人事業務は、すべて自社完結でと考える企業は少なくありません。しかし、アウトソーシングによって、自社のリソースを効率的に活かせる面もあります。この記事では、人事の担当者に向けて、人事業務をアウトソーシングするメリットや、注意点などについて紹介します。煩雑な業務により時間が確保できず、自分の仕事に着手できないジレンマを感じている人事担当者の方は、ぜひご覧ください。最後にお役立ち資料「人事アウトソーシング」サービスを紹介しています。こちらもぜひ、ご覧ください。
INDEX
人事業務のアウトソーシングとは
人事業務のアウトソーシングとは、人材育成や採用活動、給与計算、勤怠管理などの人事業務を外部に委託することです。業務のアウトソーシング化によって、企業の人事部は、人材育成をはじめとする自身の本来の業務に専念しやすくなります。
BPOとの違い
アウトソーシングと混同されがちなものとして、BPOが挙げられます。BPOとは、Business Process Outsourcingの略です。業務の一部を委託するアウトソーシングに対して、BPOは対象分野の業務を一括して委託します。つまり、BPOは広義のアウトソーシングと言えます。
人事業務のアウトソーシングは市場拡大している
近年、人事業務をアウトソースする会社が増えており、市場も拡大が続くと予想されています。株式会社矢野経済研究所の調査によると、2022年度の人事・総務関連業務アウトソーシング市場は11兆1,109億円でした。これは前年度の金額と比較すると7.0%増加しており、2023年度はさらに6.7%増え、11兆8,547億円になると予測されています。
参考:人事・総務関連業務アウトソーシング市場に関する調査を実施(2024年) | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所
人事業務のアウトソーシングが求められる背景
人事業務のアウトソーシングが求められる背景として、人材確保の困難さや働き方改革の存在が挙げられます。近年は労働人口が減少し、人材確保が困難になっている人事部門も少なくありません。また、働き方改革による時間外労働の上限規制、間接業務にかかるコストの削減など、労働環境の是正に向けた動きも影響しています。
アウトソーシングに向いている主な人事業務
アウトソーシングが可能な業務は、企業により異なります。一般的にアウトソーシングが可能な人事業務について紹介します。
人材採用業務
人材採用業務は、アウトソーシングが可能な業務の1つです。人材採用業務は求人媒体の選定をはじめ、応募者との面接日程の調整・連絡、面接会場の準備など多岐にわたります。企業規模が大きく、かつ応募者との接点を増やすほど、人材採用における事務作業が煩雑になります。しかし、アウトソーシングを導入すれば、事務作業のスリム化が可能です。
人材育成業務
人材育成業務とは、従業員に必要な技能の習得、評価に関する業務のことです。人材育成は計画、運営、評価の3ステップで行われます。その中でも、運営は開催日時や受講者の調整、講師との連絡、教室と教材の確保など、煩雑かつ工数も少なくありません。アウトソーシングによって、運営の負担を減らしつつ、ほかの業務に取り組みやすい環境を整えられます。
給与計算・勤怠管理業務
給与計算、および勤怠管理業務も、アウトソーシングが可能な業務の1つです。人事業務にはさまざまな業務が存在していますが、給与計算や勤怠管理業務は、工数がかかる業務として知られています。しかし、多忙な時期が決まっている、業務工程を定型化しやすいなど、アウトソーシングに向いている業務でもあります。
社会保険業務
健康保険や雇用保険、労災保険に関する各種給付申請書の届出、各種手当金および給付金の申請などは、社会保険業務に含まれています。社会保険業務の業務量は、年間を通じて一定ではなく、時期によって変動します。そのため、アウトソーシング化によって、人事部の社会保険業務の負担を軽減することが可能です。
人事業務のアウトソーシングにおける3つのメリット
人事業務のアウトソーシングによって享受できる、具体的なメリットを3つ紹介します。
MERIT01人材不足を解消できる
アウトソーシングのメリットとして、人材不足を解消できる点が挙げられます。日本の労働人口は少子高齢化の影響もあり、減少傾向にあります。そのため、希望通りに人材を確保できない企業も、決して少なくありません。ノンコア業務のアウトソーシングを実現できれば、人材不足を解消しつつ、貴重な社内の人材をコア業務に専念させられます。
MERIT02外部のノウハウを活かせる
外部のノウハウを活かせる点も、アウトソーシングのメリットです。アウトソーシングの依頼先には、各種業務のノウハウが蓄積されています。そのため、ノウハウを活かした業務フローの見直しや、改善提案を設けることが可能です。アウトソーシングで専門知識を有した人材を確保できれば、法改正にもスムーズに対応できます。
MERIT03コストを削減できる
アウトソーシングの導入によって、コストの削減効果も期待できます。アウトソーシングを導入する際、普段行っている業務フローを見直します。その際、無駄な業務を洗い出すことで、コストの削減が可能となります。また、自社での人員確保の負担が軽減するため、採用や研修、そして教育などのコスト削減にもつながります。
人事業務のアウトソーシングにおける2つのデメリット
