組織サーベイとは、組織の状態を測定するためのツールであり、従業員の仕事へのモチベーションや会社へのエンゲージメントを測定、可視化するものです。企業や部署の課題を解決するため、定期的に行われることが多く、昨今注目の「EVP(従業員価値提供)」という考え方にも関連しています。
本記事では、組織サーベイの概要や目的、成功させるポイントなどを紹介します。最後に事例、そしてサービス資料「WILL CANVAS」と、お役立ち資料「エンゲージメントを高め自走型組織に変革するためのサーベイ活用とは~組織開発のポイントとサーベイフィードバック~」を紹介しております。組織内のエンゲージメント向上に課題を感じている総務・人事などの担当者は、ぜひご覧ください。
INDEX
組織サーベイの概要
組織サーベイについて、概要や調査の種類などについて紹介します。組織サーベイを活用する際に重視したい「EVP」の考え方についても説明します。
組織サーベイとはどんなもの?
組織サーベイとは、組織の状況(従業員のモチベーションやエンゲージメントなど)の調査・診断と、診断結果の分析に基づく改善活動を指します。近年は、クラウドやAIを活用したサーベイツールが登場しています。
組織サーベイを実施する際は、目的をはっきりさせておかなければなりません。組織サーベイの目的ごとに、調査・診断の対象や項目の内容、実施頻度などが変わるためです。
組織サーベイが重要視されている理由
組織サーベイを重視する企業が増えた理由に、「人的資本の情報開示」があります。
世界的にも、「人材への投資は将来的な企業収益につながる」と言われており、人的資本の情報開示が各企業に求められています。高齢化社会で慢性的に人材不足になっている国内企業にとって、人材一人ひとりのパフォーマンスを十分に発揮させることが、企業の発展には欠かせません。
人材一人ひとりのパフォーマンスを発揮させるうえで、重要なのが「従業員の価値観」です。
社会的背景や雇用形態などの多様化により、従業員の価値観は多様化しています。人的資本を活用するためには、従業員の価値観に対する企業側による理解が必要です。加えて、部署間の仕事に対する認識の相違・組織のあるべき姿とのギャップを解消するためにも、組織サーベイによる課題の把握と働きやすい環境づくりが望まれます。
また、組織サーベイとともに注目を集めている考え方がEVPです。
「EVP」の考え方
EVP(Employee Value Proposition)とは、企業が従業員に対して提供する価値であり、従業員が共感できるその企業で働く価値(Employee Experience)のことで、企業から従業員に対して、どのような価値を提供できるのか?という視点に立ち、さまざまな施策を実施するという考え方です。
企業には、「この会社にいたい」「あの会社で働きたい」と思えるような魅力が求められます。EVPには、報酬、福利厚生、職場環境、休暇制度などが関係します。従業員が実感できる、その企業で働く価値を提供できると、企業価値の向上や優秀な人材の確保が可能になります。
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組織サーベイの主な種類
組織サーベイは、「パルスサーベイ」と「センサス」とに分けられます。どちらも従業員に対して行う調査ですが、2つの組織サーベイは、実施頻度と項目数が異なります。
パルスサーベイは1週間~1か月周期で行い、項目は10問程度と少なめです。パルスとは「脈拍」を意味する言葉で、パルスサーベイは脈拍をチェックするように短く簡単なアンケートを短いスパンで繰り返し実施します。
センサスは、パルスサーベイに対して頻度の低いサーベイで、半年~1年周期で行い、項目数は50~100問程度と多めです。多くの従業員を抱える組織でも、部署や役職などでセグメントし、多角的に従業員のエンゲージメントを測ることができるので、かつては主流でした。
しかし、拾い上げた結果を現場に反映するのにかなり時間がかかることから、近年ではパルスサーベイが注目されています。
組織サーベイと社内アンケートの違い
組織サーベイと似た施策に、社内アンケートが挙げられます。そもそも「サーベイ」とは、調査するという意味の英語です。組織サーベイの調査方法自体は社内アンケートと同じですが、組織サーベイの方は、実施内容が調査から分析、施策実行と広範囲に及びます。
組織サーベイの目的
組織サーベイの目的は、調査結果に基づく組織の改善です。ここでは、組織サーベイの目的の一例を紹介します。
組織サーベイの目的とは?
