新型コロナウイルス感染症拡大により、企業を取り巻く環境は大きく変わりました。新入社員研修も例外ではありません。多くの企業で行われていますが、このコロナ禍で従来のような対面での研修が実施できず、オンラインで行った企業も多いのではないでしょうか。しかし、新入社員のモチベーション低下や企業とのエンゲージメントの低下など課題が顕在化し、新入社員研修のあり方について再検討する企業も出てきています。新入社員研修は、実施することでビジネスパーソンとしての基礎的な素養やマインドセット、業務に必要な知識・スキルを身に付けられるだけでなく、社内に溶け込みやすくなるなどさまざまなメリットがあります。本記事では新入社員研修を実施する目的や、研修内容を計画する際の流れを紹介します。実際に新入社員研修を行っている企業の事例もご紹介します。ぜひ、ご覧ください。
INDEX
新入社員研修の目的とは
新入社員研修は何のために行うのでしょうか。改めて新入社員研修の目的を抑えます。
新卒採用主に、社会人に必要なスキルを身に付けるため
新卒採用で入社してきた新入社員には、具体的な業務だけでなく、ビジネスマナーなどを身に付けてもらう必要があります。新入社員研修では社会人に必要なスキルが身に付くようなプログラムの他、採用された職種について広義的な技能を身に付ける研修を実施する場合もあります。
中途採用ビジョンの共有や、つながりを作るため
中途採用による新入社員は、ビジネスマナーがすでに身に付いていることから、具体的な業務の習得、自社の経営理念やビジョンの共有などを行うケースが一般的です。企業独自の内容が多く、企業内研修がほとんどです。
新入社員研修の主な内容を確認
新入社員研修で行われる主な内容は、以下のとおりです。
企業・業務について説明する
自社がどのような企業であるか、企業の理念や方向性について説明します。さらに社内の決まりなどもあわせて伝達しなければなりません。新入社員研修を通して、先輩社員と方向性を統一し、さらにモチベーションを高めます。
基本のマナーを覚えてもらう
新卒採用の新入社員研修では特に、基本のマナーを覚えてもらうことが大切です。基本のマナーとは、例えば言葉遣い、名刺交換、メールの書き方などです。オンライン業務に必要なスキルを身に付けるための研修を実施する企業も増えています。
コミュニケーションの取り方・チームワークを身に付けてもらう
新入社員にチームワークの重要性を伝えることもまた、新入社員研修の役割の1つです。また円滑なチームワークにはコミュニケーションの取り方が大切です。年齢、立場などが異なる人とのコミュニケーションの取り方といったことも研修のなかで教えていきます。
実践で必要なスキルを習得してもらう
例えばWord・Excelの操作方法、オフィスのファシリティなど、実践で必要なスキルを新入社員研修で習得します。パソコン関連の知識があるか否かは個人差が大きいため、新入社員の現状のレベルを把握しておくことが重要です。
新入社員研修には論理的な思考力、いわゆるロジカルシンキングを養うプログラムを入れることもあります。社員一人ひとりに論理的な思考力を身に付けてもらうことで、意思決定のスピードが上がり、全社的には生産性の向上につながるためです。
自社で新入社員研修に取り組むメリットとは
新入社員研修を外注するのも1つの手ですが、自社で取り組むことにはメリットがあります。
自社にノウハウが蓄積される
自社で新入社員研修を行うことで、人材育成のノウハウが得られます。育成側のスキルアップも期待できることが大きなメリットです。さらにPDCAサイクルをまわして改善を続けることで、より効果的な新入社員研修の実施が可能になります。
コストを抑えられる
自社で新入社員研修を行うと、他社へ外注するよりもコストがかからないケースが多いというメリットがあります。新入社員研修は研修委託会社などに依頼することもできますが、一般的に自社で独自に行うよりも高額になります。
自社で新入社員研修に取り組むデメリットとは
自社で新入社員研修に取り組むことには、デメリットも伴います。どのようなデメリットがあるかを紹介します。
指導者によって教え方が異なる場合がある
新入社員研修を毎年違う指導者が行う場合、指導者によって教え方が異なってしまう可能性があります。教え方が異なると、参加者全員に同じ知識・スキルを教えられるとは限りません。ここは研修のプロに委託することで問題を解消できる可能性があります。
