インセンティブ制度をすでに導入していたり、導入について検討している企業も多いのではないでしょうか。インセンティブ制度を導入すると、社員のモチベーションを高めて目標にコミットさせやすくなります。この記事では、インセンティブ制度の種類やメリット・デメリットなどを解説します。導入手順や実際の事例についてもご紹介しますので、ぜひご覧ください。
INDEX
インセンティブ制度とは
インセンティブ制度とは、個人やチームの目標の達成度に応じて報酬などが得られる制度のことです。一定期間ごとに貰えたり、通常の給与や賞与に上乗せして貰えたりするケースもあります。企業によっては自社の業績に応じて全社員にボーナスを支払うケースもありますが、インセンティブ制度は、全社員に対して一律に支払われるものではありません。インセンティブ制度では、個人やチームの成果に応じてそれぞれ得られる報酬が異なります。なお、報酬は金銭だけではなく、旅行や休暇、ギフトなどさまざまなものがあります。
歩合制との違い
歩合制とは、成果が1件発生するたびに一定の報酬が得られる方式です。商談があと一歩のところで終了した場合、報酬は得られません。それに対してインセンティブは、目標の達成率を評価して報酬が支払われる方式です。成果は、ひと月や半期、年間など一定の期間ごとで評価されます。
ボーナスとの違い
ボーナスとは、企業の業績に応じて特別に支払われる報酬です。具体的な支給額は企業の業績によって変化します。一方、インセンティブは、企業の業績ではなくあくまでも個人や所属チームの目標の達成度に応じて支払われます。そのため、必ずしもすべての社員が対象になるわけではありません。目標の達成度が低ければ、インセンティブを得られない場合もあります。
インセンティブ制度の活用例を紹介
インセンティブ制度の報酬としては、どのようなものが考えられるのでしょうか。ここでは、具体的な活用例を紹介します。
賞与の変動幅
成果に基づいて決定した金額を通常の賞与に上乗せして支払うものです。この場合、インセンティブが支払われない社員も通常の賞与は受け取れるため、大きな不安や不満は発生しにくくなります。
ボーナス以外のタイミングで金銭を支給
給与や賞与の支払いとは分け、社員を評価したタイミングで個別にインセンティブを支払うものです。毎月の契約件数のように一定期間ごとに把握できる指標に基づいて支給すると、状況に即した評価が可能になります。
社内表彰
インセンティブの報奨を金銭にするのではなく、社内表彰として優績者を称えるのもひとつの方法です。表彰は心理的なインセンティブとなるため、社員のモチベーションを高める効果が期待できます。成果を出せば表彰されることが全社的に認知されれば、受賞者以外のやる気も刺激できます。数字として成果を把握しにくい研究開発職などの職種にも導入しやすいかたちです。
休暇・特別研修を支給
金銭以外の報酬としては、休暇や特別研修の支給なども挙げられます。たとえば、成果を出した社員に長期休暇を与えている企業もあります。社員は単に休暇を楽しむだけでなく、通常の休暇ではできないチャレンジも可能です。また、海外へ出向く特別研修の機会を与え、社員のさらなる成長を促す方法もあります。
昇格
インセンティブ制度の報酬として、成果を出した社員を昇格させるケースもあります。具体的には、成果を上げた社員をリーダーにするなど役職を変えたりします。自分の立場が変わると、社員は自分の成長を実感できたり、達成感を得られます。また他のメンバーにも刺激になります。
インセンティブ制度が適している職種とは
インセンティブ制度が適しているのは、目標の達成度を数値で把握しやすい職種です。具体的には、保険業や不動産業、自動車販売業などの営業職です。事前に成約件数の目標を定めておけば、一定期間が経過するたびに目標の達成度をチェックできます。
ただし、企業の業績アップに貢献しているのは営業職だけではないため、他の職種にもインセンティブ制度の適用は必要です。評価の指標を工夫すると、あらゆる職種にインセンティブ制度を導入できます。
インセンティブ制度を導入するメリット
インセンティブ制度には、さまざまなメリットがあります。ここでは、メリットについて具体的に解説します。
01自身の評価に対する納得度が上がる
インセンティブ制度を取り入れると評価基準が明確になり、社員は自分が正当に評価されているという意識を持ちやすくなります。その結果、業務に対するモチベーションの向上にもつながります。
02目標にコミットしやすい
インセンティブ制度では、どのような成果を出せば評価されるのかが明確になります。社員は自分の仕事に対する目標や目的を捉えやすくなり、それらを達成するために必要なプロセスも理解しやすくなります。結果として、業務の生産性向上も期待できます。
03社内で健全な競争が生まれやすい
インセンティブ制度があると社員の成果が可視化されるため、社内で健全な競争が生まれやすくなります。社員同士が切磋琢磨する環境が自然にでき、企業全体の業績アップにつながる可能性があります。
04目的意識をきちんと持つ人材が集まりやすい
