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企業・団体向け WEBマガジン「#Think Trunk」 アウトソーシングとは?見えないコストを減らし組織を最適化する方法

2025.12.26
HR(Human Resources)
業務効率・DX化

「優秀な人材が、日々の問い合わせ対応やデータ入力などの定型業務に追われてしまっている」
「キャンペーンのたびに、複数の業者との調整に忙殺され、本来の企画業務に集中できない」

このような悩みはありませんか。

人材不足やDX推進の必要性が高まる中、多くの企業がこうした「見えないコスト」によって成長の機会を逃しています。そのような中、これらの経営課題を解決し、企業変革を実現する戦略的な手法として注目されているのが「アウトソーシング」です。

本記事では、アウトソーシングの本質的な価値から、導入を成功させるための具体的なステップ、失敗しないパートナー選びのポイントまで、わかりやすく解説していきます。

目次を表示(編集禁止)

アウトソーシングが企業力を高める理由:コア業務に集中できる仕組み作り

まずは、アウトソーシングがなぜ今、多くの企業にとって重要な戦略となっているのか、その本質的な価値について見ていきましょう。

アウトソーシングの定義と日本市場の現状

アウトソーシングとは、文字通り「外部の資源を活用する」という意味で、企業が自社の業務プロセスの一部を、外部の専門組織に委託する経営手法のことです。単に人手を借りるのではなく、業務の進め方自体を専門家に見直してもらうイメージです。

国内のアウトソーシング市場は成長を続けています。人事・総務関連業務のアウトソーシングビジネスの調査レポートを出している矢野経済研究所によると、人材派遣なども含めた人事・総務関連業務のアウトソーシング市場規模は2023年度に11兆円を超え、今後も安定した成長が見込まれています。多くの企業が、経営戦略の一環として外部リソースの活用を本格化させている様子がうかがえます。

業務に潜む「見えないコスト」を可視化し、生産性を最大化

日々の業務の中には、複数業者との調整やトラブル対応などの「見えないコスト」が潜んでいます。例えば、キャンペーン実施時にWebシステム会社、印刷会社、景品発送代行など、複数のパートナーと個別に調整や管理を行うのは大変な手間がかかります。

こうした調整業務や突発対応に取られる時間は、実は企業の価値につながりにくい「見えないコスト」になりがちです。アウトソーシングは、こうした目に見えにくい業務負荷を専門家に一任することで、組織全体の生産性を高める効果が期待できます。

事業運営を根本から変える「オペレーティングモデル変革」

アウトソーシングは、単なるコスト削減策にとどまらず、企業全体の「オペレーティングモデル変革」を実現する強力な手段にもなります。非効率な業務プロセスや古い組織構造、バラバラなITシステムなどを、外部の知見を取り入れながら全体最適の視点で見直すきっかけになるためです。

業務のやり方を根本から再設計することで、市場の変化にも柔軟に対応できる、しなやかで俊敏な組織体制づくりにもつながっていきます。

なぜ今、アウトソーシングが注目されるの?3つの背景

続いて、なぜ今これほどまでにアウトソーシングが注目されているのか、日本企業を取り巻く3つの大きな環境変化からその背景を解説します。

要因1生産年齢人口の減少と深刻化する人材不足

日本の生産年齢人口(15~64歳)は減少傾向が続いており、総務省のデータによると、日本の生産年齢人口は2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)まで減少する見通しです。多くの企業にとって、人材の確保はますます難しい課題になっていくことが予想されます。

このような構造的な人材不足の中では、限られた貴重な社員リソースを、いかにして企業の競争力を生み出す「価値創造活動」に集中させられるかが、持続的な成長の分かれ目となります。

要因2DX推進とデジタルBPO市場の拡大

多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を掲げていますが、経済産業省の調査では、特に中小企業においてDX対応人材の不足が深刻な課題として挙げられています。

そこで注目されているのが、RPA(ロボットによる業務自動化)やAI(人工知能)といった最新技術を活用して業務効率化を図る「デジタルBPO」です。自社で専門人材を抱えなくても、外部の力を借りることでDXを加速させる動きが広がっています。

要因3万が一に備える「BCP(事業継続計画)」の必要性

近年、自然災害やパンデミックなどに備えるBCP(事業継続計画)の重要性が高まっています。中小企業庁もBCP策定を推進しており、その中で万が一の際の「代替策の用意」は重要なポイントです。