担当者の負担が大きい
新入社員研修の担当者は、他にも仕事を抱えた状態で研修にも取り組まなければならないことが多く、大きな負担を抱えます。新入社員研修の準備・実施で工数がかかることが予想されるため、本来の業務が別にある場合は、おろそかになってしまう可能性があります。
新入社員研修を実施するまでの流れ
新入社員研修はどのようなプロセスで実施したら良いのでしょうか。新入社員研修実施までの流れを紹介します。
まず研修を受ける新入社員の現状把握に努めます。これは、能力のレベルによって最適な研修内容が異なるためです。中途採用の新入社員であれば、前職の内容も考慮します。同じ業界から転職してきた人であれば、すでに基礎知識は持っているでしょう。一方、新卒の新入社員や、異業種から転職してきた人は、基礎的な研修が必要です。いずれの場合も、新入社員のレベルによって、研修の目的・目標、内容を検討します。
目的や目標とは、新入社員研修が終わった時点で新人に身に付けておいてもらいたいスキルの内容です。最初に目的・目標を決めておくことで、企業の方針に則した新入社員研修にすることができます。こうした目標の内容は部署によっても違うため、一律の研修内容にすることは必ずしも難しいかもしれません。あらかじめ経営陣や現場の従業員などにヒアリングをして、新入社員に身に付けてほしいスキルを洗い出して目的・目標を設定するのがおすすめです。そのうえで、研修内容を検討していきます。
研修内容を洗い出すことができたら、内容に応じて適切な研修期間を検討します。新入社員のスキルアップに必要な期間の目安は新卒採用で3~6か月程度、中途採用では1~3か月程度です。これはあくまでも目安で、繁忙期や社内行事の時期を避けたり、繁忙期までに十分に実務スキルを高められるように時期を計算する必要があります。自社の年間スケジュール・繁忙期などを考慮して、最適な研修期間を設定してください。
新入社員に身に付けてほしい知識・スキルにあわせて、研修の手法を選択します。研修の具体的な手法については詳しく後述しますが、複数の手法を組み合わせて目的を達成できるよう工夫するのがおすすめです。また新入社員研修はある程度長期にわたるため、モチベーションを保ち、飽きさせない意味でも、バリエーションに富んだ手法が必要とされます。「どのようなスキルを身に付けてほしいか」という観点をベースに、新入社員に負担をかけすぎないようなカリキュラムを心掛けます。
新入社員研修で活用される実施形態を具体的に紹介
新入社員研修でよく採用されている研修方式には、以下のようなものがあります。
01ロールプレイ
ロールプレイは、実際の役割を参加者が演じることで、適切な行動を学べる実施形態です。接客業などでよく行われていますが、事務仕事でも電話対応などが必要になるため効果的な職種もあります。実務で必要とされる立ち振る舞いを体で覚えられるのがメリットです。
02グループワーク
参加者をグループ分けして実施する実施形態です。グループで課題を解決するケースがほとんどで、プレゼンテーションの実施などが一般的ですが、なかにはゲームを行うところもあります。グループワークは、参加者間でコミュニケーションをとるきっかけとなります。
03レクリエーション
レクリエーション研修は、野外研修などゲーム感覚で楽しめるものです。バーベキューやキャンプなどによって参加者間で団結力が生まれやすく、コミュニケーションが活発になります。また従業員それぞれの自主的な判断や自立も促すことができます。
04eラーニング
eラーニングは、インターネットを利用した学習形態です。パソコンに配信される動画の視聴やQ&Aなどを通して行う座学の一種で、対面の研修ではありませんが、それぞれの部署のパソコンで受講できるメリットもあります。新型コロナウイルスの影響で導入する企業が増加しました。
05OJT
OJTは「On-the-Job Training」の略で、「職場内研修」と訳されます。実際の業務を体験しながら、必要な知識・スキルを身に付ける方法です。現場での研修になるため大変実務的で、指導者側からすぐフィードバックをもらえるのもメリットです。
新入社員研修を成功させるために必要な注意点とは
