SDGsへの注目とともに、企業はさまざまな取り組みを実施しています。近年では、意識や姿勢だけでなく、経営や事業を通じた、具体的な関与が求められています。
ドイツで創業したフエニックス・コンタクト株式会社様は、2023年に創業100周年を迎えました。この度、同社の日本法人がサステナビリティに注目した周年プロジェクトを実施。JTBが支援をさせていただきました。
今回は、フエニックス・コンタクト株式会社様にインタビューを実施し、周年プロジェクトの具体的な取り組み内容とともに、会社の変化の様子をお伺いしました。また、記事の最後で、インタビュー動画と周年記念プロジェクトを検討する際の参考になるお役立ち資料『企業成長の機会を最大化する、「周年事業」の効果と実施ポイントとは』を紹介しています。ぜひ、ご覧ください。
フエニックス・コンタクト株式会社
世界55か国以上の海外支社を展開し、従業員20,300人以上、創業100年以上の歴史を持つドイツの産業用接続部品、制御機器および通信機器のマーケットリーダー、フエニックス・コンタクト社の日本法人。日本国内では本社(神奈川県横浜市)をはじめ10拠点、および配送センター(神奈川県大和市)を通じ、DINレール搭載用端子台・プリント基板用端子台・産業用コネクタなどの接続部品や、信号変換器・電源・リレーを中心とする電子機器、サージ保護機器、および産業用ネットワーク機器など10万点以上におよぶ製品の販売およびカスタマーサービスを行う。詳細はHPをご覧ください。https://www.phoenixcontact.com/ja-jp/
“サステナビリティ”がテーマの、100周年プロジェクト
──まずはじめに、今回の周年プロジェクト立ち上げのきっかけを教えてください。
──プロジェクトの計画に際して、どういった課題やポイントを感じていましたか?
- 横井氏
- 日本法人は、販売事業を主として、横浜にある本社を中心とし、全国に10ヶ所の営業拠点を構えています。製品開発や製造機能をもたないため、製品に対するサステナビリティや脱炭素に関与しづらい状況にありました。そこで、日本法人ならではの関わり方を模索しました。
たとえば、従業員が、フエニックス・コンタクトで働いていることを誇りに感じてもらえるよう、特別な体験コンテンツを企画。従業員間の共有を重要視しました。そして、2023年が「サステナビリティ元年」として、従業員の心に残り、受け継がれるものにしたいと思い計画を進めていきました。
JTBの支援で周年プロジェクトを実現
──今回の周年プロジェクトでは、計画の段階からJTBが伴走し、プロジェクト全体を支援させていただきました。当初、JTBに依頼しようと思ったきっかけを教えてください。
- 横井氏
- 日本法人では、これまでサステナビリティの観点で体系だった取り組みをした実績がほとんどありませんでした。一方、JTBさんはこのような周年事業などに対して、固定観念を持たず柔軟に取り組んでいる印象がありました。
そこで、JTBさんであれば、私たちと一緒にゴールを描いて挑戦していただけるのでは、と思い依頼しました。
──そのような印象を持っていただき、嬉しく思います。一緒に取り組んでみた印象をお聞かせください。
- 横井氏
- 周年プロジェクトは、はじめての取り組みでしたが、一つひとつの課題を一緒に乗り越えながら、粘り強く伴走いただき、心強く感じています。
──JTBとしても、とてもやりがいのあるプロジェクトでしたし、フエニックス・コンタクト様との繋がりを強く感じました。
- 横井氏
- 今回のプロジェクトは、もうひとつのテーマとして「コネクションズ(つながり)」を掲げていました。JTBさんとディスカッションをしながら、『従業員が一緒になって“サステナビリティ”を初歩から学ぶ→その学びをお互いに共有し深める→自ら実践していく』というステップで、プログラムを組み立てました。
- 横井氏
- 「学び」では、従業員に対して、『SDGs研修』を実施。「実践」は、『脱炭素チャレンジ』や『SDGsツアー』を行いました。今後は、周年を迎える感謝を祝うべく、お客さまや取引先を招いてのパーティーの開催なども予定しています。
学ぶーSDGs研修
──SDGs研修では、従業員のみなさんが積極的に学ぶ機会を提供できたと伺いました。
- 横井氏
- SDGs研修は、計4回の研修を通じて、サステナビリティについて学ぶことができました。SDGs について(基礎講義) 、関係するゴールとターゲット 、事業活動とサステナビリティ、日常の中でのサステナビリティ、脱炭素の重要性など、さまざまな観点から学ぶことで、自身の行動による影響を知る機会になりました。
実践①ー 脱炭素チャレンジ
──実践のひとつとして、脱炭素チャレンジはテーマとダイレクトに紐付くプログラムですね。
- 横井氏
- 従業員一人ひとりが、日常生活から仕事の業務内で、自身の行動を脱炭素のアクションに置き換え、専用のアプリ内で行動記録と脱炭素量を“見える化”する取り組みでした。そして、脱炭素に対するアクションを習慣化してもらうことを目指してスタートしました。
──従業員のみなさんは、具体的にはどういったアクションをしていますか?