例えば、自社のオフィスが被災した場合でも、業務を委託しているパートナー企業が別の拠点で業務を継続できれば、事業が完全にストップする事態を防げます。アウトソーシングは、自社で複数の拠点を構えるよりも低コストで、事業のリスクを分散させる効果的な手段として注目されています。

アウトソーシングの主な種類とそれぞれの特徴

アウトソーシングにはいくつかの種類があります。自社の課題に合ったものを選ぶために、それぞれの特徴を理解しておきましょう。

BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)

BPOは、業務プロセスそのものをまとめて外部に委託する形態です。特に、経理・人事・総務などのバックオフィス業務はBPOの対象として選ばれることが多い領域です。単純な作業代行ではなく、業務の進め方全体を見直し、より効率的なプロセスを設計・運用してくれるのが特徴です。

特に近年、需要が急増しているのが「人事・総務領域」のBPOです。例えば採用活動の運営、内定式や研修といった式典・イベントの実施、社員教育の企画・運営などは、専門性が高い一方で準備工数がかかりやすい領域です。外部の知見と運営リソースを取り入れると、担当者の負担を大きく減らし、社員をコア業務に集中させやすくなります。

なおJTBでは、人事・総務まわりのアウトソーシングを検討する際に役立つ資料を用意しています。業務範囲の整理や効率化のヒントがまとめられていますので、ぜひご活用ください。

ITO(ITアウトソーシング)

ITOは、システム開発・運用・保守などIT関連業務を専門企業に委託する形態です。専門知識を持つ人材の確保が難しいIT領域において、広く活用されています。

最近ではクラウドサービスの普及に伴い、インフラの管理からアプリケーションの開発・保守まで、幅広い領域でITOが利用されています。自社で大規模なIT投資をすることなく、最新の技術やセキュリティ対策を取り入れられる点が魅力です。

KPO(ナレッジプロセスアウトソーシング)

KPOは、データ分析や市場調査、法務・知財管理といった、より高度な専門知識を要する業務を委託する形態です。「ナレッジ(知識)」のプロセスをアウトソースする、と考えると分かりやすいかもしれません。

例えば、AIを活用したビッグデータ解析や、専門的な市場動向の調査などを外部の専門家に任せることで、自社の意思決定の質を高めることにつながります。

業界特化型アウトソーシング

特定の業界や業種に特化した専門的なサービスもあります。例えば、医薬・製薬業界における国際学会の運営サポートや、金融業界のコンプライアンス業務などがこれにあたります。

こうしたサービスは、その業界固有の規制や専門用語、独特の商慣習などに精通していることが強みで、専門家による高品質なサポートが期待できます。

アウトソーシングと人材派遣・業務委託の違い

外部のリソースを活用する方法として、アウトソーシングの他に「人材派遣」や「業務委託」もあります。それぞれの違いを整理しておきましょう。

人材派遣との違い:指揮命令権と労働力提供

最も大きな違いは「指揮命令権」のありかです。人材派遣では指揮命令権がクライアント企業にあり、派遣スタッフに直接指示を出します。あくまで「労働力の提供」を受ける形です。

一方、アウトソーシングでは、指揮命令権が受託企業にあり、成果物の完成に責任を負います。人手不足の解消なら派遣、業務効率化ならアウトソーシングが適している傾向があります。

業務委託(委任/準委任)との違い

「業務委託」という言葉は広い意味で使われますが、法律的には「請負」と「委任/準委任」に分けられます。アウトソーシングで多い「請負」が「成果物の完成」を目的とするのに対し、「委任/準委任」は「業務の遂行」そのものを目的とします。

例えば、コンサルティングやシステムの運用保守のように、特定の行為を行うこと自体が契約内容となるのが準委任です。必ずしも「完成品」があるわけではない、という点でアウトソーシング(請負)とは異なります。

アウトソーシングがもたらす主なメリット

アウトソーシングをうまく活用することで、コスト削減以外にもさまざまなメリットが期待できます。ここでは、主なメリットを5つご紹介します。

本当に大切な「コア業務」に集中できる

アウトソーシングの最大のメリットは、貴重な経営資源をコア業務に集中させられることです。コア業務とは、製品開発や新規市場の開拓、ブランド構築といった、企業の競争力の源泉となる活動を指します。

