人的資本経営の重要性に注目が集まる昨今、貴社ではどのような取り組みを行っていますか?日本においても、一部の企業を対象に、人的資本の情報開示の義務化がスタートしています。人材の力を引き出し、業績向上につなげるためには、「社員のモチベーション向上」が重要です。今後は一層、企業が社員のモチベーション向上について理解し、実践することが必要となってきます。本記事では、社員のモチベーション向上に役立つ理論をはじめ、手法、企業の実際の取り組み事例などについてわかりやすく紹介します。
また、記事の最後には、モチベーション向上の施策の1つであるインセンティブ施策に関するお役立ち資料「 企業のインセンティブ担当者に聞きました!セミナー参加者アンケートから読み解く 今後のインセンティブ施策検討のポイントとは?」を掲載しています。社員のモチベーション向上への取り組みに課題感をお持ちの方は、ぜひご覧ください。
INDEX
社員のモチベーション向上は重要な取り組み
人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる人的資本経営に注目が集まっています。人材不足が多くの企業の課題になる中、人材を「コスト」ではなく「投資」の対象として捉え、人材が持つ資質や能力へ投資することにより、新たな価値が生み出されるという考え方に企業の価値観が変わってきています。その人材への投資の1つが、「社員のモチベーション向上」です。まずは、「社員のモチベーション向上」のメリットについて紹介します。
生産性が向上する
社員のモチベーション向上を図るメリットの1つが、生産性の向上です。社員のモチベーションが上がることは積極性や主体性の向上につながり、それは社員の提供サービスの質を向上させます。その結果、企業の生産性の底上げが期待できます。
社員間のコミュニケーションも活性化し、新しいアイデアが生まれやすくなります。
企業のイメージが上がる
企業のイメージが上がることも、社員のモチベーション向上を図るメリットの1つです。
前述の通り、社員のモチベーションが上がることで、商品やサービスの質が向上する効果が見込まれます。その結果、取引先企業や顧客からの評価が高まり、企業イメージも向上する可能性があります。
定着率が上昇する
3つ目に挙げるのが、社員の定着率上昇です。
社員のモチベーション向上は、離職防止につながります。帰属意識や愛社精神が高まれば、結果的に定着率が上がります。また、定着率上昇は採用コストの削減にも有効です。
モチベーションの種類
次に、モチベーションの種類について紹介します。モチベーションとは、人が目標に向かって行動を起こす、その行動を維持するための原動力や動機を意味し、ビジネスでは「仕事への意欲」のことを指します。そして、社員のモチベーションを引き出すことを「動機づけ」と言い、この「動機づけ」には2種類あります。
内発的動機づけ
内発的動機づけとは、自分自身の内面にある興味や関心による動機づけのことです。本人が「やりたいからやる」ということです。具体的には、好奇心や探究心などが挙げられます。意図的に生み出すのは難しいですが、自分の気持ちや希望がベースとなっているため、高い持続性が期待できます。
外発的動機づけ
外発的動機づけとは、行動の要因が人為的な刺激によって発生する動機づけのことです。「○○のために行動する」「○○があるから行動する」というようなものです。具体的には、評価や報酬などが挙げられます。外発的動機づけは効力が強く即効性があります。ただし、持続性は期待できない点に注意が必要です。
社員のモチベーションアップに役立つ理論
モチベーションの種類がわかったところで、次に貴社の取り組みの検討に役立つ、社員のモチベーションアップに関する2つの理論を紹介します。
01マズローの欲求5段階説
マズローの欲求5段階説とは、アメリカの心理学者であるA・マズロー氏が提唱した理論です。人間の持つ「欲求」は、5段階のピラミッド構造をなすとの心理学理論に基づいています。5つの欲求の内容は、以下の通りです。
- 生理的欲求(1段階):食事や睡眠など、人間が生きていくための本能的な欲求
- 安全の欲求(2段階):安全に暮らしたい、経済的にも安定したいなどの欲求
- 社会的欲求(3段階):友人・家庭・会社などから受け入れてもらいたい欲求
- 承認欲求(4段階):他者から認められたい欲求
