テレワークやハイブリッドワークが一般化し、働き方が多様化する一方で、「部下との意思疎通が難しい」「部署間の連携がうまくいかない」といった悩みを抱えていませんか? オンライン中心のやり取りでは、些細なニュアンスが伝わらず、社員がテレワークでの孤独感を深めるケースも少なくありません。このような社内コミュニケーションの課題は、放置すると生産性の低下や離職にも繋がりかねない重要な問題です。
この記事では、社内コミュニケーションを活性化させる重要性から、明日から試せる具体的なアイデア、各社の成功事例までを網羅的に解説します。

INDEX
社内コミュニケーションとは
社内コミュニケーションは、組織内のメンバー間で情報や意見を交換し、コミュニケーションを図ることを指します。組織内のコミュニケーションが円滑に行われることは、チーム内での理解を得やすく、意思決定スピードの向上にも必要不可欠なものです。
社員同士の情報交換や日々の情報共有などもこれに含まれますが、打合せやメールなどの業務上のやり取りばかりではなく、何気ない雑談や社員同士のランチなども社内コミュニケーションのうちの一つといえます。
社内コミュニケーションの課題
現代の企業において、社内コミュニケーションの重要性は認識こそされてはいるものの、実際には多くの課題が残されているのが現状です。
調査によると、7割以上の企業が「自社の社内コミュニケーションに課題がある」と回答しており、9割以上が「コミュニケーション不足が業務の障害になっている」と認識しています。社内コミュニケーションの不足が業務にどのような影響を与えているのか、具体的には、以下の例が挙げられます。
情報伝達の遅れと誤解
情報の伝達が遅れると業務が遅延し、誤った情報伝達がトラブルを引き起こすことがあります。コミュニケーション不足は意思決定過程における情報共有不足を招き、誤った判断につながる可能性があります。
部門間のコミュニケーション不足
特に課題が大きいとされているのは、「経営層と社員」「部門間」でのコミュニケーションです。経営層と社員間では、情報格差や意思疎通の不足が問題になることがあります。これらは、部門間での互いの業務内容や目標の違いからくる認識のズレなどが起こることが一因とされています。
オンライン化による雑談の減少
テレワークの導入により、業務に直結する内容のみのコミュニケーションが主となり、雑談などの機会が減少しています。このため、社員同士の理解が深まらず、チームの結束力が弱まる可能性があります。
このような課題を解決し、円滑な社内コミュニケーションを実現するためには、組織全体で、情報共有の仕組みや意思疎通を重んじる風土づくりが必要となります。
また、経営層と社員、部門間の隔たりを埋めるために、定期的なミーティングや報告の仕組みを整えることも大切です。これにより、企業全体が一体となって業務を進めることができ、業務効率の向上につながるでしょう。
社内コミュニケーションが不足する原因
多くの企業で問題となっている社内コミュニケーション不足。その代表的な要因を、いくつか紹介します。
- テレワークなどの導入により、雑談の機会が減少
- 情報の共有が不十分
- 異なる部署間でのコミュニケーション習慣の欠如、上下関係が強く意見が言いづらい環境・職場風土
これらの状況には、何らかの改善施策を打つことが重要です。
テレワークを導入している会社では、情報共有のために定期的なミーティングを設定し、オンラインでの情報共有ツールの活用等、すぐにできる施策を挙げています。また、コロナ禍以前の日常を取り戻しつつある今、あえて、部署間の交流を促すオフラインのイベントなどを設けることで、異なる部署間のコミュニケーション構築も可能です。
これらの施策は、上下関係の問題に対しても有効です。フラットな組織を目指し、意見が言いやすい雰囲気をつくることが求められます。 社内コミュニケーションを改善することで、企業の生産性や業績向上につながることでしょう。
社内コミュニケーションの重要性
社内コミュニケーションの活性化は、単なる「仲良し組織」を作ることが目的ではありません。従業員エンゲージメントや生産性の向上、ひいては企業全体の成長に直結する重要な経営課題です。この関係性は「サービス・プロフィット・チェーン」という経営理論でも示されており、「従業員満足度の向上 → 企業の提供価値向上 → 顧客満足度の向上 → 企業の利益向上 → 従業員への還元」という好循環を生み出す起点が、良好な社内コミュニケーションにあるとされています。具体的には、以下のようなメリットが期待できます。
MERIT01エンゲージメントと生産性の向上