定型的な業務や専門外の業務を外部に任せることで、社員がより付加価値の高い仕事に時間を使えるようになり、企業全体の成長スピードを高めることにつながります。

プロのノウハウで、業務の質が高まる

専門的な業務の品質を高めるには、通常、人材の採用や育成に多くの時間とコストがかかります。アウトソーシングを活用すれば、その分野のプロフェッショナルが持つ専門知識や、最適化された業務プロセスをすぐに導入できるのがメリットです。

また、パートナー企業は、多くの企業の事例から得たノウハウやベストプラクティス(最善の方法)を蓄積しています。これにより、自社単独で取り組むよりも早く、業務品質の向上が期待できるのもポイントです。

最新の技術やツールをすぐに活用できる

AIやRPA(業務自動化)、データアナリティクスなどの最新技術を自社で導入・運用し続けるのは大きな負担です。

専門のパートナー企業は、こうした最新技術への投資を積極的に行っている場合が多く、アウトソーシングを通じてその恩恵を受けることができます。自社で大きな投資をすることなく、データに基づいた効率的な業務運営(インテリジェント・オペレーション)が実現しやすくなります。

コストを「変動費化」し、経営体質を柔軟に

従業員の雇用やオフィスの維持、システムの保有には、売上に関わらず一定の「固定費」がかかります。アウトソーシングを利用すると、これらの費用を「サービス利用料」という「変動費」に変えられます。

これにより、損益分岐点を引き下げる効果が期待できるのがメリットです。市場の変動や事業の状況に合わせてサービスの利用量を見直すことで、環境変化に対応しやすい、柔軟な経営体質づくりに役立ちます。

万が一の備え(BCP)としても役立つ

アウトソーシングは、事業継続のリスクを分散させるうえでも効果的です。例えば、自社の拠点が地震や水害などの災害に見舞われた場合でも、別の地域にあるパートナー企業に業務を委託していれば、事業が完全に停止してしまう事態を防げます。

自社で物理的な代替拠点(バックアップオフィス)を確保・維持するのに比べて、はるかに低コストで事業の「止まらない仕組み」を確保できます。これにより、サプライチェーン全体の強靭性を高め、万が一の際にもビジネスを継続できる体制づくりに役立ちます。

知っておきたいアウトソーシングのリスクと対策

メリットの多いアウトソーシングですが、事前に知っておきたいリスクもあります。ここでは、主なリスクと、その対策について解説します。

情報漏洩のリスクがある

業務を外部に委託するということは、自社の機密情報やお客様の個人情報を外部の企業と共有することになります。そのため、情報漏洩のリスクには細心の注意を払わなければなりません。

対策として、パートナー候補の企業が「プライバシーマーク」や「ISMS認証」といった第三者認証を取得しているかを確認することが有効です。また、契約時にはSLA(サービス品質保証契約)をしっかり結び、定期的な監査を行うなど、管理体制を整えておくことも大切です。

社内にノウハウが残らなくなる

特定の業務を長期間アウトソーシングし続けると、その業務に関するノウハウや知見が社内に蓄積されにくくなる、という側面があります。いわゆる「社内ノウハウの空洞化」です。

これを防ぐためには、業務を「丸投げ」にするのではなく、パートナー企業と定期的にレビュー会議を開いたり、業務マニュアルを共同で管理・更新したりする仕組みがおすすめです。委託先と良好な関係を築き、知識を共有できる体制をつくりましょう。

業務がブラックボックス化する

業務を外部に任せると、社内から「今、どのような状況で業務が進んでいるのか」が見えにくくなる、「ブラックボックス化」のリスクがあります。

これに対応するには、具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的なレポーティングを義務付けることが有効です。最近では、業務の進捗状況をリアルタイムで確認できるダッシュボードを提供してくれるパートナー企業も増えており、むしろ内製時よりも業務が「見える化」されるケースもあります。

どのような業務を任せる?アウトソーシングする業務の見極め方

自社のどの業務をアウトソースし、どの業務を社内に残すのか、その「見極め方」を解説します。

「コア業務」か「ノンコア業務」かで見極める

まず、自社の「コア業務」と「ノンコア業務」を分類することから始めます。コア業務とは、他社には真似のできない、自社の競争力の源泉となっている活動のことです。

一方で、ノンコア業務は、企業活動に不可欠ではあるものの、それ自体が直接的な競争優位を生み出すわけではない、定型的・補助的な業務を指します。このノンコア業務が、アウトソーシングの主な候補となります。