組織サーベイでは以下の内容を把握した上で、組織を改善するための手がかりとします。
- 従業員満足度やエンゲージメント
- 従業員のストレス度
- 企業理念や戦略の浸透度
これらの要素は、いずれも組織の生産性や離職率に影響を及ぼします。従業員満足度やエンゲージメントには、以下の要素が関係します。
- 企業理念
- 事業内容
- 仕事内容
- 同僚や上司との人間関係や職場風土
- 待遇や給料
また、組織編成や人材配置の効果検証・組織の課題明確化のためにも、組織サーベイが実施されます。
組織サーベイのメリットとは?
組織サーベイを実施すると得られる3つのメリットについて紹介します。
MERIT 01組織の目的達成に向けた現状を可視化できる
組織サーベイを実施すると、組織の状況や従業員のニーズについて、定量的なデータをもとに数値化できるため、現状を可視化するのに適しています。そして、目的に対して説得力のある施策が考えやすくなります。
MERIT 02組織全体の改善や従業員個々への対応も容易になる
組織サーベイには、組織改善や組織開発の課題を抽出できるメリットがあります。従業員から回答を得ることで、日頃見えにくい従業員の感情やニーズを把握でき、課題を解決するための対応がしやすくなります。
MERIT 03組織の生産性向上と離職率の低下が期待できる
組織サーベイの実施によって組織のマネジメント状態が可視化されるため、課題の特定や施策の効果測定にも役立ちます。組織改善をタイミングよくできれば、従業員の満足度向上、離職や休職の防止にもつながります。
組織サーベイのデメリットとは?
組織サーベイを運用すると、本業以外の業務が増えます。組織サーベイの実施者は、現状分析から設問設定、回答分析などに時間を取られます。また従業員が項目に回答する時間も必要です。組織サーベイの実施目的が明確でなければ、項目数による負荷が膨大であることから、従業員からの不満が出かねません。
組織サーベイを実施するためのポイント
組織サーベイを実施するには、いくつかのポイントを押さえることが大切です。ここでは、4つのポイントについて紹介します。
POINT 01目的を明確にする
組織サーベイは、従業員へ「なぜ実施するのか」「従業員や組織へのメリットは何か」など、実施する目的を明確にし、共有することが重要です。目的が不明確では、サーベイに対する意識が低下し、有用な回答を得にくくなり、従業員が真摯にサーベイに取り組むことが期待できなくなります。
POINT 02経営サイドの合意と従業員の理解を得てから実施する
組織サーベイを実施するには、経営サイドの合意と従業員の理解が必要です。組織を変えるには、経営サイドとのコミットが欠かせません。経営サイドには、組織診断ツールの導入に合意してもらいます。組織サーベイの実施で従業員が不安にならないためには、実施目的を丁寧に説明し、理解を得てから調査を実施します。
POINT 03調査頻度を決める
組織サーベイを実施する際は、担当者や従業員への負担を考えて、調査頻度を決めます。頻繁に設問数の多い調査を実施すると、双方に大きな負担がかかるため、注意が必要です。近年は、短期スパンで少ない設問を回答してもらう「パルスサーベイ」が人気です。調査頻度は目的に応じて決めますが、状況をみて変更することも検討しましょう。
POINT 04成功事例をつくる
組織サーベイでは、いきなり組織全体を改善しようとすると、成果が見えにくいといえます。
最初から組織全体を変えようとせず、部署を絞って成功事例を社内につくることが大切です。
特定の部署にて成功事例をつくっておくと、積極的に他の部署でも改善に取り組みやすくなります。
組織サーベイの実施方法
組織サーベイの実施方法を紹介します。まずは、現状分析により組織サーベイの目的を決めることが重要です。
組織サーベイの実施にあたって、まずは現状分析が大切です。例えばメンタル不調者が多い組織の場合、「メンタル不調者が多い理由は、上司のマネジメント力が不足しているのではないか」というように仮説を立てます。すると、組織サーベイの目的は「上司のマネジメント力を調査する」と示すことができます。