- 社員が安心して発言・挑戦できる「心理的安全性」が確保され、エンゲージメントが高まる。
- 活発な情報共有により業務効率が上がり、組織全体の生産性が向上する。
- 多様な意見が交わされることで、新たなアイデアやイノベーションが生まれやすくなる。
MERIT02離職率の低下による人材定着
- 上司と部下のコミュニケーションが円滑になり、部下の悩みや不満を早期に把握・解決できる。
- 人間関係のストレスが軽減され、働きがいを感じやすくなることで離職率が低下する。
- 組織への帰属意識が高まり、優秀な人材の定着に繋がる。
MERIT03迅速な課題解決と顧客満足度の向上
- 部署の垣根を越えた連携がスムーズになり、トラブル発生時にも迅速に協力して対応できる。
- 社員一人ひとりのスキルやモチベーション向上は、結果として顧客へのサービス品質向上に繋がり、顧客満足度を高める。
社内コミュニケーション事例アイデア【制度編】
会社側が制度を設けることで、社内コミュニケーションが活発化します。そのいくつかのアイデアを紹介します。

事例 01社内イベントの開催
社内コミュニケーションの活性化には、社内イベントの開催など、物理的な環境づくりが有効です。定期的に社内で様々なイベントを企画し、社員同士の交流を促します。例えば、ランチ会やボランティア活動、スポーツ大会などがあります。これにより、社員同士が親睦を深め、コミュニケーションの機会が広がります。
事例 02社内報
大きな企業だと、自分の部署やチーム内のことしか知らないという人が多く、部署をまたいだコミュニケーションが取りづらい状況があります。他部署のことを知るためには、社内報がおすすめです。さまざまな部署を特集し、お互いの仕事を知る機会をつくります。社内報は紙で発行するものだけではなく、WebマガジンやSNS、動画配信などの形式もあります。
事例 03社内部活・サークル
部活やサークルなども、社内コミュニケーションの活発化におすすめの制度です。社内の共通の趣味を持った人々が集まることができるため、コミュニケーションのハードルがぐっと下がります。特に運動系、アウトドア系の部活では体を動かすことができるため、メンタルヘルスにも役立つといった側面も期待できそうです。制度を導入している企業では、規定を設けて活動費の一部を会社が負担するケースもあります。
事例 04シャッフルランチ
社内コミュニケーションの活性化に有効なものとして、シャッフルランチがあります。シャッフルランチとは、普段コミュニケーションをあまり取らない他部署や違う役職の人でグループをつくり、ランチをすることです。オンラインで行うのであれば、企業がそれぞれの自宅に食事を届けるようにしています。
事例 051on1ミーティング
1on1ミーティングとは、基本的に上司と部下が1対1の2人だけでミーティングを行うことです。部下の悩みをヒアリングしつつ、業績を褒め、フィードバックを行います。ここでは「部下の話を聞く」という点が非常に重要です。ただし、2人だけで行うという性質から、パワハラやセクハラにならないような細心の注意が必要です。そのため、1on1を行う際には、まずは上司の研修から始めましょう。
事例 06全社員出社日の設定
特にテレワークを導入している会社におすすめの制度です。自宅で仕事ができるワークライフバランスの確保をしつつ、出社することでコミュニケーションを促すことができるため、社員に負担をかけないバランスのいい制度だといえます。
社内コミュニケーション事例アイデア【環境編】
事例 07テレワークにおけるコミュニケーションの工夫
テレワークが主な企業は、コミュニケーションツールの充実化を図りましょう。便利で気軽に使えるチャットツールやグループウェアを採用すれば、テレワーク中でも気軽にコミュニケーションが取れます。出社と比べたテレワークの大きな違いは、コミュニケーションが業務に直結するものだけになりがちだということ。気兼ねないコミュニケーションの機会が少なくなることにストレスや孤独感を抱える人も多いのではないでしょうか。
事例 08バーチャルオフィスの導入
最近ではバーチャルオフィスを導入する企業もあり、サービスも多種多様になっています。なかにはゲームのような操作画面で、自分自身のアバターを自由に着替えさせることができたり、使うのが楽しくなるようなツールも数多く存在しています。
事例 09運動習慣のためのアプリ導入
テレワークが中心となると、家にこもりがちで健康によくありません。そこで、おすすめなものは運動習慣化アプリの導入です。ストレッチやエクササイズの方法を配信するアプリを使用し、運動状況を社員で共有します。同僚や上司と一緒に運動に取り組むことで、ほかの従業員に対して親近感が湧くため、運動を通じた社内コミュニケーションが可能です。前述した社内サークルや部活などといった制度とも相性がいいです。