「内製」と「外注」の効率で判断する

「自社で内製する(作る)か、外部から調達する(買う)か」を経済的な合理性で判断する考え方もあります。

一般的に、業務の専門性や特殊性がそれほど高くなく、かつ頻繁に発生する定型的な業務は、外部の専門企業に任せた方が効率がよくなる傾向があります。こうした業務はアウトソーシングに適しているといえます。

アウトソーシングに適した業務の具体例

続いて、実際にどのような業務がアウトソーシングに向いているのか、具体的な例を見ていきましょう。

経理・人事・総務などのバックオフィス業務

アウトソーシングの効果が出やすい代表的な領域が、経理・人事・総務といったバックオフィス業務です。例えば、給与計算や経費精算、社会保険の手続き、採用関連の事務作業などが挙げられます。

これらの業務は、多くの企業で共通している部分が多く「標準化」しやすいためです。専門企業に一括して任せることで、スケールメリットが働き、コスト削減や業務品質の向上につながりやすくなります。

カスタマーサポートや営業支援業務

お客様からの問い合わせに対応するコールセンター(コンタクトセンター)やヘルプデスク、営業担当者の事務作業をサポートする営業支援業務なども、アウトソーシングが活用される分野です。

専門企業の最新のCRMシステムや応対ノウハウを活用することで、顧客満足度の向上が期待できます。さらに、蓄積されたお客様の「声」を分析し、商品開発やサービス改善に活かすといった、新たな価値を生み出す拠点へと変えることも目指せます。

専門性が高いIT・マーケティング業務

IT領域やマーケティング領域も、アウトソーシングが効果的な分野です。システムの開発・運用保守や、Webサイトの運営、デジタル広告の運用、コンテンツ制作(記事作成や動画編集)などが含まれます。

これらの領域は技術革新のスピードが非常に速く、常に最新のトレンドを追い続けるのは大変です。外部の専門家の力を借りることで、自社のリソースだけでは難しい、専門性の高い施策を迅速に実行できます。

失敗しないパートナーの選び方

アウトソーシングの成功は、どのパートナー企業を選ぶかに大きく左右されます。ここでは、価格以外に注目したい5つの評価ポイントをご紹介します。

実績や専門性は十分か

まずは、自社の業界や事業規模と近い企業での実績が豊富かどうかを確認することがおすすめです。特に、過去に複雑なプロジェクトを成功させた経験があるかは、信頼できるパートナーかどうかを見極める良い指標になります。

Webサイトに掲載されている情報だけでなく、可能であれば具体的な事例や、その際にどのような成果が出たのかを詳しくヒアリングしてみるとよいでしょう。

窓口一つで幅広く任せられるか

複数の業務をバラバラの会社に委託すると、結局その管理や調整に手間がかかってしまいます。関連する業務を一つの窓口で一括して引き受けてくれる「ワンストップ対応」が可能かどうかは、大きな評価ポイントです。

単に作業を引き受けるだけでなく、業務プロセス全体を理解したうえで「こうした方がもっと効率的です」といった、業務設計の提案をしてくれるパートナーだと、より高い効果が期待できます。

セキュリティ体制は万全か

企業の重要な情報を預けることになるため、セキュリティ体制の確認は欠かせません。「プライバシーマーク」や「ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証」といった第三者認証を取得しているかは、客観的な判断基準になります。

それに加えて、具体的なデータ保護の方針や、万が一インシデント(事故)が発生した際の対応フローなどが、きちんと整備されているかどうかも確認しておくと安心です。

事業の変化に柔軟に対応できるか

企業は成長し、状況も変化していきます。将来的に事業が拡大した際や、逆に取り扱い量を減らしたい場合など、変化に応じてサービス内容や規模を柔軟に変更できるかどうかも見ておきたいポイントです。

契約内容が固定的すぎると、将来の事業展開の足かせになってしまうこともあります。長期的なパートナーシップを築くうえでは、こうした柔軟性や拡張性も大切です。

課題解決に寄り添ってくれるか

単なる「作業代行者」として指示されたことだけを行うのではなく、自社の課題を深く理解し、「一緒に解決していこう」という姿勢を持ってくれるパートナーが理想的です。

窓口となる担当者の方が、こちらの意図を汲み取って円滑にコミュニケーションを取れるか、問題が発生した際に積極的に解決策を提案してくれるか、といった「人」の部分も、成果を大きく左右する大切な要素です。