新入社員研修は、新しい環境に対して強い緊張感を持つ新入社員を対象にするため、デリケートな一面があります。そこで、研修を成功に導くための注意点を紹介します。
業務の必要性までしっかり教える
新入社員は、ただ単に業務内容を教えるだけでは身に付かないことがあります。1つひとつの業務の意味・必要性を説明することで、理解が深まり、新入社員のモチベーションの維持にもつながります。自分の努力に意味があるという感覚を持ってもらうことが大切です。
改善点を伝える
新入社員研修ではさまざまな改善点が出てくるため、ミスを指摘するだけではなく、改善点を一緒に伝えるようにします。ミスの指摘だけでは新入社員を悩ませ、モチベーションを下げてしまう恐れがありますが、改善点を伝えることでミスを防止するための対策を考えることにつなげられます。新入社員に考えてもらう機会を与えることが大切です。
人事配置を想定する
新入社員研修後、新入社員はさまざまな部署に配属されますが、さらにその後の人事異動をイメージした、長期的な視野を持った新入社員研修もおすすめです。
将来的な人事配置を前提に新入社員研修の流れを検討します。またこの場合は新入社員にも、最終的に配置される予定の部署と、研修内容の関連性について伝えることが大切です。自分の受けている研修が何につながるかがイメージできると、内容の飲み込みが早くなります。
あらかじめ評価方法を明確にしておく
研修内容が新入社員の身に付いているか、研修の内容が効果的かを、あらかじめ決めた理解度テストや行動観察などの手法を用いて確認するのがおすすめです。新入社員の上司へのヒアリングも、効果がよくわかる方法です。
PDCAサイクルをまわす
収集したデータをもとに、新入社員研修の課題を洗い出し、PDCAサイクルをまわします。研修で教えたつもりだったけれど身に付いていなかったことは何か、社内研修と外部人材を招いて行う研修ではどちらが効果が高いかなど、さまざまな検証が必要です。
しっかり課題の洗い出しをしておくことで、より効果的な新入社員研修につなげることができます。
事例紹介(サミット株式会社 様)
スーパーマーケットチェーンを展開するサミット株式会社様は、毎年新入社員向けに3泊4日で「合宿研修」を行っていました。しかし、2020年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で通いでの研修に。かつ研修項目も座学のみとなり時間も短縮。内容も変更せざるを得ない状況となりました。例年実施しているチームで取り組む研修項目を実施できずに店舗へ配属されたことで、色々な課題を残す結果になりました。そこで、新入社員同士の繋がりの形成を軸に、チームで取り組める研修項目として取り入れたのが、チームスポーツである「ボッチャ」です。
「ボッチャ」は、パラスポーツの競技であるため、年齢・性別・経験等が関係なく、平等にできるところが魅力です。ご担当者様からは「常に変化する状況に対して、一人ひとりが考え、チームとして決断したことを行動に移すことで、『考えて行動する力』が身についたと思います。このことは、業務でも通じる部分が多くあり、また、多数の人と関わりながら仕事を進めていく上で、チームで一つの目標に向かい、連携(繋がり)を取りながら進めていくことは非常に重要だと考えます。」とのコメントをいただきました。
まとめ
新入社員研修は従業員として必要なスキルを身に付けながら、社のビジョンを共有し、従業員同士のつながりを作るために行われる大切な研修です。新入社員研修で効果を上げるためには、研修目的の明確化や研修内容の検討、また振り返りやPDCAが必要です。
とりわけ研修の内容は、新入社員研修の当初の目的を果たすものでなければなりません。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、効果的な手法の実現に迷う企業担当者様も多いのではないでしょうか。コロナ禍で人々の価値観も変化しました。これからは、受け手の変化を前提に、研修目的の達成のため、「対面」「オンライン」「ハイブリッド」を戦略的に選ぶ時代です。ぜひ、貴社でも効果的な研修について考えてみてはいかがでしょうか。
最後に、新入社員研修の取り組み事例をまとめた資料をご紹介します。コロナ禍における動向や、おすすめのプログラムなども掲載しています。ぜひ、ご覧ください。