- 横井氏
- たとえば、マイバッグを持つことで買い物の際のレジ袋を削減したり、マイ箸を持ち歩くことでお弁当を購入したときの割り箸を削減したりすることができます。結果、省資源(資源の節約)に繋がりますよね。また、事務所内の移動で、エレベーターを使わず階段を使って歩くことで、省エネに繋がります。
このような日常生活のアクションを14項目ほど設定し、アプリに登録することで脱炭素量を“見える化”しています。
──従業員の方々にアプリを使って脱炭素に取り組んでもらうために、さまざまな工夫も行ったと伺いました。
- 横井氏
- 今回、JTBさんと協議しながら、一からこのアプリを作りました。どうすれば、従業員が気軽に、継続的に参加してもらえるかを考え、様々なアイデア出しをして仕様に盛り込みました。
アプリにしたことで、ゲーム感覚で取り組んでいただけるものになっています。また、自分一人で実施するのではなく、チーム制を取り入れることで、従業員間で協力して、脱炭素のアクションに取り組んでいます。
──従業員の方々の反応はどうですか?
- 横井氏
- 結果、全従業員のうち88%が利用しており、従業員に受け入れられ、気軽に参加してもらえるものになりました。
また、実際に、脱炭素チャレンジに取り組みながら、従業員間同士で盛り上がっている様子も見られています。脱炭素量が想像以上に積み重なっており、数値でも成果に現れています。
実践②ーSDGsツアー
──もうひとつの実践として、SDGsツアーを実施されたと伺いました。
- 横井氏
- 日本の全国各地に、サステナブルの観点でさまざまな取り組みを行なっているローカルコミュニティがあります。SDGsツアーは、そのような各地のサステナブルの成功現場を訪れ、働く人々の話を聞いたり、体験をしたりするものでした。まさに、JTBさんの地域ネットワークや企画力を生かしていただいたプログラムとなりました。
──ありがとうございます。日本各地を訪れ、その土地ならではのサステナブルな側面に目を向けるプログラムになったのであれば嬉しい限りです。
- 横井氏
- 計4回のツアーを実施し、香川県・山梨県・千葉県・愛知県を訪れましたが、どの回も多くの学びがありました。
香川県では、伝統のたこつぼ漁の体験や、小豆島のゴミ拾いを実施。山梨県では、ぶどう農家さんで行なっているバルサミコ酢の醸造の現場や、有機農業の現場を訪問し、生産者さんの話を聞きました。
千葉県では、循環型の農業・経営を行なっているキャンプ場を訪問し、規格外野菜について話を聞きながら、収穫・サラダ作りなどを体験。愛知県では、産業廃棄物の処理工事を見学しながら、別事業として行われている養蜂業の現場を訪れました。
──参加者の反応はいかがでしたか?
- 横井氏
- 参加者の1人からはこんな声がありました。
「以前は、SDGsに対して受け身の姿勢でしたが、現地の人の話を聞き、体験することでその意識が変わりました。SDGsを主体的に考えるきっかけになりました」
ほかにも、「その土地ならでは学びや発見が多数得られた」、「従業員間の繋がりが生まれた」など、さまざまな声が挙がっています。また、「今後もこのような取り組みを続けてほしい」と継続を希望する声も挙がっています。
──その土地ならではの学びを得られたと同時に、次につながるものになっていますね。
- 横井氏
- このツアー自体は、JTBさんの協力なくしては、実現できなかったものです。当初は、従業員が日々仕事に忙しく取り組んでいるなかで、ツアーに参加してもらえるのか不安がありました。また、参加するだけで、学びや気付きの機会になるか、半信半疑でした。しかし、従業員からは、ポジティブな声がたくさん挙がっていることから、価値のある時間になったのだと感じています。そのような従業員が変化する姿を見て、周年事業の担当として嬉しく思いましたし、自分自身もたくさんの学びを得ました。
サステナビリティに向き合い、企業は変わる
──100周年プロジェクトを通じて、社内にどんな影響が見られましたか?
- 横井氏
- 2023年は、フエニックス・コンタクトのサステナビリティ元年として取り組みを進めてきました。このプロジェクトを進めるなかで、従業員が取り組む姿、変わる様子を間近で見ながら、サステナビリティ元年の気運が高まっていることを感じています。そして、次世代へ繋げるベースができていると感じています。
──今後の展望を教えてください。
- 横井氏
- このプロジェクトを通じて得た経験や学びを、少しずつ実際の事業や経営にエッセンスとして落とし込んでいけるよう、長期的な視点で働きかけを行っていきたいと考えています。今後は、今回のような取り組みを従業員が自発的に実施する風土を作り、フエニックス・コンタクトならではのサステナビリティにチャレンジしていきたいです。
──従業員のみなさんが、自発的になることで、真の意味でのサステナビリティが実現できますね。今後も、JTBは全力でサポートさせていただきます。本日はありがとうございました。
JTB担当者からのメッセージ
今回、フエニックス・コンタクト株式会社様の周年事業をサポートしたJTB担当者からのメッセージをご紹介します。
まとめ
フエニックス・コンタクト株式会社様は、周年事業を変革のチャンスと捉え、会社が向かうべき方向性を念頭に、サステナビリティというテーマを掲げ、さまざまな取り組みを実施されました。その結果、社内におけるサステナビリティの浸透だけでなく、従業員の一体感の醸成など、副次的な効果も実感されています。
周年事業は、企業にとって、これまでの成功をもとに、次のステップに踏み出す良いきっかけになります。貴社でも、周年事業を活用してみてはいかがでしょうか。JTBでは、今後もさまざまな組織・団体様の周年事業を全力でサポートしていきます。周年事業の取り組みをご検討されている組織・団体様は、関連動画、関連資料もご覧ください。