今、企業の間では、「従業員エンゲージメント」 という言葉に注目が集まっています。この記事では、企業の人事担当者に向けて、従業員エンゲージメントの概要に触れつつ、従業員エンゲージメントが高まることによるメリットや効果的な施策など、具体例とあわせて紹介します。
最後に、お役立ち資料「従業員エンゲージメント向上サービスのご紹介(Employee Engagement)」をご用意しました。ぜひダウンロードいただきご覧ください。

INDEX
従業員エンゲージメントを高めるための完全ガイド
従業員エンゲージメントとは
従業員エンゲージメントとは、企業に対して従業員が抱く信頼や、自発的に貢献したいという意欲を表しています。経済産業省が公開している資料によると、従業員エンゲージメントスコアと営業利益率や労働生産性の相関関係が確認されています。従業員エンゲージメントは、ビジネスの成果にも大きな影響を与えていることがわかります。
参考:持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書 参考資料集|経済産業省
定義とその重要性
従業員エンゲージメントとは、企業に対して従業員が持つ信頼と、企業に貢献したいという自発的な意欲を示すものです。このエンゲージメントが高まることで、企業の生産性や利益率に良い影響を与えることが確認されています。
従業員エンゲージメントの世界的な位置づけ
世界各国で従業員エンゲージメントは注目されていますが、日本では特に低いとされています。ギャラップ社の調査では、従業員が積極的に仕事に取り組む割合はわずか6%で、これは世界最低水準です。この低さが改善されれば、日本企業の国際競争力も向上するでしょう。
従業員エンゲージメントを構成する3つの要素
従業員エンゲージメントは「理解」「共感」「意欲」の3つの要素で構成されています。それぞれの要素の程度は、従業員によって異なります。そのため、個別の状況に合わせた質の高い体験を継続的に提供することが大切です。
以下では、従業員エンゲージメントを構成する3つの要素について、それぞれ詳しく紹介します。
理解
従業員が企業の理念やビジョンを理解し、主体的に業務に取り組むことが求められます。具体的な施策として、理念を浸透させる取り組みや周年イベントの実施があります。
共感
企業や他の従業員に対する愛着や一体感を育むことが重要です。社内イベントやコミュニティの形成が効果的です。
意欲
自発的に仕事や企業の成功を考える意欲を育むためには、キャリア研修やモチベーション研修の機会を提供することが求められます。
従業員エンゲージメントと混同されやすい用語との違い
従業員エンゲージメントと似た用語として、従業員満足度、ワークエンゲージメント、従業員エクスペリエンス(EX)があります。それぞれの違いについて紹介します。
従業員エンゲージメントと従業員満足度との違い
従業員満足度は、従業員が企業での仕事にどれだけ満足しているかを指しますが、これは必ずしも企業の成果に直結しません。一方、従業員エンゲージメントは、企業に対する信頼感や貢献意欲を含み、直接的な業績向上につながります。
従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントの違い
ワークエンゲージメントとは、従業員が仕事に対して肯定的に捉えている状態を指します。それに対して従業員エンゲージメントは、企業そのものに愛着をもっている状態を表しています。
従業員エンゲージメントと従業員エクスペリエンス(EX)の違い
従業員エクスペリエンス(EX)は、従業員が企業内で経験するすべての体験を指し、エンゲージメントの一要素です。EXを向上させることで、エンゲージメントも高まるとされています。
従業員エンゲージメントが注目される背景
従業員エンゲージメントは、なぜ注目を集めているのでしょうか。ここでは、その背景について紹介します。
人材不足とコミュニケーションの減少
少子化による労働人口の減少やリモートワークの普及により、企業内でのコミュニケーションが減少しています。これにより、従業員の離職率が高まるリスクがあることから、エンゲージメントの向上が重要視されています。
価値観の多様化とキャリア自律
価値観の多様化が進む中、従業員が自分のキャリアを自律的に構築することが求められています。エンゲージメントが高い従業員は、変化に柔軟に対応し、自らの成長を追求する傾向があります。