事例 10社内SNS
社内SNSとは、社員だけで運用される発信型のメディアのことを指します。社内報よりももっと身近な内容を発信するのに適しており、仕事関連の出来事や社内サークル、イベントなどをアップするといった効果があります。
事例 11フリーアドレス
座席を指定せず、毎回自由な場所に着席するフリーアドレスは、その都度、隣に座る人が変わります。異なる部署の人々と自然に会話を始めるきっかけを作ります。
ただ、フリーアドレスを導入しても、つい毎日同じ席に座りがちです。そこで、ダーツやくじなどで本当に毎回席が変わるように工夫し、社内コミュニケーションをより活性化しています。
事例 12社内バー
社内にバーを設置し、従業員が無料でお酒を楽しめるようにした企業もあります。もちろん日中の業務時間はお酒を飲めないようにし、業務終了時間を過ぎたら誰でもバーで飲酒できるというルールです。気軽にお酒を飲みに行けるようになり、多くの人とコミュニケーションできるようになりました。
事例 13休憩スペースの充実
とある企業では、休憩スペースに卓球台を設置し、休憩スペースを充実させました。卓球が会話のきっかけとなったり、勝負を通じて仲を深めたり、とさまざまな場面で活躍します。気軽に運動できるようにもなるため、従業員の健康もよくなります。

社内コミュニケーション活性化の事例
さまざまな企業の社内コミュニケーション活性化の事例を紹介します。
01 フォルシア株式会社 様 「7つの習慣®Outdoor」で営業部署の雰囲気が目に見えて変わった!そして参加意欲が全社員に波及!
- 企業概要
- フォルシア株式会社様は、検索テクノロジーを基にしたシステム開発・サービス提供および、コンサルティングを行っています。
- 抱えていた課題
- 営業社員同士の人間関係・協力体制が希薄になっており、関係性の強化を望まれていました。研修の意欲が薄く、研修後の効果の継続や習慣が難しいとのことでした。
- 支援内容
- 組織の関係性強化のために、営業部署全体で非日常を味わうことのできるアウトドアでのアクティビティがある「7つの習慣®Outdoor」というプログラムを実施しました。
- 得られた成果
- 行きの列車では、参加メンバー同士の会話はほぼなかったと言います。しかし、1泊2日の研修を終えた帰りの特急列車ではボックスシートで会話が弾み、別れ際には元気に挨拶をしあうなど、目に見えて関係性が変化しました。
悩まれていた習慣化に関しても、一般的に空気が重くなりがちな月曜の朝一番に、会議室に集合し、仕事の話ではなく週末何をしたかを話す、というシンプルな形にして、現在も継続中とのことです。
02 株式会社マイト 様 団体旅行にぴったり?!グランピングで安全にオリジナルなくつろぎ空間。
- 企業概要
- 株式会社マイト様は、東京都北区を拠点に通信事業、不動産事業、飲食・SNS事業を展開している会社です。
- 抱えていた課題
- 社員同士のコミュニケーションの場として会社としても大切にしてきた社員旅行。新型コロナウイルス感染症が流行した2020年にも、社員の安全を第一に対策をしたうえで、社員同士の交流の場を提供したいと考えました。またこの機会で、コミュニケーションの活性化や、非日常空間でリフレッシュしてもらいモチベーションアップにつなげることも目標にされていました。
- 支援内容
- ニューノーマル時代にあった新しいスタイルの社員旅行の実施を検討したい、とのご相談をいただき、社長のイメージにもぴったり合ったグランピングをご提案しました。
- 得られた成果
- いつもと違う場所で、リフレッシュしながら社員同士のコミュニケーション活性化を図る目的で開催された社員旅行。1泊2日の旅の中で、醸造所の見学やBBQなどのグループで楽しむイベントが多く組み込まれました。
グランピングでの宿泊だったため、旅館やホテルなどのような細かなサービスはありませんでしたが、アレンジを効かせられたことがメリットだったようです。
社員が自主的に動きながら自然とコミュニケーションを取れる雰囲気が作られ、実施後のアンケートでは参加者の90%が仲間とのコミュニケーションの大切さを実感しているという結果になりました。
悩まれていた習慣化に関しても、一般的に空気が重くなりがちな月曜の朝一番に、会議室に集合し、仕事の話ではなく週末何をしたかを話す、というシンプルな形にして、現在も継続中とのことです。
03 株式会社アクアリング 様 旅先でも「仕事を止めない」ワーケーションの実現!