組織サーベイには費用がかかります。経営陣の理解を得るためには、費用対効果についての説明が大切です。分析した結果を施策に盛り込む際にも、経営陣の協力は欠かせません。さらに、企業のトップが組織サーベイを重視する姿勢を示せば、従業員の協力も得やすいと考えられます。
組織サーベイを実施する際は、費用を無駄にしないためにも、目的に合わせて対象者や頻度を決める必要があります。例えば、早期離職の防止の場合には、対象を若手の従業員に絞ると効果的です。
また、頻度が多いと回答に協力的な従業員が減ってしまいます。目的に応じて、組織サーベイの頻度を調整することも大切です。
目的に合わせて、課題解決のための調査項目を決定します。組織サーベイの回答側の負担を減らすためには、質問数をむやみに増やさないことがポイントです。
組織サーベイのツールはそれぞれ強みが異なるため、自社の組織サーベイの目的や調査範囲に沿ったものを選ぶ必要があります。施策実施まで至らなければ、組織サーベイを活用できたとは言えません。サポートが手厚いツールは、組織サーベイの運用がしやすいと考えられます。
料金形態も、ツールを選ぶポイントです。従業員1人あたりに費用がかかるツールもあれば、月額料金が設定されているツールもあります。また、予算に見合うツールであるかも確認が必要です。無料お試し期間が設定されていると検討に役立ちます。
組織サーベイを実施する際は、従業員への事前告知をします。告知の際には、組織サーベイの目的やメリットも合わせて伝えましょう。従業員が組織サーベイに対して否定的に受け止めると、正確に状況を把握できなくなってしまいます。従業員の協力を得るためには、組織サーベイの目的やメリットへの理解が必要です。
組織サーベイでは、一般的に、95%以上の回答率であれば、組織状態が反映されたデータを得られるとされています。一方、回答率が低ければ、組織状態を正確に把握できません。対象者が回答しやすいように、組織サーベイの実施方法自体を考える必要があります。
例えば、匿名制にすると従業員は本音を書きやすくなります。また、実施期間を長めに設定することで隙間時間に回答でき、従業員の負担を減らすことができます。
組織サーベイの回答を集計し、定量情報と定性情報を基に客観的に結果を分析します。当初の仮説が立証されたか、新しい示唆がないかなどが分析のポイントです。分析結果は組織内で共有しておきましょう。回答者にも理解してもらうことで、課題解決への取組みや次の組織サーベイでも協力が得られやすくなります。
組織診断ツールの選び方
組織サーベイを実施するにあたり、組織診断ツールの導入は欠かせません。ここでは、組織診断ツールの選び方について紹介します。
分析機能
組織診断ツールを選ぶ際には、自社の目的に合った分析機能があるかを確認しましょう。ただ調査を実施したり、アンケート結果を収集したりしただけでは、自社の問題や課題を把握できない場合もあります。分析機能があれば、収集したデータを解釈して、問題や課題について見抜きやすくなります。
組織への不安を分析する際にはテンプレートやクロス分析機能、上場を目指す際にはベンチマーク機能がおすすめです。
調査方法
組織診断ツールの調査方法には、概要で前述したとおり「センサス」と「パルスサーベイ」の2つの方法があります。組織診断ツールにより調査頻度が異なるため、組織の目的にあった頻度で調査できるツールを選ぶことが大切です。
アクション支援
問題や課題に対して、具体的なアクション支援をしてくれる組織診断ツールもあります。組織サーベイの分析後に問題や課題が可視化できても、改善施策の実施方法がわからなかったり、施策を実行できなかったりするケースが多くあります。分析データを活用したアクション支援があると、問題や課題に対して効果的な対応が可能となりきます。
使いやすさ
組織診断ツールは、従業員が使うシーンも多いため、使いやすさもツール選定の基準になります。画面が見やすく使いやすいツールは、従業員のストレスになりにくく、より正確な回答が得られやすいといえます。
利用料金
組織診断ツールの利用料金には、単発利用料や固定費用などがありますが、利用する機能や企業の規模により利用料金は異なります。ツールの機能や使いやすさなどを比較して、必要な機能やサポート体制を備えたツールを選ぶことが大切です。
組織サーベイを実施する際の注意点