- 自己実現欲求(5段階):自分が満足できる自分になりたい欲求
マズローの欲求5段階説は、ある欲求が満たされることで、次の欲求が現れるという法則に基づいています。承認欲求および自己実現欲求を満たそうとする際に、人はモチベーションが上がりやすくなります。
02二要因理論
二要因理論とは、アメリカの臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグ氏が提唱した理論です。この理論では、仕事における満足・不満足の要因を分析しています。二要因理論を理解するためには、「衛生要因」と「動機付け要因」の理解が重要です。両者の内容は、以下のとおりです。
- 衛生要因:仕事の不満に関わる要素(給与、福利厚生、経営方針、管理体制、同僚・上司との人間関係など)
- 動機付け要因:仕事の満足度に関わる要素(達成すること、承認されること、責任、昇進など)
ハーズバーグ氏は、「衛生要因が満たされないと従業員は不満足を引き起こすが、満足度につながるものではない」と論じています。動機付け要因は、なくても不満は出ないが、あることで満足度が高まる要素です。
社員のモチベーションが下がる理由
モチベーションは、上がることもあれば、当然下がることもあります。では、社員のモチベーションが下がるのはどのような理由からなのでしょうか?その理由を3つ紹介します。
待遇に不満がある
仕事に対する評価や給与などの待遇に不満がある場合、社員のモチベーションは下がります。頑張りが評価されないと、社員は不満を抱えやすくなります。特に、年功序列の企業風土が強いと、若手社員は不満に思いやすい傾向です。
人間関係がよくない
人間関係がよくないと、社員のモチベーションは下がります。
どのような組織であっても人間関係のトラブルは少なからず起きるものです。しかし昨今問題になっている、ハラスメントやいじめの防止は徹底する必要があります。ハラスメントやいじめを起こさせない土壌づくりが大切です。
また、人間関係がよくないと問題や悩みがあっても相談しにくくなります。
仕事内容に満足していない
社員が自らが任されている仕事の内容に満足していないと、モチベーションは下がりやすくなります。仕事の内容に満足していない例としては、以下が挙げられます。
- 自分の適性に合っていない
- 本来やりたかった仕事ではない
- 日々の仕事がマンネリ化している など
仕事のモチベーションを高めるためには、やりがいが重要です。社員がやりがいを感じられるよう、任せる業務内容の精査が大切と言えます。
上司が部下のモチベーションを向上させる方法
では、社員のモチベーションを上げるためには、どのような取り組みをすればいいのでしょうか?まずが、上司が部下のモチベーションを向上させる方法について紹介します。
部下の特性にあった目標設定をする
上司が部下のモチベーションを向上させる方法の1つは、部下の特性にあった目標を設定することです。部下の個性や能力はそれぞれ異なるため、その内容に合わせた目標設定が重要と言えます。
目標設定をしたうえで、本人のレベルに合わせた仕事量を考え、任せるとより効果的です。仕事量が多すぎても少なすぎてもよい結果にはなりません。また、部下に自分自身で目標を設定してもらうのも効果的です。
部下が相談しやすい関係性をつくる
部下が相談しやすい関係性をつくることも、部下のモチベーションを向上させる方法です。
部下が自分で対処できない事態が発生する、困っている時などに、上司に気軽に相談できる環境をつくります。また、上司は日ごろから部下の様子をよく見守ることも大切です。部下の様子をしっかり把握できていれば、必要なタイミングでアドバイスを送ることができます。
仕事ぶりを褒めてあげる
部下が仕事で結果を出した際には、褒めてあげると部下のモチベーションが上がります。
ただし、結果が出にくい仕事もあるということを考慮しておく必要があります。プロセスに対する評価も大切であり、また定性的な評価ではなく、定量的な評価をすると客観的な評価ができます。
会社が社員のモチベーションを向上させる方法
次に、会社が社員のモチベーションを向上させる方法について紹介します。
社員満足度を調査する
社員のモチベーションを高めるためには、社員の声を集める取り組みが有効です。社員の価値観が多様化している中、さまざまな企業で実施されています。社員のニーズや思っていることがわからなければ、効果的な施策を打てません。定期的に社員の声を収集することで、PDCAを回していくことが可能となります。