アウトソーシング導入の実践的7ステップ

実際にアウトソーシングを導入する際は、どのような流れで進めればよいのでしょうか。ここでは、導入を成功させるための実践的な7つのステップをご紹介します。

STEP01現状を「見える化」し、課題を明確にする

まずは、現状の業務プロセスを「見える化」することから始めます。どの業務にどれくらいの工数(時間)がかかっているのか、コスト構造はどうなっているのかを正確に把握しましょう。

特に、複数の業者との調整にかかる時間や、特定の担当者しかできない「属人化」している業務など、「見えないコスト」や潜在的なリスクを洗い出すことが、次のステップにつながります。

 

STEP02「何を任せるか」対象業務を決める

現状分析ができたら、STEP1で洗い出した業務の中から、どれをアウトソーシングの対象とするかを選定します。このとき、「コア業務か、ノンコア業務か」という視点で分類すると整理しやすくなります。

さらに、ノンコア業務の中でも、「緊急度」と「重要度」のマトリックスなどを使って優先順位をつけると効率的です。一度にすべてを委託するのではなく、どこから段階的に始めるかの計画を立てるのがおすすめです。

 

STEP03「やってほしいこと」をRFP(提案依頼書)にまとめる

委託する業務が決まったら、パートナー企業に「何をしてほしいのか」を伝えるための「要件定義」を行います。期待する成果や、委託したい業務の具体的な範囲、品質の基準、予算感などを明確に文書化しましょう。

この要件定義をまとめたものを「RFP(提案依頼書)」としてパートナー候補に提示します。ここでの内容が曖昧だと、後で「思っていたのと違った」というトラブルにつながりやすいため、丁寧に行うことが大切です。

 

STEP04評価基準を決め、パートナー候補を評価する

RFPに対してパートナー候補から提案を受けたら、それらを評価して委託先を選定します。このとき、価格だけで判断するのではなく、あらかじめ多面的な評価基準を設定しておくとよいでしょう。

例えば、「専門性」「過去の実績」「セキュリティ体制」「サポートの手厚さ」といった項目を設け、それぞれに点数をつけ比較する(スコアリングする)ことで、客観的かつ総合的な判断がしやすくなります。

 

STEP05品質のルール(SLA)を決めて契約する

委託するパートナーが決まったら、契約交渉に進みます。ここでは特に「SLA(サービス品質保証契約)」の内容を具体的に詰めていくことが大切です。

SLAでは、提供されるサービスの品質レベル(例:応答速度、処理件数など)や、報告の頻度、トラブル時の対応ルール、責任の範囲などを明確に定義します。ここでKPI(目標値)を合意しておくことで、運用開始後の継続的な品質向上が期待できます。

 

STEP06スムーズに引き継ぐための移行計画を立てる

契約が完了したら、いよいよ新体制への「移行」です。現在社内で行っている業務をパートナー企業へスムーズに引き継ぐために、詳細な移行スケジュールや手順を策定しましょう。

いきなりすべての業務を切り替えるのではなく、一定期間、現行の業務と新しい体制を並行して動かす「並行稼働期間」を設けるのが一般的です。これにより、リスクを最小限に抑えながら、段階的に新体制へ移行できます。

 

STEP07運用開始後も、継続的に改善していく

運用が始まったら「終わり」ではなく、ここからが本当のスタートです。委託した業務が計画通りに運用されているか、SLAで定めたKPIが達成されているかを定期的にモニタリングしていきましょう。

パートナー企業と定期的なレビュー会議の場を持ち、うまくいっている点や改善すべき点を共有し、継続的に最適化を図る「PDCAサイクル」を回していくことが、アウトソーシングを成功に導くポイントです。

アウトソーシング活用事例

実際の成功事例から学ぶことで、自社への適用イメージが明確になります。ここでは、実際の活用事例を紹介します。

01 日本空調システム株式会社 様福利厚生の旅行補助制度をオンライン化し、総務業務を効率化

日本空調システム株式会社様では、家族旅行補助制度の申込・予約・精算を総務が個別処理しており、繁忙期にはFAX申請の集中や問い合わせ増加で業務負荷が限界に達していました。コロナ禍で利用希望が急増したことも重なり、担当者への負担と属人化が深刻化していました。

そこで、利用者自身がオンラインで予約し補助も自動適用される仕組みに刷新し、申込~利用管理までをアウトソーシング。手作業の照合・精算が大幅に削減され、総務の負担が一気に軽減。データで利用状況を把握できるようになり、制度運用の質向上にもつながりました。