日本における従業員エンゲージメントの現状
ギャラップ社は、2024年に世界各国の従業員エンゲージメント調査報告書を公開しています。それによると、日本における「仕事に対して意欲的かつ積極的に取り組む人(Engaged)」の割合はわずか6%でした。これは世界的に見ても最低水準であり、日本では従業員エンゲージメントがいかに低い傾向にあるかがよくわかります。
参考:日本の従業員エンゲージメントはわずか6%、世界最低レベルに | Gallup, Inc.のプレスリリース | 共同通信PRワイヤー
従業員エンゲージメントを高める4つのメリット
従業員エンゲージメントを高めることで、さまざまなメリットを期待できます。具体的にどのようなメリットがあるか紹介します。
離職率が低下する
従業員エンゲージメントが高い場合、従業員は組織に対してあまり不満を抱いておらず、貢献意欲も高いといえます。また、帰属意識や愛社精神も強いため、離職率を抑えられる可能性が高いといえます。人材不足が深刻化している今現在、離職率を下げることができると、自社のビジネスを支える人材を安定的に確保することが可能となります。
仕事の効率が向上する
従業員エンゲージメントが高いほど、従業員は自社を信頼していると判断できます。すなわち、周囲の人を信用しながら業務に取り組むことができ、チームワークも向上します。また、仕事に対するモチベーションも維持できるため、仕事の効率を高めることが可能になります。
顧客満足度が向上する
従業員エンゲージメントが高いと、企業に対して貢献したいという意欲も強くなります。仕事により熱心に取り組むようになり、パフォーマンスが向上する可能性が高まります。顧客対応の質も上がるため、顧客満足度の向上も期待できます。
業績がアップし企業の評判があがる
自主的に行動する従業員が増えれば、業績アップが期待できます。また優秀な人材の流出を防ぐことができるため、生産性が向上し、結果として業績が上がると考えられます。
顧客満足度や業績が上がれば、自ずと企業の評判もよくなります。企業内だけではなく企業外からの評価も上がり、企業全体に一体感が生まれます。従業員の満足度も高まり、職場の雰囲気もよくなるため、ますます離職者が減り、併せてよい人材が集まってくることも期待できます。
従業員エンゲージメントの7つの領域
従業員エンゲージメントは7つの領域にわけて考えます。従業員エンゲージメントを向上させるための施策を実施する場合、どの領域を対象とするか考える必要があります。7つの領域を具体的にあげると、以下のとおりです。
- リクルーティング
- キャリアデベロップメント
- エンプロイーイベント
- イクスチェンジミーティング
- ワークスタイル
- ライフサポート
- ベーシックワーキング
リクルーティングとは、内定者や新入社員をフォローして内定辞退や早期離職を防ぐことです。キャリアデベロップメントとは、従業員が求めるキャリアの実現をサポートし、長く働いてもらえるようにすることです。エンプロイーイベントとは、企業理念を浸透させて組織の一体感を強化するために実施するものです。イクスチェンジミーティングとは、社内外のコミュニティを作って交流を促す施策です。
ワークスタイルとは、ワークライフバランスを整えて従業員満足度や生産性を高めることであり、ライフサポートとは、福利厚生により従業員の健康や幸せに配慮することを指します。また、ベーシックワーキングでは、快適かつ安全に働ける環境を作って従業員の企業に対する評価を高めます。
詳しい資料はこちらをぜひご覧ください。
従業員エンゲージメント向上サービスのご紹介
従業員エンゲージメントを高めるための具体的な6つの施策
従業員エンゲージメントを高めるためには、さまざまな施策があります。以下で詳しく紹介します。
企業理念の浸透
従業員が企業の方向性を理解し共感すると、組織に貢献したいという思いが強くなります。そのため、企業のビジョンや理念を明確にし、従業員に浸透させることで、組織の一体感を強化できます。
人事評価制度の見直し
従業員が正当な評価を得られると、仕事に対する積極性や意欲が増します。よって、公平で透明性のある人事評価制度を導入することで、従業員のモチベーションを高めることができます。
コミュニケーションの活性化