インセンティブ制度が整備されていることをアピールしながら採用活動を行うと、それに魅力を感じる人材が多く集まります。目的意識のある人材を効率的に確保できるため、成果が出やすくなります。
05会社の考え方が浸透しやすい
インセンティブ制度を導入すると、自社が評価する人材のイメージを社員に伝えやすくなります。企業理念やビジョンが社内に浸透し、社員も企業が目指す姿を実現するために適切な努力ができるようになります。
インセンティブ制度を導入した場合のデメリット
一方で、インセンティブ制度を導入するとデメリットも発生します。具体的なデメリットについて以下で解説します。
01チームワークが低下する
インセンティブ制度の弊害として、社員が自分の成果のみにこだわるようになるということが挙げられます。その結果、同僚やチームのメンバーと協力しようとしない社員が出てくる可能性があります。
02目標達成が社員のプレッシャーになる
インセンティブ制度では目標の達成度がしっかりチェックされるため、それをプレッシャーに感じる社員がいるかもしれません。成果を達成しなければならないという意識が強くなりすぎると、モチベーションやパフォーマンスがかえって低下することもあります。
03長期的な視点で物事を考えられなくなる
インセンティブ制度においては、ひと月、四半期、半年などの比較的短いスパンで成果を評価する必要があります。長期的な視点で物事を考えにくくなるため、別の施策も組み合わせてフォローすることが大切です。
04評価指標に対して不満を持つ社員が出てくる
インセンティブ制度の基準があいまいであったり、対象者が一部の人であったりすると、社内で不満が発生します。多くの企業では評価が報酬に直結しているため、細心の注意を払って項目を設定する必要があります。
05給与が不安定・格差が生まれる
金銭的なインセンティブを与える場合、社員が受け取る報酬はその時々に応じて変化します。インセンティブ制度を導入すると、安定的に報酬を得たいと考えている社員が不安を感じる可能性があります。
インセンティブ制度の設計方法とは
インセンティブ制度はどのように設計すればいいのでしょうか。ここでは、具体的な設計方法を解説します。
インセンティブ制度の設計においては、最初に目的を設定します。目的がないと制度の効果検証が難しくなるためです。また、どの社員を対象とするのかについても明確にイメージしておく必要があります。
適切なインセンティブ制度を設けるためには、対象となる社員が感じていることを把握する必要があります。ヒアリングやアンケートなどの調査を実施し、社員が感じている課題や不満を確認することが重要です。
制度を適用する社員の職種や部署などの特徴を考慮し、それぞれに適した内容を検討します。全体的なイメージだけでなく、具体的な仕組みやかかるコストについても明確にする必要があります。
インセンティブ制度の全容が決まったら、制度の目的や内容などを社員に周知します。トライアルとして一時的に実施する場合は、具体的な期限についても明確に伝えることが大切です。
インセンティブ制度を導入したら、長期的な視点から経過観察を行い、適宜改善します。制度を適用している社員や自社の業績への影響についても確認する必要があります。なお、インセンティブ制度の効果測定ができるサービスの利用もおすすめです。
インセンティブ制度をうまく活用している企業の事例
多くの企業がインセンティブ制度を導入し、うまく活用しています。ここでは、具体的な事例を紹介します。
企業事例01承認文化を浸透させ、社員のモチベーションをアップ
人気アプリを提供している企業では、社員同士がチップを送り合って感謝の気持ちを伝える制度を導入しています。誰が誰へチップを送っているか社内で共有され、それを見ている他の社員も「拍手」を送れるようになっています。感謝の気持ちを可視化した結果、社員満足度の向上につながりました。
企業事例02営業成績に応じて給与が変動
幅広いサービスを提供しているある企業では、営業職に金銭的なインセンティブ制度を導入しています。目標を達成した際のインセンティブだけでなく、一定期間ごとの達成率に応じたインセンティブも用意されています。インセンティブ制度の導入をアピールし、意欲が高い人材が集まりやすくなっている点も大きな特徴です。
まとめ
今回はインセンティブ制度についてお届けしました。インセンティブ制度の導入は、会社や社員にとってさまざまなメリットをもたらします。金銭的なインセンティブを支払うだけでなく、休暇を与えたり、社内表彰を実施するのもインセンティブのひとつのかたちです。ただし、場合によってはチームワークやモチベーションの低下につながる恐れもあるため、慎重に制度を設計しなければなりません。インセンティブ制度は、自社の状況や社員の意見を参考にしながら導入することが大切です。また制度導入後も、社員へヒアリングやアンケートを実施し、より良い制度へ改善していくことが重要です。JTBでは、インセンティブ制度を効果的に導入するためのヒントとなる情報を幅広く提供しています。インセンティブ制度を導入し、企業全体の大きな成果へつなげるためにぜひ活用してください。