02 公益社団法人 日本小児科学会 様BPO導入で専門資格審査の負担を軽減

公益社団法人 日本小児科学会様では、小児科専門医の資格認定更新に関わる大量の審査業務が事務局を圧迫していました。旧委託先が紙ベースで対応していたため全体像が把握しづらく、さらに委託先の廃業により、新たな受け皿の確保とスムーズな引継ぎが喫緊の課題となっていました。

そのため、案内送付・書類受付・データ入力・不備連絡などの一連の業務をBPOとして委託。業務の可視化と整理を進めながら段階的に運用を改善し、負荷の大幅な軽減に成功しました。現在はWeb移行を見据えた5カ年計画が進行中で、安定運用と継続的な効率化が期待されています。

03 株式会社島津製作所 様大規模インバウンド表彰式の業務を一括アウトソースし、事務局負荷を大幅削減

島津製作所様では、在職25年社員を対象にした大規模インバウンド表彰式の運営において、宿泊手配・出欠管理・多言語対応・観光企画など多岐にわたる業務が総務に集中していました。特に、延期されていた3年分の対象者を一度に招く必要があり、情報集約や海外拠点との調整が属人化していた点が大きな負担となっていました。

そこで、参加者管理から運営・現地対応までの業務をアウトソーシングし、英語対応のWebエントリーシステム「AMARYS」で情報を一元管理。出欠確認や突合作業が効率化され、海外とのやり取りもスムーズに。結果として、事務局工数が大幅に削減され、参加者満足度の高い運営と業務効率化が同時に実現しました。

よくある質問(FAQ)

最後に、アウトソーシングの導入を検討されるお客様からよく寄せられるご質問と、その回答をまとめました。

Q1アウトソーシングの費用対効果はどう判断すべきですか?

単純に「内製した場合の人件費」と「委託費用」を比較するだけでは、正確な判断は難しいかもしれません。注目したいのは、これまでにも触れてきた「見えないコスト」の削減効果です。

例えば、管理業務にかけていた時間、業務品質の向上による手戻りの削減、そして何より、社員がコア業務に集中できるようになったことによる「機会損失の回避」など、数字にしにくい部分も含めて総合的に判断するのがおすすめです。

Q2セキュリティリスクへの対応はどうすればよいですか?

パートナーを選定する際に、ISMS認証やプライバシーマークといった第三者認証を取得しているかを確認するのが第一歩です。そのうえで、契約時にデータの取り扱いに関するルールを厳格に定めます。

さらに、データの暗号化やアクセス制限といった技術的な対策、入退室管理などの物理的な対策がどのようになっているかを確認し、定期的に監査を実施する体制を整えておくと、より安心です。

Q3将来的に内製化に戻すことは可能ですか?

将来的に内製化に戻すこともできます。ただし、その可能性が少しでもある場合は、あらかじめ準備をしておくことがスムーズです。

例えば、契約を結ぶ際に、将来的な知識移転(ノウハウの引き継ぎ)に関する条項を盛り込んでおくことが考えられます。また、日頃から業務マニュアルやプロセスに関する文書をパートナー企業と共同で管理・更新しておく体制も有効です。

Q4パートナーとの関係性はどう構築すべきですか?

単なる「発注者」と「受注者」という関係性よりも、企業の課題を共有し、共に解決を目指す「パートナー」としての関係性を築くことが、成功の秘訣です。

定期的に戦略レベルでの会議の場を持ったり、日々の業務改善の提案を積極的に共有したりすることがおすすめです。お互いの成功体験を分かち合いながら、Win-Winの関係を目指せると理想的です。

まとめ

アウトソーシングは、単なる業務の外注ではなく、人材不足やDX推進といった現代の経営課題に対応し、企業が成長を続けるための戦略的な手法です。

これまで目に見えにくかった「見えないコスト」を削減し、外部の専門性や最新技術を取り入れることで、組織全体の運営の仕組み(オペレーティングモデル)を変革する力を持っています。

成功の鍵は、自社が本当に集中すべき「コア業務」を見極め、信頼できるパートナーを選び、導入後も継続的に改善のサイクルを回していくことです。JTBでは人事や総務、採用のアウトソーシングを承っています。業務内容やコスト、難易度を「見える化」するところからサポートいたしますので、まずは気軽にお問い合わせください。

本記事に関するお問い合わせ、ご相談、ご不明点などお気軽にお問い合わせください。

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