従業員同士の関係性を深めると、企業に対する帰属意識も高まります。たとえば、1on1ミーティングや社内イベントを通じて、従業員同士の関係性を深め、エンゲージメントを高めることが可能です。
ワークライフバランスの重視
従業員エンゲージメントを向上させるには、ワークライフバランスも重要です。柔軟な勤務形態や働き方を提供することで、従業員の生活と仕事のバランスを整え、エンゲージメントを向上させます。
キャリアアップ支援
キャリア形成をサポートする制度や研修を充実させることで、従業員の成長意欲を刺激し、エンゲージメントを高めます。
ダイバーシティ推進による組織活性化
多様性を尊重し、異なる視点を持つ従業員が活躍できる職場を作ることが、組織全体の活性化につながります。

従業員エンゲージメントを測定する「エンゲージメントサーベイ」
エンゲージメントサーベイとは、自社に対して従業員がどの程度の愛着を抱いているか調べるための調査です。エンゲージメントサーベイを実施することで、従業員エンゲージメントをより正確に把握することができ、なかなか表面化しにくい人事課題の把握が可能です。定期的に実施することで、従業員エンゲージメントの変化も捉えることができます。
エンゲージメントサーベイ実施の注意点
エンゲージメントサーベイを実施する際は、まず具体的な目的を明らかにする必要があります。目的が明確になることで、調査結果をもとにした改善にも取り組みやすくなります。そのうえで定期的に調査を実施し、どのような変化があるか確認することが大切です。ただし、正確な回答を得るには、繁忙期やチーム立ち上げ時などは避けなければなりません。
従業員エンゲージメント向上の具体例
ここでは、企業が実施した具体的なエンゲージメント向上施策を紹介します。
コミュニケーション活性施策を取り入れた例
CASE01職場旅行でコミュニケーション活性化!
パラダイスシティ韓国で、若手社員大満足!
不動産サービスを手掛ける A社は、コロナ禍において若手のコミュニケーションを活性化させたいと考えていました。主な目的は、従業員エンゲージメントの向上による離職率の改善です。そこで職場旅行の行き先を韓国にし、カジノ、屋内型遊園地、スパといった非日常を体験できるようにしました。その結果、従業員同士の会話が増え、積極的なコミュニケーションを促すことができました。
ワークライフバランスに紐づいた施策の事例
CASE02旅先でも「仕事を止めない」ワーケーションの実現!
Webサイトの構築やデザインのコンサルティングを行っている株式会社アクアリングは、社員旅行の代わりにワーケーションを実施しました。滞在先を広島県尾道市とし、デザイン性の高い宿泊施設やワークプレイスなどを利用しました。
業務の生産性を保ちつつリフレッシュでき、創造性や生産性の向上につながるといった効果がみられました。また、普段とは異なる環境に身を置くことで、コミュニケーションも活性化することができました。
- 詳しくはこちら
- 旅先でも「仕事を止めない」ワーケーションの実現!
エンゲージメントサーベイを行った例
CASE03面談で社員の本音が聞き出せる!?“意識調査”実施体験
作業服や作業用品などを扱う株式会社ワークマンは、組織変革支援システムの「WILL CANVAS」を導入し、新しい社内アンケートの実施を開始しました。従業員の心境や意見をより正確に捉えられ、適切なフォローを実施しています。その結果、従業員のモチベーションの向上やコミュニケーションの活性化にもつながっています。
- 詳しくはこちら
- 面談で社員の本音が聞き出せる!?“意識調査”実施体験
まとめ
従業員エンゲージメントとは、従業員が企業に対して感じる愛着や帰属意識、貢献意欲などのことです。人材不足や価値観の多様化などに伴い、従業員エンゲージメントの向上に注目が集まっています。従業員エンゲージメントを高めることができると、離職率の低下や仕事の効率アップなどが期待できます。「この会社に入って良かった」と従業員が思える組織を作ることが大切です。また、従業員エンゲージメントには複数の領域があるため、施策を実施する際は、どの領域を重点的に取り組むか優先順位を決めておくと良いでしょう。
時代の変化に伴い、社内外のコミュニケーションの方法も見直しが必要になっています。適切なコミュニケーションは、エンゲージメントを高める上でとても重要です。エンゲージメントの向上に効果的な取り組みをまとめた資料を公開していますので、ぜひこちらもご覧ください。