人事業務のアウトソーシングには、メリットだけではなくデメリットも存在します。具体的な2つのデメリットを紹介します。
DEMERIT01業務のノウハウが蓄積されない
アウトソーシングのデメリットとして、業務のノウハウが社内に蓄積されないことが挙げられます。アウトソーシングした業務の対応をするのは、当然ですが社外の人間です。そのため、ノウハウや経験が社内に蓄積されず、社内で対応できる人材の育成が難しくなります。特に専門性が高い業務をアウトソーシングする場合は、社内での慎重な検討が必要です。
DEMERIT02情報漏えいのリスクがある
情報漏えいのリスクが高まる点も、人事業務におけるアウトソーシングのデメリットです。人事業務において、個人情報をはじめとする、機密情報を扱う機会は少なくありません。アウトソーシングを導入すると、重要なデータを外部に委託することになります。万が一、情報漏えいした場合、企業の信用が失墜します。
人事業務をアウトソーシングする4つのステップ
ここまでメリットとデメリットをお伝えしましたが、ここからは人事業務をアウトソーシングするにあたって、押さえておきたい4つのステップについて紹介します。
01自社の課題を洗い出す
人事業務をアウトソーシングする場合、まずは自社の課題を洗い出しましょう。課題を洗い出す方法は、関係者への聞き取り、データの分析などが一般的です。課題を洗い出すことによって、アウトソーシングがなぜ必要なのか、導入の目的を明確にすることができます。また、アウトソーシングの依頼先を選ぶ際に、指針としても役に立ちます。
02アウトソーシングする業務を決める
自社の課題の洗い出しが完了したら、次はアウトソーシングする業務を決定し、優先順位をつけます。すべての業務をアウトソーシングすることも可能ですが、そのためには膨大な予算を用意しなければなりません。限られた予算の中でやりくりするためにも、社内で担う業務とアウトソーシングする業務を明確にします。
03業務フローを見直す
アウトソーシングする業務が決まったら、業務フローを見直します。業務フローの見直し、および再設計をすることで、アウトソーシングの導入がスムーズです。また、該当の業務にアウトソーシングを導入して問題ないか否か、改めて確認する工程でもあります。場合によっては、組織変更をともなう可能性がある点に注意してください。
04依頼先を選定する
業務フローの見直しが終わったら、依頼先の選定をします。依頼先を選定する際は、まずは明確にしたアウトソーシングの目的を満たすか否かを重視します。依頼先の変更はコストも時間もかかってしまうため、選定は慎重に行ってください。依頼先の選定をする際に押さえておきたいポイントは、次の章で紹介します。
人事業務のアウトソーシングを成功させるポイント
アウトソーシングを成功させるためのポイントにについて紹介します。
POINT01実績を確認する
アウトソーシングの依頼先の選定をする際は、実績を確認することをおすすめします。アウトソーシングの運用が上手くいくかどうかは、依頼先に大きく影響されます。目立った実績がない依頼先を選ぶと、期待していた効果を得られない可能性があります。実績が豊富であること、そして同じ業界や同じ規模の企業での実績があるかを確認することがポイントです。
POINT02情報セキュリティ体制を確認する
情報セキュリティ体制のチェックも忘れずに行います。デメリットのところでお伝えしたように、アウトソーシングは外部の人間に業務の一部を任せる関係上、情報漏えいのリスクがあります。情報セキュリティマネジメントシステムの認証や、プライバシーマークの取得など、委託先の情報セキュリティ体制を確認します。
POINT03料金体系を確認する
実績や情報セキュリティ体制だけでなく、料金体系の確認もしっかり行います。アウトソーシングの料金体系は、定額制や従量制など、委託先によってさまざまです。また、任せる業務内容や、従事するスタッフの人数によっても変動します。ただし、料金にばかり気を取られてしまうと、自社の課題や要望にマッチした選択ができなくなる可能性がありますので注意が必要です。
POINT04効果測定を行う
人事業務のアウトソーシングを成功させるためには、アウトソーシングの効果を定期的に分析してください。分析を行うことで、問題点を可視化し、効果的な業務改善の実現が可能となります。
まとめ
近年は、労働人口が減少している影響もあり、人事部が求めている人材を集める難易度も高くなっています。アウトソーシングは、そのような人事部の業務負担を減らしてくれる存在です。外部のノウハウを活かしつつ、コスト削減もできることは、アウトソーシングのメリットと言えます。
一方で、自社のノウハウを蓄積できない、情報漏洩のリスクが高いなど、看過できないデメリットも複数存在します。アウトソーシング業務は、ただ、業務の代行先を見つければ課題が解決するわけではありません。本業に集中できる環境を構築できるパートナーを見つけることが、課題解決、業務改善につながります。
メリットとデメリットを理解した上で、アウトソーシングのより良い導入方法をご検討いただければと思います。最後に、お役立ち資料「人事アウトソーシング」サービスを紹介しています。JTBでは、人事の皆様の課題解決を「伴走型ビジネスアウトソーシング」でサポートしています。ぜひご覧ください。