かつては、リーダーが各メンバーに役割を与え指示を出すという一方向的なチームのあり方が一般的でした。しかし、グローバル化やIT化が進む中で人々の価値観・ニーズは多様化。それとともにビジネス環境も大きく変わってきています。特定のリーダーの力だけでは、多様化する顧客のニーズに対応しきれないほどビジネス環境は複雑化してきています。
このような状況に対応し、組織として高度な目標を達成するためには、各メンバー個々の能力・スキルの最大化とチームの連携が欠かせません。今回は、強いチームを実現するために重要となる「チームビルディング」という取り組みについて紹介していきます。
そもそも「チーム」とはどんなグループを指すのか?
チームビルディングを語るうえで欠かせない「チーム」について、まずは解説していきます。
「チーム」とは何か
「チーム」とは、「同じ目標・目的を達成するために、個々が自分の役割を全うしながらメンバー同士協力し合う組織・グループ」を指します。つまり、同じグループに所属していながらも異なる目標・目的を持って仕事をしている場合、それは「チーム」とは言えません。また、チームは「個々が自分の役割を全うする」という点も特徴です。
チームのポイントは「助け合い」と「個の発揮」
一般社団法人日本能率協会の調査によると、現在所属しているチームに満足している理由として「困ったときに互いに助け合うから」が39.6%、次いで「自分なりの創意工夫で仕事を進めることができるから」(27.2%)、「互いに情報を共有したり学びあったりしているから」(22.2%)となっています。
この結果から、ビジネスパーソンにとって、チームのあり方として助け合いが重視されているのはもちろん、チームの中で「個を発揮できるか(自分らしく仕事ができるか)」ということにも意義を感じている人が多いことがうかがえます。
一方で、チームに満足していない理由について見てみると、「困ったときにも互いに助け合うことがないから」(21.8%)、「互いに本音を話せないから」(21.3%)、「チームのビジョンや目標が共有されていないから」(16.9%)が上位になっています。
つまりビジネスパーソンがチームに求めているのは、同じ目標に向かって自分の力を発揮しながら助け合える環境。その環境こそがまさに「チーム」であり、チームビルディングが目指すゴールでもあるのです。
チームビルディングを導入すべき理由
ここからはチームビルディングがどういった取り組みなのか、そしてなぜ必要なのか紹介していきます。
チームビルディングとは? チームワークとの違いも解説
チームビルディングとは、「目標・目的を達成するために、個々が能力・スキルを最大化しながらメンバー同士協力し合うチーム」を構築するための取り組みのことです。似た言葉に「チームワーク」がありますが、それぞれの違いはどこにあるのでしょうか? ポイントは「『個』にもフォーカスしているかどうか」という点です。
「チームワーク」が目指すこと
- 関係性を築く・保つことを重視
- 一人では対応し切れない課題にチームで臨む
- メンバー同士が協力し合って目標・目的を達成する
「チームビルディング」が目指すこと
- 関係性はもちろん、個々の能力・スキルの最大化も重視
- 一人では対応し切れない課題に個を尊重したチームで臨む
- メンバー同士が協力し合って目標・目的を達成する
チームビルディングにはどんな効果があるのか
「チームビルディング」を実践することで、次のような効果が期待できます。
コミュニケーション活性化
コミュニケーションが活発になれば自然と本音で話せるようになり、信頼関係も生まれます。そうすればお互いにアドバイスし合える関係となり、多くのことを仲間から学ぶことができます。
モチベーションとパフォーマンスの向上
「チームで大きな目標を達成した」という経験は、個々の力を発揮しながらチームで一丸になることの重要性を実感する機会となります。チームへの想いもさらに強くなり、次の目標へのや挑戦意欲、仕事そのものへのモチベーションにもつながるでしょう。主体的に行動するようになれば、自然とパフォーマンスも向上していきます。
目標やビジョンの共有
チームビルディングでは「チームが同じ目標やビジョンを持つ」ことが重要です。目標やビジョンを共有することで全員が同じ方向を向くことができ、競争ではなく協力し合える環境にすることができるでしょう。
チームビルディングの取り組みを行うタイミング
ここでは、チームが発展していく5つの過程を示した「タックマンモデル」を紹介します。タックマンモデルは心理学者 タックマンが提唱したモデル理論で、結成から散会まで、チームがどういったプロセスを辿るのかを示しています。