- 企業概要
- 名古屋に本社を置く株式会社アクアリング様は、大手企業を中心にウェブサイトの構築・運用やデザインコンサルなどを行っている会社です。
- 抱えていた課題
- 毎年社員旅行を実施していた株式会社アクアリング様ですが、家庭環境や業務の都合等で参加できない社員が増えているという実情もありました。
参加できない社員との公平性の観点から、旅行先でも仕事をできるような実施方法に社員旅行を見直したいと考えていました。 - 支援内容
- 仕事を止めることなく、空いた時間で非日常を味わえることを期待して、ワーケーション形式での社員旅行となりました。行き先は、地域での移動手段に困ることなく、業務時間外に楽しむことができる理想的な環境であることから、サイクリストの街としても知られる広島県尾道市となりました。
- 得られた成果
- 滞在中には尾道の課題解決を学ぶ機会が設けられ、学びと業務の両立ができる内容に。日中は業務に集中、その他の時間を観光にあてました。社員同士がお互いの違った一面を見つけて、コミュニケーションが自然と活発になった、という声も聞かれました。
ワーケーションの実施により、業務の生産性は一定に保ちつつも参加者はリフレッシュでき、創造性や生産性の向上へとつながりました。
04 ブリヂストン彦根工場 様従業員たちは「新しい学び」を求めていた。ブリヂストン彦根工場の人事担当者が描く、新たな社員研修のかたち。~一人ひとりの習慣を変え、組織のカルチャーを変える~
- 企業概要
- ブリヂストン彦根工場様では、乗用車用タイヤを製造しています。この工場では、およそ1500名にのぼる社員のみなさんが働いています。
- 抱えていた課題
- 2022年より、「Culture Change」と題して全社的に進められている改革に基づいて、それまでに行われてきた研修なども大幅に見直されており、定点観測の指標として「エンゲージメントサーベイ」や「ストレスチェック」が定期的に行われています。
調査結果に注目すると、特にコロナ禍を経てエンゲージメントが低い社員が多くなっており、「学ぶ機会が少ない」と感じている割合が多いことに気づき、「新たな学びを、彼らが実感できる形で提供できるような研修が必要だ」と感じたそうです。 - 支援内容
- 現場で働いているメンバーやその上司の方でプロジェクトチームを発足して、どのような学びを提供すべきか徹底的に議論を重ね、学びの成果を可視化しやすく、人財育成の指標に取り入れやすい体験型の「7つの習慣ⓇOutdoor」を導入しました。
- 得られた成果
- 手始めに基幹職・リーダー職のみなさんが研修を体験した結果、「7つの習慣」という共通項のもと話せるようになり、部門や職階をこえたコミュニケーションが柔軟かつ円滑になったと感じるようになったそうです。
05 フエニックス・コンタクト株式会社 様 全社で「脱炭素」に挑戦!“サステナビリティ”と“コネクション”をテーマに100周年プロジェクトを実施
- 企業概要
- フエニックス・コンタクト様は、ドイツに本社を置く、産業用の接続機器やネットワーク機器の製造販売を行う会社です。
- 抱えていた課題
- 2023年にドイツ本社設立100周年、日本法人設立35周年を迎え、日本法人では「サステナビリティ」と「コネクション」をテーマに、周年事業プロジェクトを実施することに。
しかしこれらの取り組みの経験がなく、実施方法やゴール設定がわからないことを課題に感じていたそうです。また同時に、周年イベントを通して、社員一人ひとりにフエニックス・コンタクトで働いていることを誇りに感じてもらいたいという思いもありました。 - 支援内容
- 「サステナビリティ」の中でもSDGsのゴール13・気候変動への対策に関連づけて「脱炭素」の実践を絡めたオリジナルの研修を実施しました。
- 得られた成果
- 「脱炭素」とはなんなのか?を学ぶセミナーに始まり、脱炭素を目指して活動している農業・漁業関係者と直接関わる体験、自分ごとにするためのグループ発表までを数ヶ月にわたり行いました。
その結果担当者の方は、「社員の機運が高まり、次世代へとつなげるベースが出来てきた。」と感じたそうです。社員同士で同じ課題に向き合うことで、もう一つのテーマである「コネクション」を体現することもできたようです。
まとめ
働き方の多様化は、私たちに柔軟性をもたらす一方で、テレワークでの孤独感や部署間の連携不足といった、新たなコミュニケーションの課題を生み出しました。しかしこれらの課題は、意識的に施策を講じることで乗り越えられます。良好な社内コミュニケーションは心理的安全性を高め、社員一人ひとりのエンゲージメントを向上させます。それが結果として、生産性の向上や離職率の低下といった企業全体の成長に繋がるのです。
この記事でご紹介した13のアイデアや5つの成功事例を参考に、ぜひ自社に合った方法を見つけ、小さな一歩からでも実践してみてください。