組織サーベイを実施する際には、注意するべき点があります。ここでは、5つの注意点について紹介します。
過度な負担にならないよう配慮する
調査担当者は組織サーベイを導入するために準備や調査、分析などの作業に時間が掛かります。従業員と調査担当者の双方に負担がかからないツールを選ぶことが大切です。
調査をやりっぱなしにしない
組織サーベイでは、調査後に何かしらのアクションを起こす必要があります。ただし、従業員への調査結果は、全ての情報を公開する必要はなく、傾向やサマリーレベルの大まかなものでも構いません。調査後の情報公開については、調査前に改善計画や実行などを決めておくことをおすすめします。
組織サーベイを複数実施しない
調組織サーベイは、同時に複数実施すると、従業員の負担が大きくなります。また、各サーベイの違いが不明確だと、似た回答ばかりになる恐れもあり、組織サーベイの効果が期待できません。
調査結果のスコアが全てではない
調査結果は、回答の全てが従業員の本音とは限りません。従業員は、本当に思っていることよりも多少控えめに回答する傾向があります。調査結果をそのまま受け入れて、表面的な改善施策をすることは避けた方がよいといえます。
従業員の満足度だけを解決しようとしない
組織サーベイで従業員の満足度だけを解決しようとすると、不満解消だけに注力しがちになります。組織サーベイでは、満足度だけでなく自社への「期待度」も調査することが大切です。
万が一、調査結果で自社への満足度が低くなっても、従業員が不満を抱いている訳ではありません。
組織サーベイの実施・活用事例
組織サーベイを導入して、活用している企業は多々あります。ここでは、2つの企業の成功事例について紹介します。
01 株式会社ワークマン 様 面談で社員の本音が聞き出せる!?“意識調査”実施体験
ワークマン様は、もともと従業員の育成に力を入れている企業ですが、近年の業容拡大に伴い、従業員の気持ちを知った上で、より従業員教育に力を入れたいと考えています。しかし、今までの年1回の社内アンケートでは、従業員の本音がわからず、分析ができませんでした。
組織変革支援システム「WILL CANVAS」を導入後は、3か月に1回実施するようになります。それにより、従業員の悩みや仕事へのモチベーションなどが見え、本音が見えなかった面談が、しっかり相談できる職場へ変化しました。また、従業員のモチベーションの向上、コミュニケーションの活性化にもつながりました。
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- 面談で社員の本音が聞き出せる!?“意識調査”実施体験
02 株式会社フィッシングマックス 様 サーベイフィードバックで組織変革を加速!経営層と従業員の距離を縮めた成功事例を紹介
以前のフィッシングマックス様は残業が多く、従業員は個人で解決を図っていく風土がありました。従業員のモチベーションは低下し、会社の雰囲気は良くありませんでした。そこで、創立50周年記念パーティーをきっかけに、何か組織変革につながる取り組みをしたいと考えます。
組織変革支援システム「WILL CANVAS」を導入後は、自社が抱える課題が浮き彫りになります。また、従業員が自社に対してあまり良くない印象を持っているケースがあること判明しました。分析結果から従業員1人ひとりの言葉を受け止められたことで、改善プランを検討でき、現場ごとにPDCAを回せるようになりました。
まとめ
組織サーベイは、組織の状況や従業員のモチベーションなどを調査する手段です。組織サーベイの活用は、現状を可視化することで、改善点や課題の抽出に役立ち、対策を講ずることで生産性向上や離職率の低下などに有効です。実施にあたっては、従業員に過度な負担とならないよう配慮し、目的に合わせた運用方法やサービスの選定し理解や協力を得ることが重要です。
従業員エンゲージメントが高まれば、帰属意識や貢献意欲の向上・職場のコミュニケーションの活発化・他の従業員のモチベーションアップ・組織の活性化につながります。
自社において、従業員への企業理念の浸透度合やモチベーション低下など、人的資本経営に課題をお持ちの企業様は、組織サーベイを検討されてみてはいかがでしょうか。