
まとめ
ひとくくりに企業イベントと言っても、その目的や形式はさまざまです。目的や目標などをしっかりと設定しておかないと、イベントはただ開催するだけになってしまう可能性もあります。
企業イベントの運営においては抑えておくべきポイントが多く、また準備から開催までに長い期間を要します。社内に経験者が居ない場合や、開催したことがない形式でのイベントを行いたいという場合には、イベント運営会社を使うのもおすすめです。
記事内で紹介した「6W2H」を使うことで、紹介しているイベント前から開催後までのフローをどうやって行うべきかを明確にすることができるはずです。自社で運営する場合でもイベント運営会社を使う場合でも有効ですので、活用してみてはいかがでしょうか。