チームビルディングの取り組みは、必ずしも形成期のみに行えばいいということではありません。機能期や散会期などで実施すれば、チームの団結力はさらに高まっていきます。
チーム結成当初の段階。まだチームの目標が具体的に決まっておらず、メンバーのこともしっかり把握できていない時期です。メンバー間では緊張感があり、遠慮がちに接する人が多いでしょう。
チーム目標が定まり、プロジェクトが始動した段階です。遠慮がちだったメンバー同士も、価値観の違いなどによって意見がぶつかったり、対立したりする時期でもあります。
メンバーの役割が定まり始めて、チームに一体感が芽生える時期です。混乱期を経て、各メンバーはお互いの価値観や考え方を理解し合い、チームは安定し始めます。
チームがパフォーマンスを発揮し、結果を出す段階です。その成功体験をチームで分かち合うことでさらに団結し、信頼関係もより強固なものになります。チームビルディングの取り組みを行うことで、チームはさらに活発になるでしょう。
プロジェクトが終わり、チームが散会する時期です。そして各メンバーは次のチーム(プロジェクト)へと移っていきます。この段階でイベントなどを実施すれば、精神的にも区切りをつけられるでしょう。
チームビルディングの手法と事例を紹介
実際にチームビルディングには、どういった手法があるのか、事例と共に紹介していきます。
チームビルディングの手法にはどんなものがあるのか
チームビルディングの手法としては、主に次の3つがあります。
手法01研修
研修として実施されるものとして「ワークショップ」「グループディスカッション」があります。ワークショップはチームで手を動かしながらコミュニケーションを取る形式の研修であり、グループディスカッションは主に対話形式の研修になります。
手法02アクティビティ
アクティビティは、チームの結束力を高めるためにスポーツや運動会を行うものです。内容はさまざまで、フットサルやマラソン、さらには登山など幅広く実施されています。新入社員全員で富士山登山をする企業もあります。
手法03交流イベント
職場以外でメンバーと交流することで、新たな一面を知ることもできるでしょう。親睦を深める機会として、社員旅行やバーベキューなどが行われています。コロナ禍においては、オンラインを活用した交流イベントが増えています。
導入企業の事例
事例を参考に、チームビルディングの取り組みについてもう少し詳しく見ていきましょう。
事例01オンライン交流イベント
毎年、国内で職場旅行を実施していましたが、コロナの影響で見送りとなったため、海外のオンライン観光を実施。コロナ禍で集まることが難しい中、オンラインで交流を図った事例です。参加者からは「旅先に行かなくともこのような形で、業務を忘れて旅行気分に浸れた」「コロナ禍で更に課題となっている“社員間のコミュニケーション活性化”にも繋げることができた」といった感想が寄せられました。
事例02ボウリング大会の実施
ある企業では、アクティビティとしてボウリング大会を実施しています。平日夜の開催にも関わらず、新設部署のメンバーが20名以上集まり交流を深めました。ストライクのたびにみんなで喜んだり、投げ方をアドバイスしたりと、一体感が生まれた大会となりました。
事例03海外への社員旅行
チームビルディングの一環として、ヨーロッパへの社員旅行を実施した企業もありました。旅行費はもちろん会社負担で、旅行中にもさまざまなイベントや景品を用意するなど、社員に喜んでもらうための工夫がなされています。その背景には、社員のモチベーション向上というチームビルディングの狙いがありました。
まとめ
コロナ禍で目まぐるしく変わるビジネス環境に対応するためには、「チーム」が不可欠です。同じ目標・目的を達成するために、個々が自分の役割を全うしながらメンバー同士が協力し合う組織・グループの実現には、チームビルディングの取り組みが効果的です。特に最近は、コロナ禍の影響からテレワークが推進され、メンバー同士のコミュニケーションが取りづらい状況です。このような課題を解決するのにもチームビルディングは有効です。
チームビルディングの方法は一つではありません。どの手法が所属するチームにマッチするのか、よく検討する必要があります。コロナ禍により、オンラインが主流になりつつありますが、チームビルディングには、オフラインのイベントが効果的です。時期が来れば、うまく活用したいところです。貴社でも、チームビルディングを導入し、強い「チーム」づくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。
最後に、ニューノーマル時代にも対応したチームビルディングプログラムをまとめた資料をご紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。