会社のビジョンや理念を浸透させる
会社が社員のモチベーションを向上させる方法の1つに、会社のビジョンや理念の浸透が挙げられます。会社のビジョンや理念浸透は、社員に対して、事業の方向性や行動方針における明確な判断基準を示すことにつながります。理念浸透を徹底することで、社員は迷わずに自社の理念に合った行動を取ることができ、やりがいや働く意義を見い出せるようになります。
ビジョンや理念を浸透させるためには、毎日の朝礼でビジョンを確認する、定期的に研修を実施するなどの手法が有効です。
職場環境を整備する
職場環境を整備することも、会社が社員のモチベーションを向上させる方法として有効です。具体的には、以下に挙げる方法などがおすすめです。
- 有給休暇が取得しやすい環境をつくる
- 長時間労働をしなくてすむ環境をつくる
- 福利厚生を充実させる など
社員モチベーション向上の取り組み事例
貴社の取り組みを検討するうえで、参考にしていただきたい社員モチベーション向上の取り組み事例を紹介します。
01「社員満足度を調査する」の事例
こちらは、株式会社ワークマン様の事例になります。
同社は、社員の本音がわからない、アンケートは実施できるが分析まで手が回らないといった課題から組織改革支援システム「WILL CANVAS」を導入しました。これにより、年に1回実施していたアンケートを、3か月に1回に変更しています。
この取り組みにより、社員のモチベーションを含む心の状態がより正確に把握できるようになりました。以前は面談においても本音を引き出すことが難しい状況でしたが、表面上の面談ではなく、社員がしっかりと相談できる場へと変わっています。
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02「会社のビジョンや理念を浸透させる」の事例
広告会社博報堂のクリエイティブエージェンシー「博報堂ケトル」様は、創業時から一貫して大切にしているコンセプトがあります。この経営陣が次の世代に引き継がれても変わらない会社の根幹をなすフィロソフィーを学ぶため、体験の場が必要だと考え、合宿を開催しました。
一般的な会社研修や合宿とは全く異なり、合宿中は仕事の話をまったくせず、普段、職場では考えないこと、触れない情報、やったことのないことを体験することで良質なインプットを一気に得ることが最大の目的です。
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03「職場環境を整備する」の事例
あるITシステム関連企業は、コロナ禍をきっかけに注目されるようになったワーケーションを導入しました。
仕事柄クリエイティブな社員が多い事から、非日常が感じられる場所でのワーケーションで、参加者は職場を離れてリフレッシュしながらメリハリをつけて業務に励むことができました。社員からは、「いつも以上に集中できた」「時間の使い方や仲間とのコミュニケーションのあり方について考えられた」などの声が寄せられています。
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まとめ
今回は、社員のモチベーション向上について、その重要性と方法について紹介しました。モチベーション向上のメリットとしては、生産性向上、企業イメージの向上、定着率の上昇が挙げられます。モチベーションを向上させるには、部下の特性にあった目標設定、相談しやすい関係性の構築、仕事ぶりの称賛が重要であり、また、会社としては社員満足度の調査、ビジョンや理念の浸透、職場環境の整備が有効とされています。モチベーションが下がる理由である待遇の不満、人間関係の問題、仕事内容への不満足を考慮することも大切です。実際の企業の取り組みも紹介しましたので、ぜひ参考にしていただければと思います。
人的資本経営に注目が集まる中、社員のモチベーション向上は、これからのキーポイントです。これを機会に、貴社にあった社員のモチベーション向上施策を検討してみてはいかがでしょうか?
最後に、社員のモチベーション向上施策の1つであるインセンティブに関するお役立ち資料を紹介します。社員のモチベーション向上への取り組みに課題感をお持ちの方は、ぜひご覧ください。